FEATURE
Techniques for fashionable interiors taught by RENOVERU
Vol.1 "Mastering French Mid-Century modern"
FEATURE2021.10.01

「リノベる。」直伝! インテリアを整えるテクニック

Vol.1「フレンチミッドセンチュリーを極める」

FEATURE2022.03.29

「リノベる。」直伝! インテリアを整えるテクニック

Vol.2「アメリカンミッドセンチュリーの魅力を再発見」

インテリア上級者に聞く! 憧れのフレンチミッドセンチュリーをインテリアに取り入れるコツとは?

1950年代に世界的に流行したデザイン潮流、ミッドセンチュリー。アメリカ、ブラジル、フランスでデザインされた家具が有名で、なかでも、フレンチミッドセンチュリーの家具は、当時につくられたオリジナルが高値で取り引きされ、復刻版の人気も年々高まっている。

住宅のリノベーションや、店舗・オフィス・商業施設の設計施工およびコンサルティングを行っているリノベる株式会社で、インテリア事業の部門を立ち上げた古久保拓也氏に、フレンチミッドセンチュリーをインテリアに取り入れるコツを聞いた。

古久保氏は、アンティークのバイヤーとしての経験もあり、今回は自邸の写真(上の画像)も特別に公開していただいた。
貴重なフレンチセンチュリーの家具の入手方法も含めた「入門書」としてお届けする。

教えてくれるのはこの方!

古久保拓也氏
古久保拓也(ふるくぼ たくや)氏 プロフィール
グラフィックデザイナーを経て渡英。アートディレクターとして企画制作を行う傍らアンティークのバイヤーのキャリアスタート。帰国後、中古マンション購入とリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」を展開するリノベる株式会社へ入社。2018年「インテリアからはじまる住まいづくり」をテーマにインテリア事業を立ち上げる。2021年には、リノベる東京本社に多目的スペース「b1.(ビーワン)」をオープン。企画展などを開催している。

ミッドセンチュリーにおけるアメリカンとフレンチの違いは?

「ミッドセンチュリー」と聞いたときに、米国西海岸で流行したアメリカンミッドセンチュリーを思い浮かべる方はおそらく多いはず。
そのイメージは、ハーマンミラー(herman miller )やノル(knoll)に代表される、直線から曲線的なものへと移行したデザインで、色も、ポップなものが見られます。

それに比べて、フレンチミッドセンチュリーは、彩度を落とした落ち着いた印象の色使いに、決して無骨に陥ることのない、オーガニックな雰囲気を活かしたデザインがほとんど。
デコラティブなフレンチアンティークやフレンチシックよりも、シンプルでミニマムな要素を持っているのが、フレンチミッドセンチュリーの家具の特徴です。

フレンチミッドセンチュリーを代表するデザイナーとしては、巨匠ル・コルビュジエとのコラボレーションで知られるシャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand|1903-1999)や、ピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret|1896-1967)、ジャン=プルーヴェ(Jean Prouvé|1901-1984)、ピエール・シャポー(Pierre Chapo|1927-1987)といった名前が、日本でもよく知られています。

そのうち、プルーヴェやペリアンは、素材として鉄を巧みに用いて、それまでの「鉄のイメージ」にはない軽快さをデザインして打ち出すという、画期的なパラダイムシフトを図りました。当時の彼らの取り組みやその成果が今、見直されているのが、昨今のフレンチミッドセンチュリーの流行の背景といえます。

mélèze Chair/Charlotte Perriand(写真提供:CASA DE)

誕生の背景の違いがプロダクトの特徴と魅力に

両者の違いとしてもう1つあげられるのが、プロダクトが生まれた背景です。
アメリカのミッドセンチュリーの家具は、イームズ(Eames)夫妻らが、ハーマンミラー社(herman miller)やノル社(knoll / 現在はherman millerと合併)といった米国の家具メーカーにデザインを提供して開発・製作され、大量生産品として販売されました。

これに対してフレンチミッドセンチュリーは、基本的に企業やブランドのためではなく、BtoBので事案であったことが大きな特徴です。
例えば、ペリアンがデザインしたことで知られるスツールやチェア、ベンチなどは、フランス南部の観光地レザルク(Les Arcs)におけるリゾート開発プロジェクトの一環で建設されたホテルのために、約20年の長きにわたってペリアンがデザインしたものです。その空間・その街に合うようにオリジナルでデザインされたものが多く、誕生の背景が米国のミッドセンチュリーとは異なります。

半世紀以上を経た現在、ペリアンやジャンヌレが手がけたオリジナルの家具が、アメリカのミッドセンチュリーと比べて数が極めて少なく、市場で高値で取り引きされているのはこのためです。
なかでも、インドのチャンディーガル都市計画のために、ジャンヌレがデザインしたプロダクトのオリジナルは、インド政府が国宝として保存活動を開始し、輸出制限をかけたため、価値が高騰しました。

富裕層がアート作品を買うように、フレンチミッドセンチュリーの家具を購入するという世界的なトレンドが、日本に入ってきたのはここ10年ほど。ここ数年は、インテリアショップなどが、現代のマテリアルなどと取り合わせた空間展示で、希少なオリジナルチェアや復刻版を販売するイベントも増えてきました(本稿下部の関連リンク参照)。

Wall lamp:CP_1 & Side board/Charlotte Perriand、Easy chair/Pierre Jeanneret(写真提供:objet d art)

フレンチセンチュリーの家具が欲しい!そんなときは?

前述のとおり、フレンチセンチュリーの家具は希少価値が高く、市場価格が下がることがないため、タイミングを見て買うことができれば、一生モノの財産となります。高価な1点もの、アートピースとして買うような感覚でしょう。

ここで見逃せないのが、近年販路が拡大しつつある「復刻版」の家具です。購入の選択肢がグッと広がっています。
古くは、カッシーナが、作家が存命中であった1965年から、コルビュジエ、ジャンヌレ、ぺリアンの家具を復刻してきた歴史と実績があります。昨年には、ル・コルビュジエ財団のサポートなどを受けながら、ジャンヌレへのオマージュとしてチャンディガールのプロジェクトから4つのモデルを発売。そのほか、ヴィトラ(Vitra)からプルーヴェのスタンダードチェアなどが販売されています。
シャポーの家具は、子息が復刻版のデザインを許可して販売しています。これらの家具は決して廉価ではないものの、そのぶんだけ、確かな品質を保っているといえるでしょう。

1950年代の時代感、ミッドセンチュリーらしさは新品でも変わりません。たとえ復刻版でも、それ1つで一気にその空間の主役となるのがフレンチミッドセンチュリーのデザイン、名作家具の素晴らしさ。アンティーク感は要らない・求めないという方には復刻版はオススメです。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で、いわゆる「おうち時間」が増え、居室空間やインテリアにお金をかける人が昨年来より増えています。
そうしたいけれども、なかなか手をつけられなくて……という方には、まずは1点豪華主義で、気に入ったフレンチミッドセンチュリーの家具を1つ購入し、自宅のリビングなどに据えてみて、そこから、空間全体のコーディネートを考えてみるというのも、暮らしをより良いものへとステップアップさせる、きっかけとなるのではないでしょうか。

フレンチミッドセンチュリーはこうインテリアに取り入れる!

コストでのVE(Value Engineering)を考慮しつつ、メインどころではこだわりましょう!
フレンチミッドセンチュリーの家具との取り合わせとして、本物の素材にこだわってみるのもポイント。例えば、石や木など。壁紙よりは塗装、左官仕上げなど。人の手の跡が感じられるような仕上げは、相性ぴったりです。

オーガニックな家具との取り合わせできるのも、フレンチミッドセンチュリーの良いところ。ペリアンも、アフリカンなものからデザインの影響を受けているといわれ、同じルーツをもつ家具として、空間の雰囲気がリンクするのでしょう。

大胆に、ゴロンとした木のスツールなどを合わせてみては? アフリカンやモロッカンのラグなども、ここ10年ほどでフィーチャーされている注目のインテリアアイテムの1つです。
あまりオーガニックすぎる、アノニマスなアフリカンなもので揃えると、民族調にはなりますが、何か1つあると、空間の中での良いアクセントになります。

和の空間にも馴染むフレンチミッドセンチュリーの家具(写真提供:objet d art)

日本ゆかりのプロダクトなら、イサム・ノグチの照明器具〈AKARI〉と組み合わせるのも良さそうです。ノグチが「光の彫刻」と捉え、手の届くアート・彫刻作品として、何タイプも開発・販売されています。
美濃和紙を通した柔らかな明度、和紙と木という自然素材同士の取り合わせや、プロダクト同士の彩度も、時代を超えて現代の空間にもマッチします。

まずは、お気に入りのフレンチミッドセンチュリー家具を、探すところから。インターネットや実際のストア巡りも、本稿で触れたそれぞれの家具の誕生の歴史を少しでも知っていれば、かなり楽しい旅になるはず。
これという1点を見つけて、自宅のインテリアに取り入れてみましょう!

古久保氏 自邸のインテリア(本稿1枚目の画像も同、photo by Takuya Furusue)

リノベる。
https://www.renoveru.jp

FEATURE2022.03.29

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