パビリオンDATA
- 建築デザイン
板坂 諭(the design labo)- 設計監理
前田建設工業株式会社 一級建築士事務所- エリア
西ゲートゾーン- テーマ
「いのち、ありがとう」
PASONA NATUREVERSEの見どころポイント!

写真提供:パソナグループ
〈PASONA NATUREVERSE〉は、「心臓(いのち)の螺旋 ~アンモナイトからiPS心臓(いのち)まで~」を建築コンセプトにしたパビリオン。iPS細胞による再生医療の第一人者である大阪大学名誉教授・澤 芳樹氏をエグゼクティブプロデューサーに迎え、”いのちの象徴”としての「iPS心臓」などの最新テクノロジーをはじめ、「からだ・こころ・きずな」をテーマに展示を行っています。
閉幕後のパビリオンは、淡路島への移築・再利用が計画されています。

写真提供:パソナグループ
〈PASONA NATUREVERSE〉を計画するにあたり、約4億年前に誕生し、3回の大量絶滅期を乗り越えながら繫栄したアンモナイトを「いのちの象徴」と捉え、その形態を建築デザインに取り込んでほしいと施主からの要望をいただき、幅43m・高さ16mのアンモナイト型建築をデザインしました。
元になる貝を3Dスキャナーで読み取り、データ化して構造的なことを考えていくと、生物の構造は合理的にできているので非常に面白い空間になりました。私たちはそれに沿って突飛なことをせず、ひたすら建築に貝を寄せていくという思いでやってきました。

構造体パース(写真提供:パソナグループ)
万博は建築が花形として注目され、いろいろな建築がありますが、パソナグループパビリオンの大きな特徴として移築があります。環境的な一番大きなインパクトは長く大事に使うことだと思います。半年間で壊す建物にどれだけエコだと言っても限界がありますし、万博のためにつくった建物も10年、20年と長く使うことが一番のエコだと思っています。
〈PASONA NATUREVERSE〉は移築のために、1個1個のパーツを細分化し、ある程度軽量で、2人もいればもてるようなパーツでトラス構造を構成しています。アンモナイトのかたちをした部分も5000パーツくらいで構成されています。
移築のことを考えると、巨大な鉄骨の柱、梁で建築したらどうやって運ぶか、という問題になります。事前にトラックで運べる、人が持てるサイズというところを考え、全体の設計をしたことが移築につながっていると思います。表面も膜構造なので、鉄板のような重い素材ではなく、丸めて運べるような材料でできています。
移築するための形状の特徴で、ボールジョイントという、ボール状の部材に鉄の棒を挿していくという構造にしています。移築という課題の解答として出てきた独特の形状です。テントで覆われているので、ボールジョイントが見られる部分は出口の柱の足元のみですが、実はテントの中には何百個とあることを想像して見てもらいたいです。

写真提供:パソナグループ
室内空調の負荷を下げるため、膜構造の屋根に冷たい水を撒くことでテント自身が冷えていき、中の空間も心地よくなる方法を考えました。
膜構造の表面に水を撒くために、アンモナイトの稜線に水が出るホースを巻いています。そこから撒いた水は海から来た風により来館者が出入りする待機列に流れていきます。地面にはホタテ貝を崩したときに出る粉を混ぜた素材を使っているのですが、ホタテ貝の粉に水を含ませ、気化熱で周りの熱を少しクールダウンしてくれる設計としました。屋根への散水に使用した水は、雨水とともに館内の雑用水として循環・再利用しています。
舗装材にホタテ貝を使用したものを選んだのは、気泡を多く含んでいるという点もありますが、建物自身が貝(アンモナイト)なので、その親和性も期待しています。

『未来の眠り』体験用ベッド(写真提供:パソナグループ)

『未来を旅するきぼう船』船をイメージした展示空間(写真提供:パソナグループ)
建築DATA
出展社:パソナグループ
建築デザイン:板坂 諭(the design labo)
設計監理:前田建設工業株式会社 一級建築士事務所
施工:前田建設工業株式会社
敷地面積:3,514.425m²
建築面積:2,4235m²
延床面積:2,2855m²
最高高さ:16.72m
構造:鉄骨造
規模:2階建て
トップ写真提供:パソナグループ
テキストは〈PASONA NATUREVERSE〉公式ホームページ・設計者インタビューより
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