東京大学・本郷キャンパス内に、同学大学院工学系研究科と、積水ハウスによる新たな研究施設、デジタルファブリケーションショップ「T-BOX」が開設されました(東京大学プレスリリース)。
「T-BOX」は、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究および次世代の建築人材育成を目指し、積水ハウスの総括寄付講座として、2020年6月1日より活動中の国際建築教育拠点「SEKISUI HOUSE – KUMA LAB(以下「KUMA LAB」と略)に属する施設です。
工作機械や複写機器の設備を備え、2021年10月14日にオープン、順次運用を開始しています。
「T-BOX」設立の背景と目的
これまで当たり前とされてきたライフスタイルや価値観は、時代に合わせて、多種多様にかつ急激に変化し続けています。少子高齢化や環境問題などの様々な社会課題の解決に向けて、住まい・建築の新たなあり方が求められています。
一方、急速に建築分野におけるデジタルテクノロジーの活用が世界的に進むなかで、日本は高い技術力を持っているものの、その普及促進には大きく遅れをとっています。そのため、世界的潮流に合わせた研究施設の整備および国際的な人材育成が業界の急務となっています。東京大学と積水ハウスでは、2020年6月より、隈 研吾(東京大学特別教授)を中心に、新たな技術や価値観創出の研究活動を推進しており、これに加え、「未来の住まいのあり方」をテーマとした研究の場を創ることに合意し、「T-BOX」を開設したものです。
新研究施設「T-BOX」は、同大学名誉教授である内田祥哉氏(1925-2021)の設計で知られる、工学部1号館の屋上に建築学科図書室として増築されたスペースを改修して開設されました。
スクラッチタイルの旧屋上外壁を内部壁として取り込み、保存。プレキャストコンクリートを耐火被覆とした八角形断面の鉄骨柱が特徴的な、内田祥哉ならではの建築空間の特徴を活かしながら、最先端の研究・創作活動が展開される場へとリノベーション(改修)しています。
新たに設置した壁は、スタッフの執務スペースと作業スペースを区切るとともに、隈研吾建築都市設計事務所をはじめとする関係者が制作した模型やモックアップ、書籍などを収めた大小な木の展示ボックスを有し、学生たちの創作活動にインスピレーションを与えるインターフェイスとなっています。
「T-BOX」は、工学部に限らず、学内の利用者も受け入れているのが特徴の1つで、東京大学におけるものづくり環境のハブとなることを目指すとともに、今後ますます多様化する住宅への社会的ニーズに対して、デジタルテクノロジーの活用により、カスタマイゼーションが可能になる「住宅イノベーション」の実現もあわせて目指しています。
所在地:東京大学 本郷地区キャンパス 工学部1号館4F(東京都文京区本郷7-3-1)
延床面積:約180m²
デザイン監修:SEKISUI HOUSE – KUMA LAB(担当:隈 研吾、平野利樹、齋藤 遼)
設計期間:2020年6月〜2021年7月
オープン:2021年10月14日
公式ウェブサイト
https://ut-iaep.net/
「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」概要
国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの大きく3つの活動から成る。
1.国際デザインスタジオ
「KUMA LAB」ディレクターのセン・クアン(東京大学 特任准教授)と平野利樹(東京大学 特任講師)が世界から招聘した、第一線で活躍する建築家がデザインスタジオの指導にあたっている。2021年度春学期には、スペイン・マドリードとアメリカ・ボストンを拠点に活動するアンサンブル・スタジオと、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動するアンドリュー・コバックがデザインスタジオを指導した。2.デジタルファブリケーションセンター
「人と自然の共生」をテーマに、デジタルファブリケーションの活用によって生み出される建築が、その中で過ごす人々の人間性豊かな生活にいかに貢献できるかを実践的に研究している。「T-BOX」の新設により、建築学科内外からもアクセスできる、CNC加工機、3Dプリンタ、レーザー加工機などのデジタルファブリケーションを用いて、デジタルテクノロジーに関する高度な人材育成を目指す。3.デジタルアーカイブセンター
建築アーカイビングの手法・思想に関する研究および実践により、日本の建築資料のアーカイビングなどを主軸とした研究・教育拠点の構築を目指す。
学内外の建築家の図面や模型などの資料をデジタル化し、国内外の研究者がアクセスできるようなアーカイブプラットフォームの構築に取り組み、国際的な建築史研究・教育ネットワーク構築への貢献が期待されている。
アーカイブ環境の充実によって、持続可能で豊かな都市環境を生み出すための。既存建物のストックの活用方法を、より実践的に探求する研究・教育プログラムの構築も期待される。このほか、「KUMA LAB」では、国際アドバイザーに、バリー・バーグドール(コロンビア大学美術史学専攻マイヤー・シャピロ講座教授、ニューヨーク近代美術館(MoMA)建築デザイン部門元主任学芸員)、サラ・M・ホワイティング(ハーバード大学デザイン大学院(GSD)学部長および建築学専攻ホセ・ルイ・セルト講座教授)、佐々木経世(イーソリューションズ代表取締役社長)を迎え、コンピュテーショナル・デザインやポストデジタル、アーバンデザイン、建築史学などの建築学の各領域における国際的な研究・教育拠点の確立を目指しながら、「未来の住まいのあり方」を探究している。
特任教授(兼務):隈 研吾(東京大学特別教授)
特任教授(兼務):加藤耕一(東京大学大学院工学系研究科教授)、今井公太郎(東京大学生産技術研究所 教授)
特任准教授(専任):Seng Kuan
特任講師(専任):平野利樹東京大学プレスリリース(2020年6月30日)
「東京大学×積水ハウス「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」総括寄付講座を設立」
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/soe/press/setnws_202006301512384162070910.html