CULTURE

安藤忠雄デザイン監修で感染症研究棟を阪大が建設

日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクトの一環、吹田キャンパスに2025年2月竣工予定

CULTURE2021.12.17

国立大学法人大阪大学と公益財団法人日本財団は、2021年12月16日に大阪大学吹田キャンパス内・谷口記念講堂で共同記者会見を行い、同キャンパスの敷地内に、感染症対策の国際的な研究棟を建設する計画を発表。建物のデザイン監修を建築家の安藤忠雄氏が手がけ、そのコンセプトデザインなどを明らかにしました(上の画像:安藤忠雄氏による大阪大学感染症研究棟コンセプトデザイン イメージ模型 / 提供:大阪大学)。

12月16日に大阪で行われた記者発表には、阪大の西尾総長のほか、日本財団の笹川陽平会長、建築家の安藤忠雄の3氏が出席。計画概要と所見などを述べると共に、報道陣の質疑にも応じました(『TECTURE MAGは、申請したメディアに対して配信されたライブ中継での取材出席)。

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト

新研究棟の模型を手にした西尾総長、安藤氏、笹川陽平会長(提供:日本財団)

建設予定地は、万博外周道路からも見える位置にあり、地元・大阪出身の安藤氏が手がける研究棟は、阪大の新たなランドマークとなるだろうと、大阪大学(阪大)の西尾章治郎総長は大きな期待を寄せています。

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト

安藤忠雄氏による大阪大学感染症研究棟コンセプトデザイン イメージ模型(提供:大阪大学)

建物のテーマは「宇宙船地球号」。平面が楕円形をしている形状と、今回のプロジェクト参画について、安藤氏は次のように説明しています。

安藤忠雄氏コメント
「これは日本にとっても世界にとっても、大変重要な取り組みになると思いました。感染症は人類に対する大きな脅威であり、世界中一丸となって取り組むべき問題です。
恐らくこれからもかたちを変えて、人類に挑戦してくると思われます。その対抗手段として、感染症研究は今後ますます重要性を帯びてきます。」

記者会見で発言する安藤忠雄氏

記者会見で発言する安藤忠雄氏(提供:日本財団)

「研究棟の形状には、楕円形を採用しました。感染症の問題は、世界を巻き込む人類としての問題であると同時に、地域格差や差別など、1人ひとりの心の問題でもあります。それらを多角的に解決する〈宇宙船地球号〉としての役割を意識して、デザインに反映しました。世界中の優秀な研究者がここに集まり、力を合わせて問題に取り組んでいただきたい、そんな願いを込めて、楕円形の宇宙船地球号をイメージしています。」

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト

安藤忠雄氏による大阪大学感染症研究棟コンセプトデザイン イメージ模型(提供:大阪大学)

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト

安藤忠雄氏による大阪大学感染症研究棟コンセプトデザイン イメージ模型(提供:大阪大学)

楕円形という建物の平面形状について、安藤氏は「楕円は正円と異なり、2つの中心軸をもつ。この建物では、世界と日本、自然と人間というふうに、ものごとの中心は1つだけではないことを表現した」と説明を添えています。

現時点の内部のレイアウトは、オープンイノベーション施設として、研究に集中できるエリアと、世界に向けて情報を発信する明るく開放的なエリアとに2分する計画です。さらに、最新の医療研究施設であることから、内部の設備機器の入れ替えを前提で安藤氏はプランを考えており、「メンテナンスをしていけば、100年でも使い続けることができる」とのこと(安藤氏談)。

 

今回の計画は、今年9月14日に日本財団発表した「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」の一環です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で明らかになった社会課題に対応し、新興感染症に即応することを主な目的として立ち上げられ、感染症総合研究拠点の設置に向けた事業計画が同日に発表されていました。

国内外に向けた研究機関として、産業界とのオープンイノベーションも推進しながら、コロナに続く新たな感染症が仮に発生した場合の脅威に備え、人々の命と暮らしを守り、社会・経済活動の維持に貢献することを目指すものです。

記者会見で発言する大阪大学西尾総長

記者会見で発言する大阪大学西尾総長(提供:日本財団)

会見の席上、西尾総長は、大阪大学における感染症研究は、緒方洪庵が興した適塾まで遡るという歴史性に触れ、阪大としてこれまでに数多くの業績を挙げている基礎医学・臨床応用・社会医学、微生物病、免疫学などの分野をまとめた全学体制で、感染症の脅威に立ち向かう感染症総合教育研究拠点を今年4月に整備していると、これまでの取り組みを説明。さらに、コロナ禍を踏まえた感染症対策には、人文科学や行動分析・心理学といった、医学以外の専門家の知見が必要になるとの見解を示しました。11学部、16研究科、6附置研究所などを擁する研究型総合大学の利点を生かし、さまざまな領域を横断したグローバルな研究施設となる見込みです。

また、この研究施設は、平時・有事を問わず、異分野の研究者がアンダーワンルーフで研究を進める「集学の場」としても機能する計画です。世界中から多彩な人材が集まり、開かれた、プラットフォームの基盤となることも目指しています。

デザイン監修者である安藤氏は、スイスのヘルスケアカンパニー、Novartis社によるプロジェクト〈ノヴァルティス・キャンパス〉にて、施設の1つを手がけた際の経験を踏まえ、「世界中の研究者が、この地に5年くらい滞在して研究に打ち込みたいと思ってくれるような建築にしたい」と意気込みを語りました。さらに、「かつての適塾のように、ここが世界の交流の場になってほしい。人は感染症を乗り越えられるというメッセージを建築で表現した」とのこと。

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト

記者会見で発言する安藤忠雄氏

日本財団は、感染症であるハンセン病の制圧に向け、半世紀近く取り組んできた歴史と実績を有します。大阪大学に対しては、10年間で230億円を助成し、本プロジェクトを推進します。

新研究棟の総工費は約80億円。2023年9月に着工予定で、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)が開催される同じ年の2月オープンを目指しています。

日本財団プレスリリース
「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」事業計画(2021年9月14日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000235.000025872.html

日本財団・大阪大学 感染症対策プロジェクト
安藤忠雄氏による感染症研究棟が大阪大学に
(2021年12月16日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000258.000025872.html

「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210914-62147.html

日本財団 公式ウェブサイト
https://www.nippon-foundation.or.jp/

大阪大学 公式ウェブサイト
https://www.osaka-u.ac.jp/ja

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