FEATURE
"KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA/SANAA: Architecture & Environment" Special Report
妹島和世+西沢立衛/SANAA展「環境と建築」会場レポート
FEATURE2022.01.19

妹島和世+西沢立衛/SANAA展会場レポート

圧倒的な模型群から読み取るテーマ「環境と建築」

18年ぶりのTOTOギャラリー・間での展覧会

東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間にて、妹島和世+西沢立衛/SANAA展「環境と建築」が3月20日まで開催されています。

妹島和世氏と西沢立衛氏による建築家ユニット・SANAA(サナア)の展覧会がTOTOギャラリー・間(通称:ギャラ間)にて開催されるのは、2003年以来となります。当初の予定では、オリンピックイヤーとなる2020年5月から開催されるところ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で延期になっていたもので、約1年半を経て待望の開催です。

会場 3F GALLERY 1 入口

前回の2003年当時は、妹島氏が設計した〈Dior Building〉が同年末にオープンを控え、SANAAの代表作の1つである〈金沢21世紀美術館〉も竣工前で、2004年10月の開館を目指す途上にありました。

2003年のSNAA展 ギャラ間公式レポート
https://jp.toto.com/gallerma/ex030511/exhbt_rpt.htm

『TECTURE MAG』では、展覧会開催前に、妹島氏と西沢氏も出席して開催されたプレス向け内覧会を取材。会場で展示や、本展にあわせて用意された書籍について説明する2人の言葉も織り込みつつ、会場での写真を中心に本展をレポートします。

Photo by TEAM TECTURE MAG
Reported by Naoko Endo

3F GALLERY 1 全景

3つの事務所の最新プロジェクトを展示

本展では、SANAAと、妹島氏と西沢氏がそれぞれ代表を務める妹島和世建築設計事務所と西沢立衛建築設計事務所が、日本および世界各地で取り組んでいる、現在進行形のプロジェクトを中心に構成されています。本展で初公開となるプロジェクトも含まれ、今回の展示で、SANAAと、妹島事務所、西沢事務所それぞれの到達点を、展覧会というかたちで示しています。

これまでのプロジェクトを定点観測的に見せる

コロナ禍で開催が延期され、約1年半の間に変容した社会のあり方などを踏まえて、妹島氏は「何が変わらず、普遍であるのかを考えたとき、私たちの一貫した姿勢、思想を見せることが大事だろうと考えた。これまで取り組んできたプロジェクトを、定点観測的に見せる、そのような展示構成となっている。」(プレス内覧会の発言より)。掲げられた展覧会のテーマは、2020年から変更されることなく、「環境と建築(Architecture & Environment)」です。

模型、模型、模型!の展示

本展には映像資料や図面もありますが、そのほとんどは建築模型です。サイズも素材もさまざまなスタディ模型などが展示されています(一部の模型は本展のために作成し直したもの)。

妹島・西沢氏によれば、今回の会場構成では、3Fと4Fで「見せ方」に差をつけたとのこと。
写真からもわかるように、3Fは多くの模型が低く展示されているのが特徴です。
4Fの展示室では、逆に空間を埋め尽くすように数々の模型がひしめいており、模型もやや大ぶりに。劇場の断面、柱や梁といった建築模型など、建築のディテール・モノ的な模型がその多くを占めています。

〈ニューサウスウェールズ州立美術館 シドニーモダンプロジェクト(The Art Gallery of NSW Sydney Modern Project)〉について説明する妹島氏
3F GALLERY 1 奥:SANAA〈0-Project〉2021年 全体模型(S=1:300)
手前:妹島和世建築設計事務所〈ししいわハウス No.4〉2021年 全体模型(S=1:100)
3F GALLERY 1 西沢立衛建築設計事務所〈HOUSE IN LOS VILOS〉2018年 全体模型(S=1:50)

スチレンボードやスタイルフォーム、アルミ、段ボール、木、紙など、使用した素材も併記されている模型を1つ1つ見ていくだけでも、いったい何を検証するためにこのサイズ・マテリアルでつくられているのかを想像して、SANAAおよび妹島氏と西沢氏の事務所におけるディスカッションの場に紛れ込んだような気持ちを味わうことができるでしょう(3Fと中庭の展示室には、腰掛けて模型を眺められる丸座の椅子も用意されています)。

建築と環境の因果関係も併せて展示

3Fでは、設計・デザインのコンセプトの検討を重ねた段階でのスタディ段階で、それらが具体的にどのようにモノとして具現化していったのかが、外階段を上がった先の4Fにて示され、2つの展示室が結びつきます。

3Fの展示台が低いのは「プロジェクトの建ちかた」を見せるため。地形や周囲の河川、まちの歴史、土地の記憶といった潜在的な要素と、自分たちがこれから建てる建築がどのように構築されるべきかといったスタディの一部を、展示模型を通して提示しています。

〈ボッコーニ大学 新キャンパス〉の建設地を都市模型から探せ!

3FのGALLERY1に展示されている〈ボッコーニ大学 新キャンパス〉の展示では、壁に大きな「都市模型」を西を上にして展示。現場はどこかと探せば、左の端、郊外との境界に、小さな規模で確認できます。
蛇のようにうねった建物の外観形状を知っていれば、これかとわかりますが、ミラノ市旧市街全体を作成したこの都市模型を前にすると、真っ先に目につくのは、どうしても向かって右上で大きな敷地を占めているスフォルツェスコ城になります。

SANAA〈ボッコーニ大学 新キャンパス〉2021年 都市模型(S=1:1500)スタイロフォーム

模型の左下に付けられた展示解説によれば、「ミラノのまちのタイポロジーの1つである、中庭形式を踏襲しつつ(以降は略)」と記されており、西沢氏が説明するところの「旧市街地から郊外へと、数珠つなぎのようにして移り変わっていくような雰囲気」から、都市の歴史性などを踏まえた設計であったことがうかがえます。1つの建築をつくるというよりは、歴史あるミラノの街に溶け込むようなランドスケープをつくろうと心がけた結果でもあります。

このように、展示された模型1つ1つに、サイトの立地と周辺の環境に関して記述の多くを割いた説明があり、昨今は現地に行くことが難しい鑑賞者の想像力を補うとともに、本展のテーマである「環境と建築」について伝えてくれます。

圧巻の〈Puyuan Design and Event Center〉敷地模型

中庭の展示は、妹島和世建築設計事務所が中国浙江省にある街「プユアン(Puyuan)」で手がけ、2021年完成の最新事例〈Puyuan Design and Event Center〉の敷地模型です。

展示解説によれば、街全体を運河が巡らされており、その中の小島の先端部に建っている寺院を含めた小島全体に巨大なガラスの覆いをかけるという大型プロジェクトです。
模型の中央部に、その「運河の中に浮かぶような、大きな彫刻のような、長さ150m、高さ30mのワンルームの交流センター」を確認できます。

妹島和世建築設計事務所〈Puyuan Design and Event Center〉の敷地模型を前に解説する妹島氏

中庭全体を使った「プユアン」の模型の縮尺は1/75。妹島氏が昨年参画した「パビリオン・トウキョウ2021」で披露した〈水明 / Suimei〉を想起させる展示デザインです。

4F GALLERY 2 全景(右端:「透明な明かり」原寸模型)
4F GALLERY 2〈蘇州獅子山広場芸術劇場〉模型
中庭展示 全景
3F GALLERY 1 会場風景

関連書籍はSANAAの集大成

本展の関連書として、妹島和世・西沢立衛・SANAAの初期から最新作までを収録した3巻セット『KAZUYO SEJIMA RYUE NISHIZAWA SANAA 1987-2005 Vol. 1 / 2005-2015 Vol. 2 / 2014-2021 Vol. 3』が、2021年12月にTOTO出版より刊行されました。
妹島・西沢の両氏が編集に参画し、こだわり抜いて制作した、設計活動の集大成ともいえる作品集です。

横に長い判型は、横位置で撮影されることが多いプロジェクトの竣工写真や、図面などの資料を、紙面でどう見せるかを考えてのサイズとなっています。

妹島・西沢氏の談によれば、「これまでの作品を時系列に並べたのは今回初めて」とのこと。本書を総覧すると、時代ごとの建築技術だけでなく、両氏の考え方の変遷といったものも浮かび上がり、西沢氏は「これらには逃れようのない関連性があり、建築のまた違ったありようが示されている」と、刊行を約1カ月後に控えたプレス内覧会の場で述べました。

書籍の編集作業については、妹島・西沢の両氏は「建築をつくることに似ている」と初見を述べるとともに、昨今の電子書籍と比較して、「情報が流れていくインターネットの世界には過去も未来もないが、紙の本には、そこに確実に過去がある」として、紙での発行にこだわった理由を説明しました。

フライヤーの写真変更が意味するもの

本展は、当初の予定ではオリンピックイヤーで海外からの来場者も見込まれていた、2020年に開催予定であったことは冒頭で触れました。本展では、その「影響」ともいえる造作が、チラシやポスター(フライヤー)に見ることができます。

使われているビジュアルは3つ。SANAAと、妹島氏と西沢氏がそれぞれ代表を務める事務所が手がけ、竣工した事例ないし進行中のプロジェクトの写真です。
2020年と2021年のフライヤーを並べてみると、3事務所各1作品を縦3連で見せるデザインは踏襲していますが、写真はいずれも変更されています。

2020年(右)と2021年(左)で異なるSANAA展「環境と建築」のフライヤー
左側・上から順に:SANAA〈ボッコーニ大学 新キャンパス / Bocconi University New Urban Campus〉2019年、イタリア・ミラノ / 妹島和世建築設計事務所〈大阪芸術大学 アートサイエンス学科棟 / Osaka Osaka University of Art, Art Sience〉2018年、日本 / 西沢立衛建築設計事務所〈済寧市美術館〉/ Jining Art Museum〉2019年、中国山東省
右側・上から順に、SANAA「シドニーモダンプロジェクト(Sydney Modern Project)」2015年〜、オーストラリア / 妹島和世建築設計事務所〈大阪芸術大学アートサイエンス学科棟〉/ 西沢立衛建築設計事務所〈済寧市美術館〉

フライヤーの最上段に配置されたビジュアルは、SANAAの最新のプロジェクトの写真です。こちらが最新のものに差し変わったのは当然として、注目はその下の2点。妹島事務所と西沢事務所の最新プロジェクトのビジュアルは、竣工後の画から、グランドオープン前の状態を撮影した画に変わっています。よく見ると、工事従事者向けの張り紙などが写り込んでいる箇所も(メインビジュアルとして使う場合、通常であれば候補から外されるか、デジタル加工で消してしまうことが多い)。
この変更は何を意味しているのでしょうか。

この2点の写真は、2020年の春先に、現地のスタッフがスマートフォンで撮影したものです。このとき、すでにコロナは世界中に拡大し、海外はおろか国内の現場に出向くこともできなくなっていました。つまり、この2点の写真には、コロナ禍が建築および設計事務所に与えた影響という現象も定着されているのです。

延期された展覧会が2021年10月22日より始まるというアナウンスが発表された同年の7月、このフライヤーもあわせてリリースされました。
このフライヤーには、コロナ禍が招いたかつてない事態の一端が映り込んでいるのと同時に、何年かが経ち、本展のフライヤーを見たときには、この制作秘話を知る人が「そんなこともあった」と懐かしく振り返ることができるような、世界中の人々が平穏な日常を取り戻した世の中になっていてほしいという願いも込められているのかもしれません。

フライヤーに関する説明は、会場内にはありません。プレス内覧会にて、ギャラ間関係者からエピソードとして披露されたものですが、本展での大事な見どころの1つとして、レポートの最後に書き添えます。

GALLERY 1 にて、妹島氏と西沢氏

展覧会開催概要

妹島和世+西沢立衛/SANAA展 「環境と建築」
KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA: Architecture & Environment

会期:2021年10月22日(金)~2022年3月20日(日)
休館日:年末年始、月曜、祝日
開館時間:11:00-18:00
会場:TOTOギャラリー・間
所在地:東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F(Google Map)
TEL:03-3402-1010
入場料:無料(要予約)
※事前予約制(TOTOギャラリー・間のWebサイトにて受付)
※会場ではCOVID-19対策を実施
※今後の状況により、会期・開館時間や内容を変更する場合あり。最新情報は、TOTOギャラリー・間Webサイトにて確認してください


TOTOギャラリー・間 YouTube公式チャンネル 展覧会ガイド「妹島和世+西沢立衛 / SANAA展「環境と建築」(2022/02/09)

TOTOギャラリー・間 公式Webサイト(入館予約)
https://jp.toto.com/gallerma

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