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サバゲーが循環させる森林保全と地域活性化、木を伐らない林業「BE FORESTER」の試み

BUSINESS2021.08.01

林野庁補助事業の1つとして実施された、森林づくりの課題を林業人材と異分野の事業開発経験者のオープンイノベーションによって解決する、アクセラレータープログラム「SUSTAINABLE FOREST ACTION 2020(SFA2020)」において、優秀賞を受賞した2案の1つ、「山林で行うサバイバルゲーム事業」が、栃木県壬生町にて実践されています。森林保全と林業の活性化につながる新たな施策として、注目です。

サバゲー森林保全事業「BE FORESTER」

「SFA2020」は、林野庁の「令和元年度森林づくりへの異分野技術導入・実証事業」の一環として、2020年夏にスタートしました(運営:SUSTAINABLE FOREST ACTION事務局 / 株式会社Spero)。本誌『TECTURE MAG』では、募集要項を7月に掲載しています(本稿下部にて関連リンクを設定)。

「SFA2020」では、持続的な造林・林業を実現する事業を創出することを目的に、参加者を募集。そのうち採択された27名(林業従事者16名、事業開発経験者11名)をマッチングした11チームを編成。さらに各チームには、事業開発経験のある11人の伴走メンターがつき、8月23日のキックオフから、事業化案を決めるデモデイまでの約2カ月の間、実証実験や検証などをそれぞれ進めました。

「SUSTAINABLE FOREST ACTION2020(SFA2020)」デモデイの様子

2020年11月1日に開催された「SFA2020」デモデイ 永田町会場の様子

「SFA2020」の成果を発表するデモデイは、永田町会場とオンラインにて2020年11月1日に開催。勝ち抜き方式によって以下の2チームが優秀案に選出され、チームあたり200万円の事業化資金が提供されています。

優秀案「施行してほしい山林所有者と施行したい事業体をつなぐサービス」
受賞チーム:
・奥川季花 / ソマノベース 代表(事業)
・德永勇人 / 特定非営利活動法人かいろう基山(林業)
・メンター:幸田泰尚 / 株式会社クラウドリアルティ 執行役員
[事業概要]
森林管理(伐採や造林)を施業してほしい山林所有者と施業したい事業体をつなぐサービス。このサービスを通じて、山林所有者に利益を返せる業者を増やすとともに、事業者側の生産向上・社内効率化なども支援することで、山林所有者が森林施業を依頼する事業体の選択肢を増やし、林業界全体の質向上と底上げを目指す事業。

優秀案「山林で行うサバイバルゲーム事業」
受賞チーム:
渡部真之助 / 某林業会社(林業)
蛭間祐介 / 渋川広域森林組合 造林班班長(林業)
勝 泉貴 / 本田技研工業株式会社ものづくりセンター栃木コックピット 電装開発課(事業)
メンター:池森裕毅 / 株式会社tsam 代表取締役
[事業概要]
伐採予定地で行うサバイバルゲーム(サバゲー)事業。私有林の山主から山を借り、サバゲーフィールドとして提供する。入山料の一部をレンタル料、市町村に造林サポート基金として還元することで持続的な山づくりに寄与する。また、サバイバルゲームツアー開催を通じ、新しい層に対し山林への興味関心を醸成するとともに、周辺の町おこしにもつなげる。

「SFA2020」の経緯と結果発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000056075.html

「SUSTAINABLE FOREST ACTION2020(SFA2020)」優秀案受賞チーム

優秀賞受賞「山林で行うサバイバルゲーム事業」提案チーム(左から、渡部真之助氏、蛭間祐介氏、勝 泉貴氏、池森裕毅氏)

「山林で行うサバイバルゲーム事業」で優秀賞を受賞したチームのメンバーは、2020年12月に株式会社フォレストーリー(栃木県宇都宮市)を設立。同事業の委託事業者として、山林所有者から山林を借り、サバゲーイベント「BE FORESTER」として実行に移しています。イベント開催だけでなく、森林保全に貢献するサステナブルな事業として、林業の専門家が森林整備のコンサルティングまで行っています。

サバゲー森林保全事業「BE FORESTER」

同事業案の背景の1つに、20年ほど前までのサバゲーは、山林を自分たちで開拓してフィールドをつくるのが一般的でした。その後、サバゲーブームが到来し、企業などの参入などで人工物の有料フィールドが次々にオープンしています。
一方で、今日では昔のように山林を簡単に使うことができなくなっており、自然の中でのサバゲーの機会は極端に減っていました。

フォレストーリーが事業化したサバゲー「BE FORESTER」では、枯損木や劣性木を伐倒し、枝葉を用いてバリケードもつくり、窪地やブッシュ(薮)を活かしたフィールドを造成。ほかにはない、自然を最大限に活かした森林フィールドを提供しています。
これまでに開催した「BE FORESTER」の参加者からは、「懐かしい」「ここでしかできないゲーム内容」「自然を五感で感じた」といった感想が寄せられ、好評とのこと。

サバゲー森林保全事業「BE FORESTER」

イベント開催にあたり、現在のフィールドをおく栃木県壬生町は、町を挙げての協力体制にあります。同町には観光スポットが少なく、これまで観光ビジネスの試案を繰り返してきました。サバゲーイベント「BE FORESTER」を開催することで、参加者が飲食店や宿泊施設を利用する経済効果が生まれます。主催者も、参加者に提供する昼食の弁当を地元の割烹料理屋に発注するなど、地域の飲食店を率先して利用しています。
また、サバゲーフィールドとして初となる保険加入(三井住友海上、国内旅行傷害保険)を必須としているのも特筆点です。(en)

フォレストーリー設立メンバー

フォレストーリー メンバー(左から、蛭間祐介氏、渡部真之助氏、勝 泉貴氏

「BE FORESTER」事業者からのメッセージ
〝大自然の森林フィールドを提供する=林業の知名度を上げる〟
森林は、私たちの祖先が未来に想いを馳せながら木を植え、手入れをし守ってきた大切な財産ですが、森林の経済的価値が低下する現代、手入れが及ばず山が荒れ、森林の公益的機能が危ぶまれています。
それらを解決するためには、林業の復興が不可欠です。
「経済的問題の解決」と「知名度の向上」が林業の復興のカギになると私たちは考えます。
材木販売以外で利益を生み、人が山に入ることで林業をる。
「BE FORESTER」は、その2つを兼ね備えています。
私たちが林業を盛り上げる一翼を担います。
人々が森や山を好きになり、人々と森や山が元気になることが、私たちの目指す未来です。(フォレストーリー)

フォレストーリー 公式Webサイト
https://forestory.co.jp/

なお、開催8回目となる「SURVIVAL GAME」は、2021年8月21日(土)に栃木県壬生町にて開催を予定しています(雨天中止)。

サバゲー森林保全事業「BE FORESTER」

イベント詳細
https://beforester.net/

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