大阪芸術大学短期大学部の伊丹学舎のキャンパス内に、建築史家で建築家の藤森照信氏(東京大学名誉教授・東京都江戸東京博物館館長)との共同プロジェクトによるモニュメント〈空飛ぶ茶室〉が完成しました。2022年2月7日に完成セレモニーが執り行われています。
〈空飛ぶ茶室〉は、2本の柱に支えられ、地上から約5.7mの高床式。丸みを帯びたフォルムで、千利休の”三畳茶室”からとられたサイズとなっています。
長野県茅野市に建てられた藤森建築〈空飛ぶ泥舟〉に代表される、藤森氏の”空飛ぶ茶室シリーズ”を、大阪芸術大学短期大学部(通称:げいたん)の学内につくることを目指したプロジェクトは、2019年秋に計画されたもので、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響でスケジュールが変更となり、2020年10月に本格始動しました。
制作に携わったのは、空間演出デザイン、金属工芸、陶芸、ガラス工芸など、さまざまな領域で学ぶ学生たち。藤森氏から茶室に関する特別講義を受けてから、今回のプロジェクトに取り組んだとのこと。
現場では、藤森氏の指導のもと、焼杉造り、銅板曲げ、漆喰塗りといった、通常の授業では体験できない建築の工程にも携わり、約1年の制作期間をかけて完成しました。
今後は、教材として使用されるほか、学内のシンボルモニュメントとしても活用される予定です。
藤森照信氏コメント:
「今回の企画の相談を受け、伊丹学舎を訪れた際に、キャンパスの建造物、植物、空気に触れ、『げいたん』の環境の良さを実感し、この環境を壊してはいけない、そのうえで、新しさ、新鮮さを与えられるようなものをつくろうと考えました。私のこれまでの経験から、茶室のようなものであれば、相応しいものがつくれるであろうと。なにかこの大学のシンボルになるようなデザインをと考えるうちに、まずは高さを出そうと、木の上に制作することにしました。
面積は畳3枚分。これは、利休が大阪屋敷につくったとされる茶室『深三畳台目』に倣うとともに、これに勝負してみようと。
外観は、焼杉造り、銅板曲げ、漆喰塗りなど、さまざまな工程がありましたが、多領域に展開する『げいたん』の学生さんと共同で制作しました。内部の意匠にも注目してほしい。漆喰壁の装飾にはガラス細工を用いて、窓には、ガラスと和紙を用いた障子を張りました。外からの光が入り込んだときの美しさを追求しています。
さすがは『げいたん』という、創作熱心な学生さんと一緒に、理想の作品ができ上がり、私としてもとても気に入った作品となっています。」
大阪芸術大学プレスリリース(2022年2月18日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000044215.html
本稿画像提供:大阪芸術大学