CULTURE

安藤忠雄設計〈こども本の森 中之島〉

大阪・中之島に7月5日オープン

CULTURE2020.07.04

安藤忠雄建築研究所が設計した〈こども本の森 中之島〉が、大阪・中之島に7月5日(日)にオープンします。名誉館長に京都大学iPS細胞研究所所長で教授の山中伸弥氏が就任することでも話題の文化施設です。

〈こども本の森 中之島〉
開館日:2020年7月5日(日)
構造:鉄筋コンクリート造3階建
延床面積:約800m²
設計:安藤忠雄建築研究所

安藤忠雄氏からのメッセージ:

大阪を南北に貫く御堂筋と交わり、大阪の歴史・文化の中心として生き続けてきた中之島。
〈こども本の森 中之島〉は、その中之島に新たに誕生した、子どもが本と出会い、本を楽しみ、本に学ぶ施設です。
設計にあたっては、そのすぐれた場所の個性を十二分に活かすこと、
そして、子どもが主役の施設であることを第一に考えました。

建物外観は、堂島川に沿って弓なりに伸びる形で、東端は、エントランス・ポーチと連続する水際のテラスになっています。ポーチを覆うゲートが、南北の風景をつなぎます。建物内部は、全面本棚の壁で囲われた三層吹き抜けの空間で、その中を階段、ブリッジ通路が立体迷路のように巡ります。その「迷路」を進んでいくと、本の壁のすき間から堂島川の風景が目に飛び込んできたり、吹き抜けを見下ろす飛び込み台のような謎のスペースが現れたり、井戸の底のような空間に行き当たったりします。その全てが、子どものための閲覧室です。気になる本が見つかったら、階段でもどこでも好きな場所で読み始めて構いません。天気が良ければ、外に出て、水際テラスで本を開くのもいいでしょう。建物を中心とする中之島広場一帯が、子どもが自由に読書を楽しめる「本の森」なのです。

子どもたちをエントランス・ポーチで出迎えるのは、「永遠の青春」と名付けられた謎の青リンゴのオブジェです。
「なぜ青リンゴがここにあるのか」
「永遠の青春とはなんなのか」
謎の答えは、訪れた皆さんで自由に考えてください。

館内に入ると、3フロア分の壁がすべて本棚になっています。まさに“本の森”です。
子どもたちが腰掛けるのにちょうどいい具合の大階段、打ち放しコンクリートに囲まれた吹き抜けの円筒状の静謐なる空間、窓際に置かれたソファなど、読み聞かせ会や読書会、大人数から一人で静かな時間を過ごすといった、利用する人それぞれに応じたさまざまなスペースが用意されています。

Photo: Shunsuke Ito

Photo: Shunsuke Ito

Photo: Shunsuke Ito

Photo: Shunsuke Ito

1Fには、天井の丸い穴から光が差し込むだけの円筒状のスペースが用意されています。Rhizomatiks Design(ライゾマティクス デザイン)の映像作品が流れる空間です。本の物語に出てくる言葉やシーンを、動く紙芝居のように映し出します。

Rhizomatiks Designによる映像作品「本のかけら」Photo: Shunsuke Ito

Rhizomatiks Designによる映像作品「本のかけら」 Photo: Shunsuke Ito

Photo: Shunsuke Ito

Photo: Shunsuke Ito

〈こども本の森 中之島〉のクリエイティブ・ディレクションは、ブックディレクターの幅 允孝(BACH)が手がけています。ジャンルにも時間にもとらわれず、こどもの素直な眼差しと感受性に語りかける、こどもの心持ちに寄り添うような多種多様な本を選び、12のテーマに沿って配架しています。
また、館内には「あの人の本棚」という特別なスペースもあります。ここでは、〈こども本の森 中之島〉にゆかりのある方の本を定期的に紹介していきます。一人目は、〈こども本の森 中之島〉の名誉館長、山中伸弥氏です。


配架テーマ:
1.《自然とあそぼう》
屋外の広場から続いてくるこの本棚は、花や植物、木々、森、川、海、山、空の色、天体などあらゆる自然環境について深く知るためのジャンルです。また、その自然と人の関わりについて知るための本も揃います。
2.《体を動かす》
サッカーや野球やダンスなど運動は好きだけど、普段はあまり本を読まない子どもにこんなテーマは如何でしょう? スポーツのヒーロー/ヒロインの自叙伝はもちろん、ルールブック、技術書、そこから派生して、人の体について知る本などを選びます。
3.《動物が好きな人へ》
犬や猫など身近なペットから、ライオンやクジラ、鳥、魚、昆虫など世界各地の生き物たち。また、過去に生息していた恐竜や幻の生き物も含め、陸・海・空、過去、未来の生きとし生けるものに関する物語や図鑑などを集めます。
4.《まいにち》
毎日の生活について子どもたちに考えてもらうための本棚です。暮らしの中で気になること、学校のこと、友達とのつきあい、家族との関係など日々の気になることに対してヒントをくれるような本を集めます。
5.《食べる》
誰にとっても身近な「食べる」ことについてのテーマを設けます。実際に料理を作るためのレシピやマナーブック、食べものに関する絵本、食育本、さらには台所道具や市場の本などあらゆる角度からに日々の「食べる」について考える本を揃えます。
6.《大阪→日本→世界》
大阪を始発点とし世界を知ってもらうための本を集めます。旅の本を中心としながら、大阪の名物や名所、歴史についてわかる本、日本の文化、さらには世界の文化に興味を持ってもらえるような本を揃えました。
7.《きれいなもの》
絵画や彫刻などのアートの分野はもちろん、詩やファッション、 宝石、幾何学(数学)など多種多様なジャンルからこの世に存在する「きれい」を集めます。いろいろな角度から「きれい」の多様性を知ってもらうための本棚です。
8.《ものがたりと言葉》
このテーマでは、ものがたりと言葉について考える本を集めています。ずっと読み継がれている大きな物語や古典、ファンタジー長編、
詩歌や俳句など 言葉の重みや繊細さを感じてもらえるような本を選びます。 また、子どもにも読める辞典など道具としての言葉に対する意識を高める本も選びます。
9.《未来はどうなる?》
これからやってくる社会がどうなるのかを想像するための本を集めます。のりもの本を出発地点としながら、テクノロジーや産業の未来、宇宙開発技術、さらにはSFなど、世界の行く末を見通すためのテーマです。一方、過去を振り返るための歴史を学ぶ本や戦争などに関する人類史もこの棚に入ります。
10.《将来について考える》
一人一人の子どもたちが、どんな大人になっていきたいのか考えるための本を集めます。
子どもと大人の違い、仕事やお金について、夢の叶えかた、そして希望に満ちたこれからの時間について考えるための本棚です。
11.《生きること/死ぬこと》
子どもにとって、最も遠いものである「死」を意識することで、逆に生きていることの実感が湧いてくるのではないでしょうか。生、死を扱った絵本や寓話や物語、詩などは多々あります。それらを前向きな一冊として包み隠さず子どもたちに届けます。
12.《こどもの近くにいる人へ》
このテーマでは、子どもの近くにいる大人のための本を集めます。出産や子育て、教育に関する本など、親としての振る舞いや子どもとの距離感について考える本を選びます。多様になる家族の在り方もイメージしつつ、子どもの近くに生きる大人の悩みに寄り添った本を選びます。

原則として、これらの本は館の外(中之島公園内)に持ち出して読むことも可能です。公園内のベンチや水辺、芝生の上に寝転無などして、それぞれが見つけた場所で読書を楽しめるように、図書館が販売するオリジナルグッズには「ピクニックラグ」も用意されています。

オリジナルグッズ
企画・マーチャンダイジング:山田 遊(method / メソッド代表取締役)
アートディレクション・デザイン:尾原史和(BOOTLEG代表)

「ピクニックラグ」

工業用に用いられるクレープ紙でつくられた「ピクニックラグ」 Photo: Shunsuke Ito

オリジナルグッズ「トートバッグ」

オリジナルグッズ「トートバッグ」 Photo: Shunsuke Ito

「mt マスキングテープ」

「こども」「本」「森」のピクトグラムが連続する「mt マスキングテープ」 Photo: Shunsuke Ito

〈こども本の森 中之島〉は、2020年3月1日に開館する予定でしたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大予防の観点からオープンが延期されていました。
当初の開館予定日にあわせて、数多の著作がある安藤氏としては初めての絵本『いたずらのすきなけんちくか』が2月末に刊行されています。

『いたずらのすきなけんちくか』原作:安藤忠雄 / 絵:はたこうしろう(小学館 2020)

『いたずらのすきなけんちくか』原作:安藤忠雄 / 絵:はたこうしろう(小学館 2020)

絵本の舞台はもちろん『こどもの本の森 中之島』。新しくできた図書館に来た小学生の兄と妹は、安藤さんによく似た謎のおじさんに館内を案内されます。そして案内されるうちに湧いてくる疑問を、このおじさんに投げかけます。なぜ建て物をつくるのか、気持ちのいい家とはなにか、住みやすさはどこからくるのか、そして建築家ってどんな仕事なの? おじさんは、ひとつひとつていねいにこたえてくれました・・・・・・。(小学館 2020年2月27日プレスリリースより)

『いたずらのすきなけんちくか』は、建築について子供にわかりやすく伝えながら、安藤氏のエッセイとスケッチ、絵本に出てくる国内外の”安藤建築”のリストも収録しています。この絵本も、図書館の棚のどこかに収められているはずです。(en)

〈こども本の森 中之島〉
所在地:大阪府大阪市北区中之島1丁目1-28(中之島公園内)
開館時間:9:30-17:00
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始、蔵書整理期間など同館が休館と定める日
COVID-19対策として入館規定あり
当面の間は全日で事前予約システムによる入館制限を実施(最新の情報は公式ウェブサイトを参照)

公式ウェブサイト
https://kodomohonnomori.osaka/

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