住居や商業施設の床材として広く愛用されているフローリングですが、無数にあるフローリングの中で、どれが最適か選ぶことは容易ではありません。TECTURE MAGでは、フローリングの選びに関する記事を2回に分けて紹介します。この記事では、フローリングの種類とその特徴についての基礎を紹介していきますので、皆さんの理想とするフローリング選びの参考にしていただければと思います。
第1回 身近な建材の1つ、フローリング選びの基礎知識(10月10日掲載)
第2回 貼り方ひとつで空間の印象が変わる!フローリングのデザイン(10月23日掲載)
フローリングの種類には、1枚の木材を加工した「無垢フローリング(単層フローリング)」と、合板などの基材に化粧材を貼り合わせた「複合フローリング」があります。さらに複合フローリングは、化粧材に天然木を使用した「挽板(ひきいた)」「突板(つきいた)」といった使われている天然木の厚さの違いや、樹脂や紙を使用した「シート」に分けられ、施工する環境や重視するポイントによって適切なフローリングを選ぶことができます。
無垢フローリング:天然木を原型のまま加工し使用しており、質感がとても豊かです。触り心地も良く、ナチュラル志向のユーザーから根強い人気があります。ただし、温湿度の変化に敏感で、季節によって伸縮や反り、突き上げや隙間が生じることがあるので、定期的なメンテナンスが必要です。
挽板フローリング:天然木を2-4mm厚ほどに切り出した「挽板」を表面に使用します。天然木に厚みがあり、無垢材とほぼ同じ質感が得られます。また無垢フローリングと比較して、伸縮や反りの程度が極めて低いため、こまめなメンテナンスが必須ということもありません。一方、挽き板に使用される天然木は比較的高価な樹種が多く、また製造に手間がかかるため、価格帯は相対的に高めです。
突板フローリング:天然木を0.3-0.5mm厚ほどにスライスした「突板」を表面に使用します。軽量で安定した品質、そして低コストが魅力です。表面が薄いため踏んだ際の硬さは増しますが、伸縮や反りのリスクを軽減し、細かい加工も可能です。一方で、深い傷によって表面材を貫通してしまうと修復が難しいため、表面処理が施されている製品の選定が推奨されます。
シートフローリング:樹脂や紙に木目を印刷した0.1mm厚ほどの「シート」を表面に使用します。天然木は一切使われていない素材です。多様なデザインが可能で、耐水性や耐熱性に優れており、原価が安く工事施工が簡単であるため、日本でもっとも採用されている床材です。ただし、シートが剥がれると修復は困難で、ペットを飼っている家庭や小さな子供がいる家庭には不向きとも言われています。
挽板フローリングは、ヨーロッパを中心に無垢フローリングの代替として発展してきました。一方で、日本では突板フローリングが普及しています。これは、突板フローリングが安価かつ樹種が豊富なことに加え、日本の靴脱ぎの文化では、表面材の厚みが薄くても問題が少なかったなどの理由があります。
近年では、意匠性の機能性を両立できることから、日本でも挽板フローリングの普及が広まりつつあります。機能面における大きなメリットの1つが、床暖房に対応できることです。一般的に無垢フローリングは、床暖房設備の温度変化による膨張や収縮が必ず起きるため不向きです。一方、挽板フローリングは伸縮率が低いため、木幅などの制約も受けづらく(木幅が広いほど、伸縮率が大きくなります)、150mmを超える幅広な製品も多くあるので、意匠の幅も広いとも言えるでしょう。
新たなスタンダード!?床暖房対応のフローリング
- 床暖 チェリー 120/ウレタン塗装(HONEST AND PARTNERS)
- 床暖 メープル 150/クリアオイル塗装(HONEST AND PARTNERS)
- オークEG/クリア塗装品(東京工営)
- フレンチオークE190/クリア塗装品(東京工営)
*メーカー名:アルファベット・五十音順、以下同様
無垢フローリングの最大の長所は、何と言っても素材感にあります。無塗装や自然塗料などで仕上げたものには天然木独特の芳香や手(足)触りがあります。機能面においては調湿作用の効果が高く、湿度が高い時は空気中の水分を吸い、低い時は水分を放出することで空間を快適に保ってくれます。さらに断熱性能も高く、冬場でも床からの冷えを軽減することができるなど、木がもつ機能をそのまま発揮してくれます。
素材そのままである分、無垢フローリングには木の品質の差が直接的に表れてきます。無垢=高価というイメージがある人も多いかと思いますが、実は、樹種やその品質によって価格帯の幅がとても広い床材なのです。ここで言う品質とは、節や辺材の入り具合や、変色部の有無の程度などによるものです。この他にも、木幅の違い、加工や仕上げの違い、産地の違いなどによっても価格は大きく変わってきます。
メーカーごとに魅せ方は様々!こだわりの無垢フローリング
- オリジンオーク/無塗装(HONEST AND PARTNERS)
- ジュラシックオーク/無塗装(HONEST AND PARTNERS)
- ソリッドオークフローリング オーク120/クリア(toolbox)
- 継ぎ無垢フローリング (toolbox)
- オークSR120/クリア塗装品(東京工営)
- オークナチュラルSR120/クリア塗装品(東京工営)
天然木を検討するうえで、傷や変形などを「味」と捉える人や、メンテナンスを通して愛着が湧いてくる人も多いと思います。使う人のライフスタイルや環境に合わせた選定が重要ですが、具体的には難しいという場合、まずはサンプル請求やショールームを通して比較することをおすすめします。
無垢、挽板、突板のフローリングは、厚さは違えど天然木を使用しているため、画面越しでは違いが分かりづらいです(近年で印刷技術が発展し、シートフローリングの木調の再現性も高くなってます)。また、見ているディスプレイによっても発色が異なるため、実際に届いたらイメージと違った、なんてことは建材に限らずよくある話です。実物に触れることで、理想とするライフスタイルを想い描くきっかけになるかもしれません。
フローリングには多くの樹種があり、特に無垢や挽板のように表面材の厚いフローリングは、樹種それぞれの特性が顕著に現れてきます。大きくは針葉樹と広葉樹に分けられ、英語で広葉樹をハードウッド、針葉樹をソフトウッドと言うように、広葉樹は重くて硬く、針葉樹は軽くて柔らかい樹種が多いです。
広葉樹:枝分かれして横に大きく広がる広葉樹は、構造が複雑で含まれる空気も少なく、ズッシリとした重さをもっています。成長するのに時間がかかる樹種が多いのは、内部が硬く密な構造をしているからです。オーク、メープル、ウォールナット、バーチ、チークなどが有名で、傷や打撃に強いことから、フローリング以外にも家具や楽器でも採用されています。また、針葉樹に比べて樹種が多いため、色味や木柄もさまざまで選択肢が豊富です。
針葉樹:真っ直ぐ伸びる針葉樹は、その組織の構造も単純で、多くの空気や水分を含みます。代表的な樹種としては、スギやヒノキ、マツ(パイン)などが有名です。比較的成長が早いので手に入りやすく、価格も安価なものが多いです。柔らかいということは傷が付きやすいということですが、経年変化による色の深みや傷も味わいと感じる人にはおすすめの種類と言えます。
例えば、価格をなるべく抑えたいという人にとって、真っ先に候補に挙がってくるのは針葉樹のフローリングでしょう。樹種にもよりますが、価格が広葉樹の1/2以下というものも珍しくはありません。ただし、針葉樹・広葉樹で大別できると言っても、最終的には樹種それぞれの特徴を理解することが大切です。
柔らかく肌触りが魅力!針葉樹のフローリング
- ボルドーパイン170幅/無塗装(HONEST AND PARTNERS)
- 日本ケヤキFJ/無塗装(HONEST AND PARTNERS)
- 間伐材フローリング スギ12mm厚(toolbox)
フローリングを何から選んでよいか分からない場合、ぱっと見たときの印象から検討してみるのも良いかもしれません。色の濃淡だけでなく赤味や黄味がかっていたりと、無塗装でもバリエーションは豊富です。樹種によって経年変化の速度や具合も異なるので、数十年後を想像しながら選ぶという楽しみ方もあります。
天然木のフローリングを検討する際、樹種と一緒に考えたいのが、塗装や加工といった仕上げです。フローリングの美しさを高める鍵は、適切な塗装・加工方法の選択にかかっていると言えます。塗装済みの製品を出しているメーカーは多いので、塗装の特性を十分に理解したうえで比較していきたいですね。
フローリングの塗装方法は、木材に塗料を浸透させるか、表面に塗膜を張るか、の2種類に分けられます。
オイル塗装:浸透系で代表的な塗装方法です。木に油分を浸透させることで、木の表情を浮かび上がらせます。木の表面に塗膜をつくらないので、肌触りや質感は木そのもの。木の調湿効果を妨げることもありません。日焼けによる色の変化や、磨耗することで生まれる自然なツヤなど、経年変化を楽しみたい方にもおすすめです。一方、 塗膜がない分、傷やシミがつきやすいというデメリットもありますが、サンドペーパーで削るなど部分的な補修が可能です。
ウレタン塗装:塗膜系で代表的な塗装方法です。ウレタン樹脂を主成分とした塗料を用いて表面に強固な塗膜を張ることで、フローリングを保護します。メリットは耐摩耗性や耐久性に優れていることで、また湿度や乾燥などの環境の影響を受けにくく、オイル塗装に比べてメンテナンスが容易です。ただし、表面に塗膜を張るので木の調湿効果は期待できません。ツヤがかっているものが主流ですが、近年では光沢を極力抑え、オイル塗装のような仕上がりにできる塗装も登場しています。
無垢フローリングはもちろん、複合フローリングでも表面材の厚みが十分あれば、表面加工で天然木の風合いを引き立たせることも可能です。表面を削って凹凸をつくる「なぐり」や、ブラッシングで木目を浮かび上がらせる「うづくり」など伝統技法を用いた加工は、見た目の美しさだけでなく、足裏との接地面積が少なくなるので冬場でも冷えを感じにくいという機能面でのメリットもあります。表面加工ごとの手(足)触りの変化は顕著なので、実物に触れながら比較するのが重要です。
数多くある建材の中でも、私たちがもっとも長く触れているのがフローリングかもしません。そんなフローリングだからこそ、見た目だけでなく、使われている素材や構成といった中身にもこだわることで、想い描く快適な暮らしにグッと近づけてくれるのです。
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