日本の近代・モダニズム建築を代表する建築家の1人、坂倉準三(1901-1969)が設計した三重県伊賀市旧庁舎(1964年竣工時名称は上野市庁舎)の旧南庁舎が、ホテルなどの新たな機能を付加して再生されます。
建物の改修設計を、建築家の高野洋平と森田祥子の両氏が率いる設計事務所、MARU。architecture(マル・アーキテクチャ)が担当しています(改修後の内外観イメージ画像 ©︎ MARU。architecture)。
坂倉が設計した旧上野市庁舎は、1964年(昭和39)12月、当時の上野市(2004年より伊賀市)の庁舎としてオープン。敷地は、天正年間は戦国大名の筒井氏が拠点とし、その後の慶長年間に藤堂高虎が整備を手がけた伊賀上野城の旧城域、現在は桜の名所として地元で知られる上野公園の南側・上野丸之内に建設されました。
旧市庁舎は、旧城域らしい起伏ある土地と呼応しつつ、周囲の山々と旧城下町をつなぎようにして低層で計画された、坂倉の名建築です。このほかにも坂倉は、上野市公民館(1960年、後に伊賀市中央公民館と改称)、上野市立西小学校(1962年)、上野市立崇広中学校(1963年)、上野公園レストハウス(1963年)、上野市立西小学校体育館(1966年)なども手がけましたが、そのほとんどが現存せず、この旧南庁舎を残すのみとなっていました。建物の保存・再生が決まった後の2019年には、市の有形文化財に指定されています。
新たな施設名称は「泊船(はくせん)」。計画では、地域の人々に対して開かれた図書館のほか、客室数計19室のスモールブティックホテルが併設されます。
伊賀市旧庁舎(旧南庁舎)再生プロジェクト
所在地:三重県伊賀市上野丸之内116
施設新名称:泊船(はくせん)
主要用途:図書館、観光交流施設、宿泊施設(ホテル客室数19)
構造:RC
規模:地上3階(既存)
延床面積:約6,000m²
改修設計:MARU。architecture
構造設計:構造計画研究所
設備設計:シンフォニアエンジニアリング
環境デザイン:deXen
施工:船谷建設・伊藤工務店・上野ハウス
公式ウェブサイト・グラフィックデザイン:UMA/designfarm
施設運営:船谷ホールディングスグループ
開業予定:2025年夏MARU。architecture(マル・アーキテクチャ)ウェブサイト プロジェクトページより
ホテル泊船 ティザーサイト
https://hakusen-iga.com/
船谷ホールディングス 会社概要
1877年(明治10年)に創業した材木問屋「船谷吉松商店」をルーツとする。現在は三重県および愛知県を中心に、社是に掲げる「信頼の枝をひろげる」のもと、設計業・総合建設業・賃貸住宅管理業・公民連携事業・飲食店運営・アグリビジネスなどさまざまな事業を展開し、各事業を担う企業を統括、船谷ホールディングスを中核とする。「伊賀の文化を育んだ豊かな地形に寄り添う旧庁舎の魅力を活かし、新たに市民、そして旅人が錨を下ろすホテルとして、みなさまをお迎えします。泊船(はくせん)は、空間だけではなく、家具も含めて、坂倉準三の思想・デザインを感じられる場所となり、客室および玄関を含めた共用部では、伊賀の文化にも触れられる展示やイベントの開催も検討しています。」
船谷ホールディングスグループ プレスリリース(2024年10月29日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000149959.html