メディアアート・広告・エンターテインメント・建築・都市開発まで、様々な領域でリアルとオンラインを横断しながら活動の幅を拡張し続けてきた株式会社ライゾマティクス(代表取締役:齋藤精一)が、組織変更を発表しました(2020年10月31日プレスリリース)。
ライゾマティクスのプレスリリースによると、同社は「新しい領域を切り開き世界をより面白くする」という使命感と野望を持って2006年に設立。インタラクティブアートを通じて、情報表示の新たな形態や、人と人、人と機械の新たなコミュニケーションを提案してきました。メディアアートで培われた知見が、一般的なサービスやプロダクト、エンターテインメントへと展開される黎明期から、多くのプロジェクトを世に送り届けてきました。
数多くのプロジェクトやコラボレーションを通じて活動の領域を拡げ、2016年7月25日に創立10周年を迎えた同社は「Research」「Architecture」「Design」の3部門を設立し、美術館やライブイベント、広告プロモーションから始まったクリエイションを、商業施設や都市開発といった実空間におけるインフラやプラットフォームへと実装してきました。
2020年を迎え、データとコンピュテーションの主導のもとで社会が大きく変容し、インフラが整備される中で、これまで特殊な環境で行われていた活動が、次々に公共空間へと展開されています。このような時代の中、アートや広告の現場で築き上げてきた挑戦的なプロジェクトの実績を活かして、社会へ次々と実装するチャンスが増えると同時に、社会、産業からはこれまでよりも一層大規模な要請を受けているとのこと。このような時代背景とこれまでの取り組みから、組織変更という大きな変革を行うとのことです。商号の変更は、2021年1月末を予定しています。
今回の組織変更では、株式会社ライゾマティクスを株式会社アブストラクトエンジンへと社名変更し、「ライゾマティクス」と「パノラマティクス」の2つのチームを設置。さらに関係会社として、新たに株式会社フロウプラトウが設立されます。
現社名:株式会社ライゾマティクス
新社名:株式会社アブストラクトエンジン
代表取締役:齋藤精一
取締役:真鍋大度、石橋 素
変更日:2021年1月末
公式ウェブサイト https://abstractengine.ltd/
社名「アブストラクトエンジン」の由来:
abstract machines=「抽象機械」の考え方は普遍的で非公理的であり、図表的なオートマタとしてフーコーやドゥルーズ、ガタリにも引用された。彼らの時代は過ぎ、大きな哲学のうねりを失っている現代において、もはやマシーンではなく力を生み出す社会の動力=engineとして機能すべく新社名を「アブストラクトエンジン(Abstract Engine)」と名付け、実証実験、社会実装を更に推し進めてまいります。
齋藤精一 コメント:
建築を一度諦めた私は、建築よりも圧倒的に速いクリエイティブ産業に10年以上従事してまいりました。広告、ブランディング、映像、イベントやプロモーションなど、立体から、コトのデザインまでさまざまなデザイン領域を長年経験した後、設立10周年を期に一度自分とライゾマティクスのルーツを考えました。その上で社会をより良く変えるために、コンテンツや表現がもっと社会のエンジンになるために考えた結果、見出した自分なりの答えが、「建築・都市への回帰」でした。現在は都市開発や地方活性化、行政とのクリエイション、ICT・スマートシティ実装などに関わり、社会実装の難しさと取り組む意義が見えてきました。今回の社名変更も含めた体制変革は我々がチームとして、個人として次の段階に進むために不可欠であり、更に様々な形態とスケールで社会実装をしていく手段として長い間準備をしてきました。それを皆さんにようやく報告できるのを嬉しく思うと同時に、今後更に広がる様々なプロジェクトに皆さんと共に挑んでいければと思います。
新チーム名:ライゾマティクス
変更日:2020年10月30日(金)
主宰:真鍋大度、石橋 素
公式ウェブサイト https://rhizomatiks.com/
技術と表現の新しい可能性を探求し、研究開発要素の強い実験的なプロジェクトを中心に扱う部門「ライゾマティクスリサーチ」は、「ライゾマティクス」に改称。今後もR&Dプロジェクトや作品制作、外部のアーティストや研究者とのコラボレーションプロジェクトなどを通じて、より一層カッティングエッジな表現作品、研究を世の中に発表していくとのこと。
真鍋大度コメント:
メディアアート・インタラクティブアートが産業に展開されはじめた黎明期に、私は初めてインタラクティブシステムの開発を業務として請け負いました。2003年当時、広告コンテンツとして制作したシステムはいずれ社会インフラへと進化することを確信し、少し先の未来を予見する様なメディアアート作品の制作を開始しましたが、YouTubeの普及とともにメディアアートの大衆への認知は一気に広がり、アートとして発表していた表現は次第に一般的なサービスやプロダクト、エンターテイメントへと変化していきます。
そして2010年代に入るとメディアアーティストが持つ想像力と実装力はSNSを通じて広く知られて行き、広告やエンタメ、そしてUX/UIデザインの領域まで活動の幅が拡張しました。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルやD&ADなど国際的な広告賞ではメディアアーティスト達の名前が連なることも多くなり、現在では社会や産業からライゾマティクスへの要請も都市開発への監修、国際的な祭典の演出などスケールが大きいものへとシフトしています。
そういった流れの中、ライゾマティクスの活動も新たなフェーズに入ったことを認識し今回の大きな体制変革へと舵を切ることになりました。15年間培ってきた知見を元にフロウプラトウ、パノラマティクスという新しい形で社会実装を行い、同時にライゾマティクスはより一層新しい挑戦ができればと考えています。
石橋 素コメント:
私がメディアアートの世界に憧れを抱きつつ足を踏み入れた2000年初頭からは、想像もつかなかった時代が今やってきています。アートから広告へ、さらにエンターテイメントへと領域を広げつつ、会社組織としてチームを強化しながら今日まで続けてきた結果、多くの幸運にも恵まれ、広く一般社会にも認知されるようになりました。さらにここから次のステップへ踏み出すために、今回の組織変更があります。困難な時代だからこそ、個の力を最大限に活かしつつも組織としての強さをさらに高め、活動の領域を広げていきます。新しいものを作り続けられる環境、作りたくなる環境、そしてそれを見てもらえる環境を、未来のために作ります。
新チーム名:パノラマティクス
変更日:2020年10月30日(金)
主宰:齋藤精一
公式ウェブサイト https://panoramatiks.com
デジタル・テクノロジーを活かしたクリエイティブで得られる体験を、空間・都市といった世界まで拡張し、建てて終わりの建築ではない変化と進化を続ける建築を生み出す部門「ライゾマティクス・アーキテクチャー」は、「パノラマティクス」に改称。社会を良い方向に動かすクリエイティブアクションを続けていくため、これまで繋がらなかった領域を横断して組織や人、行政や業界をつなぎ、新しい仕組みからつくっていきます。
株式会社ライゾマティクスでは2006年の設立からこれまで、表現のための研究開発力、多くの企業とのコラボレーションを通じた統合的なクリエイティブ力を培ってきました。オンスクリーンからフィジカル空間まで横断するデザイン・実装力をベースに豊かな体験をつくり、持続可能な状態で社会に実装するため、株式会社フロウプラトウ(代表取締役:千葉秀憲)を立ち上げ、さらには東京理科大学イノベーション・キャピタル株式会社より約4億円の資金調達を行い、体制を新たにします。
代表取締役には、ライゾマティクス取締役 / プロデューサーとして、国内外で数々の大型案件を担当してきた千葉秀憲、取締役には、同じく創業期からのメンバーである中浜大輔、東京理科大学イノベーション・キャピタル株式会社から片寄裕市氏が就任します。
社名:株式会社フロウプラトウ
代表取締役:千葉秀憲
取締役:中浜大輔、片寄裕市
所在地:東京都目黒区東山1-4-4 目黒東山ビル8F
資本金:200,025,000円
事業内容:コミュニケーションデザイン、ウェブデザイン、グラフィックデザイン、ブランディング、スペースエクスペリエンスデザイン、マネジメント
業務開始日:2019年11月1日(金)
公式ウェブサイト https://flowplateaux.com/
社名「フロウプラトウ」の由来:
フロウプラトウとは、ライゾマティクスの元となった「リゾーム」を掲げたフランスの哲学者ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの共著「千のプラトー」から引用し、「リゾーム」は地下茎、「プラトー」は高原を意味します。地下から地上へと拡げていく意図を込め、フロウプラトウと命名しました。
千葉秀憲コメント:
ライゾマティクス設立からおよそ15年の間に、多くの優秀なクリエイターの方々と様々なお仕事させていただきました。クリエイターの方々は、皆違う考え方やそれぞれの信念・美意識をもって活動されていて、それを間近でみる私には、いつまでも新鮮で刺激的な毎日を送らせていただいています。彼らが求める理想の環境や体制をつくることは非常に面白いものであり、しかしながらその多様性が故にとても難しい課題だと認識しております。
私の信念は、その理想の環境と体制を考え続けることにあります。仲間たちとともに、その信念を貫き通していきます。
中浜大輔コメント:
表現に近い場所に身を置きたいという思いで2007年にライゾマティクスに身を移し、会社の成長とともに歩んでまいりました。僕たちがもっとも大切にするのは、創業期から変わらず、作り手たちの真摯にモノづくりに向き合う姿勢です。これまでよりもさらに彼らの活躍の場を整えることで、よりクオリティの高い成果を生み出し、社会に貢献してまいりたいと思います。
フロウプラトウの主な事業内容は、「持続可能な社会実装」を全ての活動のベースとし、以下の3つを掲げています。
・クライアントと共に考え、デザイン・実装力で解を導く
・社会の変化に伴う潜在ニーズとナレッジの接点を見出し、短中長期視点で新たな価値を社会に実装する
・ライゾマティクスでのマネジメントの知見を生かし、クリエイターが活動しやすい環境をつくる
これらの活動を通じ、多くのクライアントやパートナーと共に、より良い社会づくりに貢献していくとのことです。(en)
株式会社ライゾマティクス
https://rhizomatiks.com/