神奈川・横浜の湾岸エリアにある、独立行政法人国際協力機構の広報センターである〈JICA横浜〉が先ごろリニューアル。日本の国際協力や日系社会について「楽しみながら知る」、「寛ぎながら見る」をテーマに、アートワークを取り入れた新たなコンセプトのもと、展示や施設空間が一新されました。
国内外で活躍する複数のアーティストやクリエイターが複数参画し、dot architects(ドットアーキテクツ)が展示デザインを、グラフィックデザインを原田祐馬氏が率いるUMA/design farmが手掛けています。
なお、dot architectsとUMA/design farm の2組のクリエイターは、今月2日より東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT で開催中の企画展「ルール?展」においても、会場構成とグラフィックデザインでタッグを組んでいます。
JICA横浜は、日本人の海外移住の歴史や、移住者と日系人の現在を伝える海外移住資料館を併設して2002年4月にオープン。国際協力事業や地域連携事業、移住者・日系人支援事業、SDGsへの取り組みなど、さまざまな事業を展開しています。
今回のリニューアルでは、日系ブラジル人の現代美術アーティストの大岩オスカール氏をはじめ、青年海外協力隊出身のアーティストなど、JICA横浜が実施する事業と関わりの深い複数のアーティストが、館内レストランの柱や壁面をキャンバスに作品を披露しています。
JICA横浜事業紹介展示
フロア:1階、2階
什器・展示デザイン:dot architects(担当:家成俊勝、寺田英史)
グラフィックデザイン:UMA/design farm(担当::原田祐馬、岸木麻理子)
1階と2階では、新たな常設展示として、JICA横浜が取り組む国際協力や地域連携事業、SDGs、移住者・日系人支援事業を紹介。写真や図を交えながら、わかりやすく学べる展示で、世界の海と、大陸や島をモチーフとしてデザインされています。
dot architects(ドットアーキテクツ)プロフィール:
家成俊勝、赤代武志により設立された建築家ユニット。大阪・北加賀屋にて、「もうひとつの社会を実践するための協働スタジオ」コーポ北加賀屋を拠点に活動。設計、施工のプロセスにおいて専門家・非専門家に関わらずさまざまな人との恊働を実践している。設計だけに留まらず、現場施工、リサーチプロジェクト、アートプロジェクトなど様々な企画にもかかわる。第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 審査員特別表彰(日本館出展作家)。
http://dotarchitects.jp/
UMA/design farm プロフィール:
2007年、原田祐馬により設立。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「ともに考え、ともにつくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。受賞歴はグッドデザイン賞2016・金賞、日本サインデザイン賞最優秀賞、日本タイポグラフィ年鑑ベストワーク、CSデザイン賞準グランプリなど。
http://umamu.jp/
今回のリニューアルでは、国際的に活躍している日系ブラジル2世のアーティスト、大岩オスカール氏による新作が、館内3箇カ所に設置されます。
「トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド」と名付けられた作品は、1階および2解のエントランス、列柱に展示される3つの作品で構成されます。横浜や神戸から出航し実在した移民船や、移民船が出航した20世紀初頭の横浜港の風景などが、日本から新天地へと渡って行かれた移住者の方々への賛辞・敬意を込めて描かれています。
「トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド」は、JICA横浜のために大岩氏が制作するサイトスペシフィックな作品です。また1階エントランスに設置される作品は、大岩氏本人が来日し、ガラス面に直接、描く手法で制作されます(6月15日発表時点で未定)。
大岩オスカール氏 プロフィール:
1965年にブラジルのサンパウロで日本人の両親のもとに生まれ、日系ブラジル人として東京、ニューヨークと移動しながら制作活動を行い、世界各国で高い評価を得ている。都市での生活体験や社会問題をテーマに、風刺やユーモアを交えた、俯瞰的でダイナミックな絵画作品を制作。過去の大規模個展に「大岩オスカール」(ブラジル国立美術館、2011)、「光をめざす旅」(金沢21世紀美術館、2019)などがある。
Hiroshi Fuji / 藤 浩志氏 プロフィール:
1960年鹿児島生まれ。京都市立芸術大学大学院修了後、1986年青年海外協力隊員としてパプアニューギニア国立芸術学校に派遣。「社会的に価値を認められていない存在にエネルギーを注ぎ、圧倒的に感動的な状態に変化させる技術としての芸術」を着想する。帰国後は全国各地のアートプロジェクトを手掛け、NPO法人プラスアーツ副理事長、十和田市現代美術館館長などを経て、現在秋田公立美術大学大学院教授。
Makoto Ikutake / イクタケマコト氏プロフィール:
イラストレーター。福岡県宮若市生まれ、横浜市在住。ゆるいパースと明るい色彩で生活のさまざまな場面を俯瞰したイメージで描いたイラストで、広告、書籍などを多数手掛ける。壁画制作では、ヨコハマトリエンナーレ2017応援イベント、黄金町バザール2020、横浜市パブリックアート、三井住友建設本社ビルなど数メートルの作品を制作、展示している。
James Kudo / ジェームズ・クドウ氏 プロフィール:
1967年ブラジル・ペレイラバヘトに日系ブラジル三世として生まれる。色彩を操りながら、あらゆる要素を断片化し、重ね合わせることで流動する世の中でも揺るがないものを表現する。23歳でサンパウロ美術大学に進学、その後、アート・スチューデントリーグ(ニューヨーク)で学ぶ。現在はサンパウロを中心に、東京、ニューヨーク、ドイツ、カナダなどで精力的に活動し、ブラジルを代表する作家の一人。
リニューアル計画 実施体制:
什器・展示デザイン:dot architects(担当:家成俊勝、寺田英史)
グラフィックデザイン:UMA/design farm(担当::原田祐馬、岸木麻理子)
アートワーク:大岩オスカール、ジェームズ・クドウ、藤 浩志
ディレクション:長田哲征(オフソサエティ)
撮影(本稿の作品・展示写真):加藤 健
施工:丹青社
事業主:JICA横浜
Tetsuyuki Nagata / 長田哲征氏 プロフィール:
ディレクター。オフソサエティ代表取締役。
https://offsociety.com
1970年横浜生まれ。美術館・芸術文化施設の計画・プロデュースや展覧会・アートプロジェクトの企画・キュレーションを手掛ける。主なプロジェクトにアーツトワダ・十和田市現代美術館の全体監修・計画策定、ちよだアートスクエア構想の計画策定、六本木ヒルズ パブリックアートPM、YCC ヨコハマ創造都市センター館長および施設運営、展覧会「YCC Temporary」や「RED ROOM」の企画、八戸市美術館管理運営計画など。
JICA横浜では今後、2021年10月から11月にかけて、参加アーティストらによるトークイベントも開催予定とのことです。(en)
JICA横浜(独立行政法人 国際協力機構 横浜センター)
所在地:神奈川県横浜市中区新港2-3-1
開館時間:10:00-18:00(最終入館 17:30)
休館日:月曜(月曜が祝祭日の場合は翌日休館)
公式Webサイト
https://www.jica.go.jp/yokohama/index.html