宮城県石巻市に拠点を構える石巻工房(代表:芦沢啓治、千葉隆博)が、カリモク家具(愛知県知多郡)との業務提携を発表しました(2024年3月11日プレスリリース)。
石巻工房は、2011年3月11日に東北地方沖合で発生した大地震による東日本大震災からの復旧・復興を目指し、その約3カ月後に、市民が使える公共工房として石巻市内中心部にオープン。DIY支援として市民と一緒にものづくりができる公共的な施設としてスタートしました。このとき、東京から建築家の芦沢啓治氏らデザイナー有志が参加し、補修道具や木材を集めて提供したほか、以降もそれぞれで家具をデザイン。地域のクリエイティブの中心となるような家具づくりを石巻を拠点に続けてきました。
石巻工房の発表によれば、被災地への支援がある中で始まった活動は、ボランティア等の支援を受けながら続けるか、自立した活動に転換するかの岐路に立ち、「手づくり」にデザインの付加価値を与え、地域内外で販売して自立するための「石巻工房ブランド」として、2014年3月11日に株式会社化。国内のほか海外のデザイナーとも協働し、被災を背景にした材料と技術の制約を基本としたアプローチで、シンプルでかつ愛着のわくデザインのプロダクトを生み出しています。
2021年には、石巻で見出した「ものづくりの本質」を、世界のメーカーとの協働で広める「MADE IN LOCAL(メイド・イン・ローカル)」プロジェクトがスタート。日本を含めた世界10カ国以上の製作所と協働し、その国・その土地の資源を活用したものづくりも進められています。
カリモク家具はそのうちの1社であり、これまでに商業店舗での家具製作などプロジェクト単位での協業や、新たな家具ブランド「石巻工房 by Karimoku」の共同立ち上げなどの実績を重ね、信頼関係を築いてきました。
Interview with Keiji Ashizawa & Hiroshi Kato about ISHINOMAKI LABORATORY
株式会社化から10周年を迎える今年、石巻工房がカリモク家具とのパートナーシップ(業務提携)締結を行う背景の1つには、石巻工房で使える木材の幅を増やし、製品に反映したいという意向があります。加えて、日本の林業が抱える課題解決へのアプローチでもあります。
昨今、世界的な規模で木材の需要が高まり、市場価格は高騰し、かつ天然林輸入資源は減少しています。その一方で、日本の里山では森林資源の高林齢化が進み、生態系への影響や森林保全といったさまざまな問題も発生しています。中でも広葉樹は、ハードウッドとも呼ばれ、一般的に硬く、加工しにくい木材です。製材利用は少なく、伐採後はほとんどがチップなどに加工されているのが現状です。この国内資源を有効活用し、新しいエコシステムをつくることができれば、日本の里山の再生につながると考えられています。
石巻工房では広葉樹を加工できる特別な設備をもたず、素材として扱うことが困難でしたが、日本有数の木材加工技術をもつカリモク家具との業務提携後は、日本の里山から得られる広葉樹を中心とした多様な材を使用することが可能となります。
2社の業務提携により、双方のものづくりの哲学をベースとして、石巻工房のデザイン力(りょく)と、カリモク家具の技術力を掛け合わせた相乗効果が期待できます。石巻工房では今後、国内有数のデザイナー家具ブランドへと成長することを目指し、持続可能なものづくりの新たなモデルを提案していく考えです。
石巻工房 ウェブサイト
https://ishinomaki-lab.org/