大東建託株式会社は、水害対策に特化した災害配慮型賃貸住宅の商品「ぼ・く・ラボ賃貸住宅」を開発中であることを発表しました。2022年1月の発売を目指します。
また、災害が発生した際には、防災拠点としても機能する同社の支店と連携し、この賃貸住宅が地域における防災サテライトステーションとしても機能できる仕組みづくりも計画中です。
開発中の賃貸住宅は、生活の質を確保しながら、事前に防災機能が備わっている「フェーズフリー」な防災のあり方を実現できる住まい。事前の備えが日常時でも非常時でも役に立つ、いざという時に役立つ住まいや暮らしの実現に向けて開発を行います。
災害配慮型の賃貸住宅の開発は、建築家の稲垣淳哉氏を共同設計者に、また「正しいことより、楽しいことを。」を掲げて防災に関する啓蒙活動やアート事業を行なっている、NPOプラス・アーツ理事長の永田宏和氏をアドバイザーに迎え、大東建託と共同して進められます。
稲垣氏は、佐野哲史氏とともに建築設計事務所・Eureka(エウレカ)を共同主宰。同事務所は、2020年度に実施した「第8回 大東建託賃貸住宅コンペ」において審査員特別賞を受賞者。独創的で未来志向の住宅デザインが大東建託に評価され、今回の商品開発における共同設計者に迎えられました。
2019年「第8回 大東建託賃貸住宅コンペ」概要(PDF)
https://www.kentaku.co.jp/corporate/pr/info/2019/aqehc4000000c7yh-att/chintaikonpe2019_0830.pdf
開発の背景として大東建託では、昨今発生が著しい大型自然災害および浸水被害における課題を挙げています。
建築基準法や消防法では、地震や火災などに関して建物の強度・仕様などの規定が細かく定められているものの、水害に関する水防法では、現時点で細かな規定がないとのこと。このため、水害対策が備えられた建物の供給が急務であると考え、万が一、水害に被災しても早期に復旧が可能で、復旧作業時にも入居者が一時的に退去する必要がない賃貸住宅の設計に取り組みます。
開発のキーワードとして掲げる「フェーズフリーとは、日常生活においては非常時のことをイメージしにくいことから、日常時と非常時の間にある想像の壁をなくすという考え方。日常・非常時どちらでも、事前の備えが役に立つように日常生活を送りながら、非常時の防災機能が備わっている防災のあり方を、今回開発中の賃貸住宅で実現することを目指します。
商品名:ぼ・く・ラボ賃貸住宅
構造:1階 RC、2階木造4×4工法
販売開始日(予定):2022年1月
住戸間取り:2LDK+アネックス
専有面積:81.68m²
※2021年9月2日発表時点
(1)1.5m程度の水害を想定
災害時に1階が水没することを前提に、室外機などの設備は2階へ設置し、コンセント類も天井面に設置して漏電を回避する
(2)2階以上に居住空間を集約
仮に1階が被災しても在宅避難を可能に
(3)階段室による重力換気
3層に設けるメゾネットを活かし、筒状の階段室が風の通り道になる。被災時の早期乾燥効果なども期待できる設計
(4)2階バルコニー、3階ルーフバルコニー
日常利用ではバーベキューなどのアウトドアや日光浴ができる一方で、災害発生時はボートやヘリでの退避ができるよう、外部への避難ルートを確保
(5)屋根付きの駐車場
建物外に駐輪スペースが不要となり、敷地計画が容易に。EV(電気自動車)給電も管理しやすい。
(6)アネックス(離れ)
日常生活で必要な空間とは別に用意された空間。事務所や、テレワークや趣味室などに使える。防音効果が期待できるRC造とし、楽器の演奏や機械工作にも使用可能
商品名は、同社が取り組む「賃貸未来研究室」の1つとして、2018年に立ち上げた、防災&暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」に由来します。
「ぼ・く・ラボ」では、防災を意識した賃貸住宅商品の開発に加えて、人と人、人と地域をつなぐネットワークを構築するために、支援物資や給電設備などを備えた「ぼ・く・ラボステーション」の配置や「ぼ・く・ラボ」アプリの配布、人々の防災意識を高め、地域のコミュニケーションを活性化するワークショップなどのイベントも開催してきました。
防災&暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」メンバー:COCO(ぼ・く・ラボ代表、賃貸未来研究所所員)、永田宏和(特定非営利活動法人プラス・アーツ理事長)
防災&暮らし研究室「ぼ・く・ラボ」Webサイト
https://www.kentaku.co.jp/bokulab/
これらの取り組みが評価され、2019年にはグッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しています。
https://www.g-mark.org/award/describe/49704
大東建託では、大東建託の支店を「ぼ・く・ラボステーション」と捉え、災害発生時などいざという時に集えた防災拠点として、2022年3月末までに全国に36拠点の設置を目指しています。
開発中の「ぼ・く・ラボ賃貸住宅」は、この「ぼ・く・ラボステーション」のサテライトステーションとして機能し、災害時に共助として活躍できる仕組みを構築していく計画も進めています。
大東建託「賃貸未来研究室」Webサイト
https://www.kentaku.co.jp/miraiken/
「水害対策に特化した 「ぼ・く・ラボ賃貸住宅」 開発開始」プレスリリース(2021年9月1日)
https://www.kentaku.co.jp/corporate/pr/info/2021/bokulab_20210901.html