CULTURE

ストリート・ドキュメンタリー映画『街は誰のもの?』12/11より公開

ブラジルのストリートと都市の鼓動を伝える作品、東京・渋谷でロードショー

CULTURE2021.12.11

■ デザイナーの視点で街と人々の関わりを伝える

ブラジルのグラフィティを中心としたカルチャーと活動を活き活きと伝える「ストリート・ドキュメンタリー」映画、『街は誰のもの?』が12月11日より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開される。

映像を撮り、制作したのは、東京でグラフィックデザイナーとして活動する阿部航太氏。
施設VIやサイン計画も手掛ける廣村デザイン事務所の出身で、映画監督作品は初となる。

ブラジルに半年間滞在した2018年から2019年に、4都市を巡って撮影。自ら編集して映画公開に至った。

 

劇中では、ブラジルの街の様子とともに、グラフィティの描き手やスケーターたちのリアルな街への眼差しと意見が綴られる。

映画に登場する個性豊かな人々の率直な言葉の数々が、心に残るはず。
翻って、今の日本の街と暮らしで必要とすることに気付かされるに違いない。

「建築や街に興味がある人には、特に観ていただきたい」と阿部氏は語る。

■ 映画『街は誰のもの?』予告編

『街は誰のもの?』

監督・撮影・編集:阿部航太
出演:エニーボ / チアゴ・アルヴィン / オドルス / 中川敦夫 / ピア
整音:鈴木万里
翻訳協力:ペドロ・モレイラ / 谷口康史 / 都留ドゥヴォー恵美里 / ジョアン・ペスタナ / 加々美エレーナ
配給・制作・宣伝:Trash Talk Club
日本 | 2021年 | 98分
(C) KOTA ABE

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上映会場:シアター・イメージフォーラム
東京都渋谷区渋谷2-10-2
www.imageforum.co.jp [全席指定・各上映日3日前よりオンライン予約有]

[アフタートークゲスト]
12/11(土)10:45の回:田中元子(グランドレベル代表取締役)
12/11(土)21:00の回:中川敦夫(グラフィテイロ from ブラジル)
12/12(日)10:45の回:荏開津広(DJ / ワーグナープロジェクト音楽監督)
12/18(土)10:45の回:宮崎大祐(映画監督)
12/19(日)10:45の回:三宅 唱(映画監督)
12/25(土)10:45の回:宮越里子(グラフィックデザイナー)
12/26(日)21:00の回:高山 明(演出家・アーティスト)
* 全回、阿部航太監督は登壇

[以降の上映スケジュール]
【愛知】名古屋シネマテーク:2022年1月2日(日)〜1/7(金)
【京都】京都みなみ会館:公開期間調整中
【大阪】シアターセブン:公開期間調整中

 

阿部航太 Abe Kota

1986年生まれ、埼玉県出身。2009年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校卒業後、廣村デザイン事務所入社。2018年同社退社後、「デザイン・文化人類学」を指針にフリーランスとして活動をはじめる。2018年10月から2019年3月までブラジル・サンパウロに滞在し、現地のストリートカルチャーに関する複数のプロジェクトを実施。帰国後、阿部航太事務所を開設し、同年にストリートイノベーションチームTrash Talk Clubに参画。アーティストとデザイナーによる本のインディペンデントレーベルKite所属。一般上映としては本作が初の監督作品となる。

http://abekota.com
Twitter https://twitter.com/abe_kota_/

■監督からのメッセージ

私たちはこの問いにどう答えるのか?

あなたは「街は誰のもの?」という問いにどう答えますか? 「みんなのもの」「公共のもの」「地域のもの」などの答えが予想できますが、その「みんな」「公共」「地域」の中に「あなた」は含まれているのでしょうか。昨今の大規模な再開発を眺めていると、知らないうちに決断が下され、資本が投下され、自分の手の届かないところで街がどんどんつくり変えられていってしまう様に虚しさを感じることが多くあります。しかし、そう感じつつも、私はどこかで「そういうものだからしょうがない」と半ば諦めていた節がありました……ブラジルに行くまでは。

私がブラジルで最初に出会ったのはグラフィテイロたちでした。当初私はグラフィティに対して“ヴァンダリズム(破壊行為)”や“不良カルチャー”というありがちなイメージしか持ち合わせていませんでしたが、実際の彼ら、彼女らの振る舞いや言葉に触れると、どうもそこにズレがあるような気がしてきました。そのズレと、大量なグラフィティが街中に存在するようになった経緯に興味を覚えたことから、グラフィテイロたちへの取材を始めました。私は自身にグラフィティに対する知識が皆無であること、それに併せて日本という外部からの訪問者であることを理由に、本当に初歩的な質問を彼らに投げかけていきました。なぜ描くのか? なぜ街にはこんなにもグラフィティがあるのか? 自分の行為をどう捉えているのか? それらの質問に対する答えは、グラフィテイロそれぞれの違いが現れていますが、共通点として挙げられるのは、誰もが“風景をつくる”という意識を持っていたことです。それは“破壊”とは対極の思想でした。彼らに話を聞くと、グラフィティが疎まれねばならない理由がわからなくなります。誰がそれを破壊と見なすのか? その風景は誰かのものなのか? その思考が行き着いた先が本作のタイトルである「街は誰のもの?」という問いでした。グラフィテイロたちへの取材が一通り終った後、自分の街の見方がガラッと変わったことに気づきます。滞在期間がちょうど春から夏だったこともあり、サン・パウロの街にはたくさんの人が出歩いていましたが、その人たちの一挙手一投足に目がいくようになります。ある人は道に椅子を出して座り、ある人は物を売り、ある人はスピーカーから音楽を流しながらまどろみ、ある人はスケートボードで横を滑り抜けていきます。サン・パウロの街では見慣れた光景ですが、私はこれらの行為を東京の街でやったことは一度もありませんし、むしろ迷惑行為と捉えがちです。しかし、サン・パウロの街ではそれらの行為は自然と受け入れられ、街の風景の一部になっている。彼ら彼女らが、自らの身体をもって風景をつくりあげている。そう見えるようになりました。

グラフィティというイリーガルな行為と、路上の人たちの日常的な振る舞い。その間では、違法、合法ないまぜの行為がグラデーショナルに連なり、路上の風景は豊かで多様な変化に満ちています。その豊かさは、私が「街」に対して感じていた虚しさと諦めをグラグラと揺さぶるのです。もちろん、日本をブラジルにしよう! と主張するつもりはありません。環境的にも習慣的にも無理があります。ただ、2018年から19年にかけて私がブラジルで見てきた風景には、私たちの諦めを砕き、私たちが街と改めて繋がるためのヒントが埋め込まれているのは確かです。特にCOVID-19の感染拡大の最中の現在は、自分と街との関係性を改めて問い直すチャンスであるとも言えるでしょう。本作を観た後にあなたはこの問いにどう答えるのか? ぜひご自身に問いかけてみてください。

 

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