『TECTURE MAG』にて昨秋速報した、飛騨高山大学(仮称)に関する続報です。
学長候補には宮田裕章氏が就任、本校キャンパスを藤本壮介氏が設計を担当して、2024年4月開校予定[*1]であることが、2021年11月5日に一般社団法人飛驒高山大学設立基金より発表されている、注目の大学です。
*1.その後、一般社団法人 飛騨高山大学設立基金公式ウェブサイトにて「全日制開学時期の予定延伸」を発表(2022年10月17日 / 詳細)、文科省への申請年度を2024年10月に延伸し、開学年度は2026年4月を目標としている。大学名称も「飛騨高山大学(仮称)」から「Co-Innovation University(仮称)」に変更(略称:CoIU・呼称:コーアイユー)を同ウェブサイトにて発表済み(2022年3月26日 / 詳細)
その後、2021年12月7日付で、慶応義塾大学大学院(政策・メディア研究科)特任准教授を務める、古里圭史氏(ふるさと けいし)を監事兼CFA(チーフファンドアーキテクト)として迎え、大学設立の準備を進めていました(飛驒高山大学設立基金プレスリリース)。
さらに本日1月20日に、宮田裕章、藤本壮介の両氏が出席して、岐阜県飛騨市内にて記者会見(飛驒高山大学設立基金、飛騨古川駅東開発株式会社による共同主催)を行い、以下の3点が発表されました。
1.飛騨古川駅東に地域活性化を目指す共創拠点を整備
2.共創拠点に対する飛騨高山大学(仮称)の連携内容
3.今後のスケジュール
共同記者発表によれば、飛騨古川駅に近い東側の敷地[*2]において、屋外広場を含む共創拠点となる施設が整備されるプロジェクトが発表され、飛騨高山大学(仮称)本校キャンパスの設計を担当する藤本壮介建築設計事務所がこの施設の設計も担当することが明らかになりました。
*2.株式会社東洋の現有工場がある。操業から40年余が経過し、建て替えを検討したのを機に、飛騨市の活性化や地域の未来づくりへ貢献したいという想いから、工場を解体し、本事業の計画地となった。同社代表取締役の田端一盛氏が、本プロジェクトの事業開発主体となる飛騨古川駅東開発株式会社の代表取締役を兼任する
本稿では、同日に発表された共創拠点の概要を中心にお伝えします(2022年1月20日発表時点のもの、今後変更となる可能性あり)。
2万平米を超える敷地には、地域住民の教育や暮らし、余暇を充実させることを目的に、大学の研究拠点や学生寮、全天候型の子どものための遊び場施設や商業スペースなどが建設される予定です。
整備予定の主な施設
・街中の回遊性を高める「街歩きコンシェルジュ機能」
・全天候型子どもの遊び場および屋外芝生広場
・飛騨高山大学(仮称)関連施設および交流拠点(学生寮、ラーニングコモンズ、ベンチャーラボ、学生用研究室など)
・商業施設、公衆トイレなど
建物敷地面積:約21,300㎡
建築面積:約 8,900㎡
事業開発主体:飛騨古川駅東開発
設計コンセプト
私たちはこのプロジェクトにおいて、飛騨のこれまでとこれからを象徴するような、1つの大きな風景を作ることができればと考えました。飛騨古川の駅に隣接する素晴らしい立地において、街に開かれた器(うつわ)のようなこの広場は、多様な活動を受け容れ響き合わせます。楕円形の建物は、四方八方すべての方角からアクセスすることができる解放性を備え、この場所が人々の行き交うハブとなることを期待しています。
器(うつわ)は大屋根でもあります。その下には飛騨の伝統的な都市景観からインスピレーションを得た魅力的な路地空間が行き交い、歩き回る楽しさを生み出します。
路地はそのまま大屋根広場へ連続し、視線は一気に空へと抜けていきます。
この大きな盆地のような都市広場には、多様な機能と活動が顔を出して共存し、関係し合い、それらが響き合う一つの象徴的な風景が生まれます。伝統と未来、多様性とつながり、個と多、自然と人工、開かれることと守られること。器(うつわ)は親密な一つの部屋のようでもあり、広大な丘のようでもあり、季節と共に変化しながら空を切り取るフレームでもあり、飛騨の周囲の山並みに連続していく地形でもあり、多様な活動が一堂に会する舞台でもあり、またいくつもの思いを受け止め響き合わせる楽器のようでもあります。この場所が、飛騨の新しい活動の拠点の一つとして、新設される飛騨高山大学(仮称)とも連動しながら、飛騨の魅力をより高めてくれることを期待しています。
本プロジェクトの該当地である飛騨古川駅東エリアと、2024年4月開校予定の飛騨高山大学(仮称)の本校キャンパスの建設予定地は、距離にして約1.7キロ、徒歩で21分程度の距離にあります。
飛騨市の観光中心部を包み込む配置であり、プロジェクトで新たに建設される上記の広場などそれぞれの施設が、両拠点をつなぐようにして、人々のアクティビティを促し、街全体の回遊性を向上させ、街全体の体験価値を高めることを目指しています。
施策の1つとして、デジタルデバイスの活用や、脱炭素ツーリズムの在り方なども検討中とのこと。
2.共創拠点に対する飛騨高山大学(仮称)の連携内容
(1)ウェルビーイングに関する概念整理や研究調査、およびコンセプトメイキング
(2)大学関係施設および交流拠点設置による地域コミュニティの創出
(3)地域連携による共創(Co-Innovation)ネットワークの構築
3.今後の計画スケジュール
令和4年(2022年)度 1月20日プレスリリース発表(本件)
2022年春以降 駐車場関係の移転整備
2022年夏以降 第1期工事の検討
令和5年(2023年)度 4月以降 株式会社東洋 工場解体および第2期工事開始
令和6年(2024年)度 3月竣工
今回発表されたプロジェクトは、従来の土地開発に留まらず「共創(Co-Innovation)」を軸とした、地域の未来づくりのプロジェクトの先進事例になることを期待して計画されました。
飛騨高山大学(仮称)の設立を起点とする「知のCo-Innovation」から始まる、「産業のCo-Innovation」の実現と、それらにデジタルレイヤーの”横串を通す”かたちで、連続的なアップデートを目指しているとのこと。
ビジョンの先には、地域の自然や文化、ソーシャルキャピタルの活用と、それに伴う地域経済、産業の活性化を基盤とする地域の新しい社会像があります。全国に先駆けて、飛騨の街から地域における「次なる豊かさ」を体感できる場所として、地域の人々の安心安全で便利な暮らしの実現と、未来への希望を抱けるような環境づくりを同時に整備していく計画です。
飛騨高山大学(仮称)公式Webサイト
※一般社団法人飛驒高山大学設立基金Webサイトより移行(2021年11月4日)
https://hidatakayama-university.jp/