株式会社KADOKAWAと埼玉県所沢市による共同プロジェクト「COOL JAPAN FOREST構想」の拠点施設である「ところざわサクラタウン」に、隈研吾氏がデザインを監修した〈角川武蔵野ミュージアム〉が、2020年8月1日(土)にプレオープンしました。
【TECTURE MAG】では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で、「ところざわサクラタウン」を含めた施設の開業延期が発表された5月より、同ミュージアムの情報を逐次伝えてきました。
プレオープンの2日前に開催されたメディア向け内覧会を【TECTURE MAG】は取材。隈研吾氏が「私の代表作になるだろう」とコメントしている、国内外から注目されている隈氏の最新作について、内外観の写真を中心にお伝えします(撮影クレジットが明記されているものを除き、撮影は全てTEAM TECTURE MAG)。
〈角川武蔵野ミュージアム〉は、図書館、美術館、博物館が融合した文化複合施設です。館内の複数のライブラリーに配架が完了し、グランドオープンは、「ところざわサクラタウン」ともども今秋11月6日(金)に予定されています。
館長の松岡正剛氏をはじめとするボードメンバーの監修のもと、メインカルチャーからポップカルチャーまで、多角的に文化を発信していく予定です。
#【公式】ところざわサクラタウン建設中12 2020年2月撮影(2020/03/05)
〈角川武蔵野ミュージアム〉施設概要(同施設公式ウェブサイトより、敬称略)
所在地:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内
建物規模:地上5階
延床面積:約12,000m²(約3,600坪)
※ところざわサクラタウン(図書館・美術館・博物館・神社・ホール・ホテル・工場・店舗・レストラン・オフィス他)全体の総延床面積:84,000m²
建築設計・施工:鹿島建設
内装設計・施工:丹青社・heso・timbercourt・y+A・dessens
コンストラクション・マネジメント:久米設計
デザイン監修:隈 研吾(隈研吾建築都市設計事務所)
ロゴマークデザイン・サイン計画:柿木原政広(アートディレクター / 10inc)
館長:松岡正剛(編集工学研究所所長)
アドバイザリー・ボードメンバー:荒俣 宏(博物学・妖怪研究家)、神野真吾(千葉大学准教授)
運営:公益財団法人角川文化振興財団
公式ウェブサイト https://kadcul.com
ところざわサクラタウンは、かつては所沢市東部清掃工場だったところ。ミュージアムが建っている場所には、所沢下水処理場がありました。
「正面がなく、コーナーもなく、自然が生のまま投げ出された感じにしたかった。すべての場所から見て違う。無限の顔を持っている」建築。(カッコ内のコメントは隈研吾氏によるもの。参照元:内覧会配布物 角川文化振興財団『武蔵樹林』vol.4 特集 9ページより)
建物全体を覆っているのは、中国・山東省産の花崗岩。総量は約2万枚、広さで換算すると約6,000平米というボリュームです(KADOKAWA 2020年2月20日プレスリリースより)。
隈研吾氏:「武蔵野の大地がそのまま隆起したような建築にしたかった。いわば地殻建築。20世紀にも石の建築はあったが、20世紀の幼稚な幾何学に薄い石を貼り付けただけで迫力がなかった。その20世紀的束縛から、石という自然を解放してやりたかった。」(内覧会配布物 角川文化振興財団『武蔵樹林』vol.4 特集 9ページより)
1枚あたり50から70キログラムある石は、2本のボルトで固定。館内で開催中の竣工記念展に実物が展示されているので、会場で石1枚の大きさ・厚みなどを知ることができます。
〈角川武蔵野ミュージアム〉の東南側には〈武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみましろ〉が鎮座(上の写真、左奥)。こちらも隈研吾氏の設計によるもの。
〈武蔵野坐令和神社〉の天井画は、RPGのシリーズ・ファイナルファンタジーでイラストを担当している天野喜孝氏の手によるもの。拝殿の奥、左右に控える”神さまの使い”は、ニホンオオカミをモチーフとした彫刻作品。
「ミュージアムと神社は2つで1つ」という位置付け。ミュージアムの2階に3カ所ある地上出口の1つは、上の写真のように、神社の側面と相対しています。鳥居を模した照明施設も設けられ、神社の側面に軸線を合わせていることがわかります。
「水盤は建築を空へと繋げ、建築を地底へと繋げてくれる。水盤によって、この建築は強い垂直軸を獲得した。」(内覧会配布物 角川文化振興財団『武蔵樹林』vol.4 特集 9ページより)
ミュージアムの北側を流れる東川側沿い、道路側からのアプローチ。
コロナ対策の一環として、ソーシャルディスタンスを注意喚起するピクトグラムも新たにデザインされ、EV前やチケットカウンター前など館内各所に掲示されています。
1階のグランドギャラリーでは、竣工記念展「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築」が8月1日から始まっています。
グランドギャラリーのエントランス。正面のパネルには、隈氏が書いたサインと共に「私の代表作になるだろう」との文字が。
会場・壁面を使った展示解説には、隈氏が描いた〈角川武蔵野ミュージアム〉のイメージスケッチも。この画のとおりに”石の塊”が立ち上がっていることがわかります。
なお、隈氏のスケッチは、展覧会オリジナルグッズ「アーキテクトバッグ」のイラストにも使用されています(下の画)。
隈研吾氏テキスト:私たちは地球をおおう地殻という巨大な岩の塊の上に住んでいます。この所沢・武蔵野でも足元の地面を割って出てくるという大地のエネルギーを1,200トンの花崗岩で表現したのです。(〈角川武蔵野ミュージアム〉竣工記念展「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 ― 石と木の超建築」パンフレットより)
ミュージアムの外壁に貼られた石は、1枚のサイズを人ひとりが持って運べる50×70センチ程度とし、これを集めた3角形の計61面で形成されていることが、展示の解説や、会場で販売されている展覧会パンフレットによって知ることができます。
“石の塊”のような意匠は、インフォメーションカウンターなど、館内のあちらこちらに。
松岡館長独自のセレクトで構成される4階「エディットタウン」。フロアを進んだ左側に「EDIT & ARTギャラリー」が、右側が「荒俣ワンダー秘宝館」がというレイアウト。
高さ約8メートル、およそ5万冊を所蔵できる「本棚劇場」。書籍が棚に並ぶ前の貴重なシーン。
1階「マンガ・ラノベ図書館」は、KADOKAWAが刊行・発信するライトノベルとマンガの世界観を読者と共有し、発展させるための空間です。内覧会時にはスタッフによる配架が行われていました。
なお、今回の内覧会では、ところざわサクラタウンおよびミュージアムに隣接する東所沢公園内にオープンした「武蔵野樹林パーク」に恒久野外展示される、チームラボの作品〈どんぐりの森の呼応する生命〉の内覧会も開催されました。常設となります。
角川武蔵野ミュージアム(Kadokawa Culture Museum)
所在地:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内
開館時間:10:00-18:00(最終入場17:30)/ 金・土曜のみ10:00-21:00(最終入場20:30)
休館日:火曜(祝日の場合は開館)
※COVID-19対策のため、完全予約制
※入館人数の制限、マスク着用などの入場規定あり
※予告なしに変更になる場合あり、最新の開館状況は会場公式ウェブサイトを参照のこと
公式ウェブサイト https://kadcul.com