建築テック系スタートアップのVUILD(代表取締役 秋吉浩気)が提供するデジタル家づくりサービス「NESTING(ネスティング)」が、プラモデル感覚で住宅を施工できるキットの供給を開始したと発表しました。先ごろ、1棟目となる住宅が香川県・直島に竣工しています。
「NESTING」のサービスを利用して完成した直島に竣工した住宅 外観 Photo: Tomoyuki Kusunose
「NESTING(ネスティング)」は、デジタル家づくりプラットフォームとして2021年5月にβ版をローンチ。以降も、サービスインに向けて北海道での実証実験住宅の施工、2022年4月には「Nesting」による住宅の受注を開始しています。
このほど供用を開始した商品は、VUILDが開発した「NESTING」ならではのデジタルファブリケーション技術を用いているのが特徴で、施主が主体となって設計から施工までをおこなうことを想定した住宅キットです。
デジタル加工機・ShopBotにより、施工のための識別番号とビス穴のガイドがあらかじめ付けられた木材パーツ
キットは、木材のデジタル加工機・ShopBotを用いて加工されます。複雑な接合部やビス打ちの下穴、組み立て順序を示す番号付けといった一連の加工を、簡単かつ高精度で行うことが可能とのこと。各部材は、あらかじめ大人1名が持つ運べるサイズに分解して設計され、施工の際にクレーンなどの重機を現場に搬入する必要がありません(注.本サービスでは、基礎工事において一般的なコンクリート打設は行わない)。現場施工では、番号とビス穴を確認しながら部材を組み立てるだけで住宅を施工することができます。
なお、キットとして定められているのは建物の基本形状のみで、住宅としての広さや間取り、内外装の素材などは、VUILDが開発したNESTINGアプリを用いることで、施主自身がカスタマイズすることも可能です(アプリの解説動画はこちら)。なお、住宅キットには、基礎工事部材や断熱材、仕上げ材なども組み込まれています。
VUILDでは、「NESTING」による住宅キットを用いて、施主自らが家族らと行う家づくりを「co-build(コビルド)」と呼んでいます(同社による造語)。ひとりでコツコツと時間を掛けて家を建てるイメージがあるセルフビルド(self-build)」とは異なり、家族や仲間と協働して楽しみながら建てるイメージとのこと。「co-build」による家づくりでは、安全かつ正しく建設できすよう、各工程でVUILDがサポートを行います。
設計から竣工までの主な工程
1.設計
専用アプリや設計担当とのワークショップを行いながら、理想の住環境を作り込む2.部品加工
設計完了後、VUILDが材料の製材を手配・調達し、ShopBotを用いて木材加工、壁や天井となるパーツを製造3.基礎工事
今回のキットでは、住宅の一般的な基礎であるコンクリートを打設しない代わりに、DIYが可能な杭工法を採用。電動工具を用いて自分たちで杭を打ち込む4.躯体工事
地面に打ち込んだ杭の上に、上記2で1個あたり10kg以下で設計・加工した材(パーツ)で構造体を下から順に屋根まで組み上げる5.内装工事
構造体との間に断熱材を入れ、間仕切り壁や建具を取り付け、表面を塗装6.電気・給排水など設備工事(別途)
VUILD経由または施主手配による専門業者が電気・設備工事を担当壁を構成する加工済みのパーツ(提供:VUILD)
電動工具を用いて敷地に杭を打ち込む様子(提供:VUILD)
躯体工事の様子(提供:VUILD)
躯体工事の様子(提供:VUILD)
躯体工事の様子(提供:VUILD)
内装工事の様子(提供:VUILD)
VUILDによれば、香川県・直島で施工した同商品の1棟目となる住宅(面積:約75m²)の施工に女性を含む複数人が参加し、着工から2日で構造駆体部分の工事が完了し、約2カ月で竣工したとのこと。
竣工後の外観 Photo: Tomoyuki Kusunose
竣工後の内観 Photo: Tomoyuki Kusunose
VUILDでは、これまで住宅を1棟建てる際に必要とされた専門知識や技能、経験などがなくとも、誰でも施工に参加する家づくりの在り方が、建設業界における慢性的な人材不足問題や、昨今の建設費高騰などの諸課題の解決につながると考えており、今の時代にふさわしい新しい家づくりの在り方を「NESTING」によって提唱しています。
出所)実績値は総務省「国勢調査」、予測値は野村総合研究所発表資料をもとに、VUILDにて作成したグラフ(提供:VUILD)
本サービスリリースの背景:建設業界は昨今、深刻な人材不足と建設費高騰という課題に直面している。大工の就労者は年々高齢化の一途を辿っているのに対して、新たな大工就業者数は過去20年で半減。2040年には15万人以下に落ち込むと予想されている。慢性的な人材不足による人件費高騰と、近年の資材高騰により、住宅を含めた建築の建設費は高騰している。
VUILD プレスリリース(2024年4月8日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000031751.html