渋谷駅南西側で進められていたの大規模再開発プロジェクト(渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業)における主要な複合施設〈Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)〉が11月30日に竣工を迎えました。
渋谷を創業地とする東急グループにより、渋谷駅の周囲にはこれまで、渋谷ヒカリエ(2012年4月開業)、渋谷ストリーム(2018年9月開業)、渋谷フクラス(2019年11月開業)、渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟、2019年11月開業)の4つの大規模再開発が行われてきました。〈渋谷サクラステージ〉はこれらに続く5番目の新街区となります。
再活事業の概要は、2022年9月に38階建てのタワー棟(SHIBUYAタワー)が上棟を迎えた際に、『TECTURE MAG』のニュースにて報じたとおりです。デザインアーキテクトを、建築家の古谷誠章氏が率いるナスカ一級建築士事務所と日建設計が担当しています。
古谷誠章+NASCA+日建設計がデザインアーキテクトを務める大型プロジェクト「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」が上棟
竣工に先立ち行われた東急不動産主催のメディア内覧会を、『TECTURE MAG』では取材。計画の概要と、これから各付帯施設が順次開業を迎える〈渋谷サクラステージ〉の建築・デザインの見どころについてレポートします(特記なき内外観写真は全て、TEAM TECTURE MAGの撮影)。
#事業概要
#複合施設〈渋谷サクラステージ〉開発の経緯
#利便性が高い〈渋谷サクラステージ〉
#3つの街区を横断して歩行者の動線を確保
#B街区〜C街区「はぐくみSTAGE」
#C・B街区〜A街区「にぎわいSTAGE」
#フロウプラトウ(Flowplateaux)が「にぎわいSTAGE」の空間演出を担当
#空間演出「さくらコーラス」
#新たなまちのシンボル「しぶS」
#駅とまちとシームレスにつながった「イベントスペース」
#デジタルサイネージを展開する「ときめきSTAGE」
#渋谷のまちの新たな回遊基盤となる「アーバンコア」
#A街区 / オフィス・商業フロア
#次世代のクリエイターが集うグローバル・クリエイション拠点「404 NOT FOUND」
#A街区 / 食を起点とした起業支援施設「manoma(マノマ)」2024年2月開業
#B街区 / 東急不動産の分譲マンションブランド「BRANZ (ブランズ)」
#サービスアパートメント〈ハイアット ハウス 東京 渋谷〉
#グローバルな子育て支援施設も来春オープン
事業名称:渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業
施行者:渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合
所在地:東京都渋谷区桜丘町123番ほか(地番)
施行面積:約2.6ha
A〜C街区共通:
デザインアーキテクト:古谷誠章+NASCA +日建設計
施工:鹿島・戸田建設共同企業体(担当街区は以下の通り)
■A街区(SHIBUYAサイド)
建物規模:地上39階(SHIBUYAタワー)高さ約179m / 地上17階(セントラル)/ 地下4階
延床面積:約184,700m²
用途:事務所、店舗、駐車場など
基本設計:日建設計
実施設計:日建設計
変更実施設計:鹿島建設一級建築士事務所
■B街区(SAKURAサイド)
建物規模:地上30階+地下1階(SAKURAタワー)高さ約127m
延床面積:約69,100m²
用途:住宅、事務所、店舗、サービスアパートメント、駐車場など
基本設計:日建設計、ナスカ一級建築士事務所(先端棟)、日建ハウジングシステム(住宅部分)
実施設計:日建設計、ナスカ一級建築士事務所(先端棟 SAKURAテラス)、日建ハウジングシステム(住宅部分)
変更実施設計:戸田建設一級建築士事務所
■C街区(日本基督教団 中渋谷教会)
建物規模:地上4階、高さ約16m
延床面積:約820m²
用途:教会など
基本設計:日建設計、大岡山建築設計研究所
実施設計:日建設計、大岡山建築設計研究所
変更実施設計:戸田建設一級建築士事務所
Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)Website
https://www.shibuya-sakura-stage.com/
〈渋谷サクラステージ〉は、渋谷駅に隣接する桜丘エリアの約2.6ヘクタールの敷地を整備して誕生した複合施設です。
地名のとおり、渋谷駅とその周辺は谷地であり、〈渋谷サクラステージ〉が建設された桜丘の地形も高低差が大きく、JR線と国道246号によって東西・南北方向ともに周辺エリアとの分断がみられました。さらに東急不動産の説明によれば、細い街路や小規模敷地が多く、非耐火建築物が密集していたとのこと。
今回の再開発事業では、開発エリアにおける従前の諸問題の解決を目指し、最初の再開発準備組合設立から25年の歳月と、120人におよぶ権利者・桜丘町会および商店会・渋谷区をはじめとする行政らとの協議を重ねながら事業を推進。歩行者ネットワークを整備、周辺エリアを含めた回遊性が向上しています。
〈渋谷サクラステージ〉では、A街区・SHIBUYAサイドとB街区・SAKURAサイドの間に新たな道路(補助線街路第18号線)が12月1日に開通したほか、JR渋谷駅の線路の上を横断し、東側に既存する〈渋谷ストリーム〉との間を結ぶ「(仮称)北自由通路」が開通。同デッキ上にはJR改札も新設されます(改札は工事中、2024年秋頃の供用開始を予定)。
変形地に計画された〈渋谷サクラステージ〉は、A・B・Cの3つの街区に、そしてこれら3つの街区は「SHIBUYA」と「SAKURA」の2つのサイドに分けられます。
A街区が「SHIBUYAサイド」でSHIBUYAタワーとセントラルビルからなり、B街区が「SAKURAサイド」でSAKURAテラスとSAKURAタワーからなります。C街区は、まちに対して開かれた広場「はぐくみSTAGE」と、2020年5月に教会堂が移転した日本基督教団 中渋谷教会で構成されます。
A・B街区のタワーや低層部に、オフィス、商業店舗、広場、イベントスペース、住宅(レジデンス)、サービスアパートメント、国際医療施設、子育て支援施設などを配置。今後順次開業の予定です。
以降の画像は、メディア内覧会時に公開、通行と見学が許されたエリアです。
本稿では、写真を中心に現地レポートを構成。以下、A街区の2階北側歩行者専用通路から、ブリッジを渡り、B街区とC街区を通り抜け、南端の「にぎわいSTAGE」へ。さらに線路沿いの歩行者専用通路(3階)から、イベントスペースおよび今後開業予定の施設を含む付帯と「ときめきSTAGE」、最後に〈渋谷サクラステージ〉を特徴づける大空間「アーバンコア」へと辿っていきます。
C・B街区〜A街区「にぎわいSTAGE」
「にぎわいSTAGE」の床面には大きな弧を描く2本のライン照明が施され、その下の中心部には水が張られ、円形の水盤となります(内覧会開催以降)。
「にぎわいSTAGE」の白い格子状の什器の先端部には、合計960個の照明装置が組み込まれており、立体的な音響となるスピーカー、気象センサー、噴出するミストといった付帯設備と連動させて、人々がこの「にぎわいSTAGE」を繰り返し訪れても、その都度で動きのある景色を目にすることができる演出がなされます。
例えば、風や雨、人の滞留具合、さらには隣接するJR駅のホームに車両が入線してきた時の往来などを、センサーが感知して環境データとして取得、照明の光に変化を与える自動生成プログラムが組み込まれているとのこと。
日没後に展開されるこの空間演出を、ライゾマティクスのデザインコレクティブで、石橋素、齋藤精一氏らが率いるフロウプラトウが担当しています。
フロウプラトウ(Flowplateaux)による空間演出
満開の桜並木のように風を受け、光と音のハーモニーを奏でる演出「さくらCHORUS(コーラス)」
「しぶS」は、広場「にぎわいステージ」における重要な要素として位置付けられています。用途としては3階と4階をつなぐ屋外階段ですが、この街のシンボルとしたいという思いから「しぶS」と命名。渋谷と桜丘町のイニシャルである「S」が、桜の花びらのように舞い上がっていくというストーリーが建物のデザインに反映されています。
〈渋谷サクラステージ〉では、渋谷駅および国道246に近い〈SHIBUYAタワー〉の中に縦軸線の「アーバン・コア」を設けているのが特徴です。駅とまち、地下と地上を結びつける歩行者動線の要となります。地形の高低差や国道
246号、鉄道による地域の分断を解消、駅・周辺地区との回遊動線を構築し、多層の歩行者ネットワークを整備することで、駅周辺全体の回遊性の向上を図り、代官山や恵比寿といった後背地への接続も容易となりました。
2024年7月より利用開始となるShibuya Sakura Stage 4階の中心に位置する「404 NOT FOUND」は、一般社団法人渋谷あそびば制作委員会(2023年6月設立)により、世代や国・ジャンルを越境し、多種多様な次世代のクリエイターが集うグローバル・クリエイション拠点となります。
世界初となるインディーゲームクリエイターのコンテンツ制作・パブリシティ活動・国際交流・海外展開支援などを一気通貫で実現するエコシステムの構築を推進するほか、音楽・食・アート・エンターテイメントなど、多種多様なイベントを同時多発的に開催していく予定です。
SHIBUYAタワーの最上階38階には、新たなビジネスの創出の場となる起業支援施設が整備されます(2024年2月開業予定)。
ラウンジのほか、プライベートルーム、発表会などを開催できるバンケットルームを併設。単なる「場」の提供ではなく、人とのつながりを深めることに寄与する「食」による”おもてなし”を提供することで、未来を担う起業家がさまざまな人と出会い、時間をかけて関係を築き、ビジネスを発展させる場となることを目指しているのが特徴です。
また7階には、東急不動産が都内を中心に展開する会員制シェアオフィス「Business Airport」が入ります(38階バンケットルームの利用可)。
所在地:SHIBUYA タワー38階・7階
面積:38階部分 約7000m² / 7階部分:約300m²
施設:38階部分 バンケットルーム、ラウンジ、プライベートルーム / 7階部分:会員制シェアオフィス
所在地:東京都渋谷区桜丘町3-2 SAKURAタワー16階-30階
戸数:155戸
専有面積:約12,8000m²
主な共用施設:ラウンジ、ゲストルームほか
首都圏初のハイアットハウスブランドとなる〈ハイアット ハウス 東京 渋谷〉が2024年2月26日に開業します。
所在地:東京都渋谷区桜丘町3-3 SAKURAタワー6階-16階
客室:126室
面積:約9000m²
付帯施設:ラウンジ&バー、屋内プール、レストラン、フィットネスほか
客室設備:キッチン、洗濯乾燥機、オーブンレンジ、冷蔵庫
緑地が整備された〈SAKURAタワー〉の5階には、就業前の児童を対象としたインターナショナルスクール「CTIS キンダーカーテン渋谷」が2024年4月に開園します。
〈渋谷サクラステージ〉で働くオフィスワーカーのほか、中長期滞在のビジネス層や周辺居住者に向けて、就学前の児童を抱える世代の子育てを支援する施設です。
東京・南麻布でインターナショナルスクールを運営するCTIS(シーティーアイエス)が運営を担い、幼稚部(認可外保育施設)のサービスを提供するとのこと。
所在地:東京都渋谷区桜丘町3 SAKURAタワー5階
校舎面積:約670m²
生徒数:最大約124人を想定
対象年齢:2〜5歳の就学前の児童
対応言語:日本語、英語、中国語など
「まちびらき」イベントは、付帯施設の開業が概ね出揃う2024年の夏に開催される予定です。
東急不動産プレスリリース(2023年11月15日)
https://www.tokyu-land.co.jp/news/2023/001115.html