建築テック系スタートアップのVUILD(代表取締役 秋吉浩気)と、共創型戦略デザインファームのBIOTOPE(代表 佐宗邦威)の2社が協業し、デジタル家づくりプラットフォーム「Nesting(ネスティング)β」を開発し、ベータ版を公開したのが今年5月10日のこと(同日の本誌ニュース)。
その後、来春のサービスインに向けて実証実験が行われており、その1棟目となる住宅が、北海道弟子屈町に竣工しました。
「Nesting」は、全国どこにでもある地域の木材と加工設備を用いて、家づくりをサポートするプラットフォームです。自分の木工所を持ったような感覚で、誰でも家を建てることを可能にしたのが大きな特徴です。
デジタルテクノロジーを用いて、快適で環境負荷の少ない住まいを自分たちで設計し、つくり出す体験を提供しています。
Nestingの特徴
Template 〜 エコで贅沢な空間
Application 〜 住まいを作る喜び
Process 〜 皆で造る楽しさ
Community 〜 創ることで共に学ぶ
イメージとして、地元の木材を近場のデジタル加工機を用いて、大空間も可能な部材を素人でも持ち運べるサイズで加工します。プラモデルを組み立てるような感覚で、家族や仲間と楽しみながら建てるもよし、「Nesting」が提携する工務店に施工を依頼することもできます。
地元の材を使うことで、輸送時の炭素排出量を最小限にとどめ、木材の多用は炭素貯蓄量を最大化し、脱炭素社会にも貢献します。
加工機が近場にない場合も、構造部材をキット化して現場まで送ることで、工程を単純化し、工期短縮を実現します。
弟子屈町にこのほど竣工した住宅は、VUILDの設計監修のもと、施主自らがデザイン、設計しています。
北海道の東部に位置する弟子屈町は、年間平均気温は摂氏5.4度、ときにはマイナス20度に冷え込むこともある寒冷地です。この気候に合わせ、今回のプロトタイプ住宅では、断熱性能の基準であるHEAT20のG2[*1]を実現。熱源は温泉熱を使うことで、少ないエネルギー消費で快適に過ごすことができ、ソーラパネルと蓄電池を設置すれば電力を全てオフグリッド(自給自足)で賄うことも可能です。
*1.HEAT20:地球温暖化とエネルギー問題への対策として、2009年に発足した「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の英語表記の略称。戸建住宅の目指すべき住宅像と推奨する断熱性能水準の外皮性能グレードとしてG1とG2を提案している
詳細:http://www.heat20.jp/grade/index.html
11月2日にβ版が公開された「家づくりアプリ」を用いると、よりスムーズに、デザインや設計を行うことができるようになります。
活用イメージは、利用者がアプリ上で必要な間取りを描くと、瞬時に家のかたちが立ち上がります。建物の概形は1坪単位で変更できます。窓の位置や建具、設備、家具、仕上げを選び、作業を進めていくと、3次元のイメージにあわせて見積りも更新されるため、費用の概算を理解しながら、設計をつくりこむことが可能に。ゲーム感覚で、直感的に理想の住まいをつくることも、ワークショップ形式でプロの設計士のサポートを受けることも可能です。
VUILDとBIOTOPEでは、将来的には、アプリ内でオーダーメイド住宅の発注ができるところまでを目指しています。
現在、プロトタイピングを行っている複数のテンプレート開発が来春までには完了し、Nestingが本格稼働する予定です。
デジタル家づくりプラットフォーム「Nesting(ネスティング)」公式Webサイト
https://nesting.me/
# VUILD YouTube公式チャンネル(2021/11/02)北海道弟子屈町の住宅メイキング映像(Photo: Hayato Kurobe)
YouTube チャンネル
https://youtu.be/bjbOKG_Wdy0