長崎県・波佐見に、大きな茅葺き屋根が特徴的な花屋〈花 西海(はなさいかい)〉が4月28日にオープンしました。
建設主は、1972年創業、現在は庭師による「造園」、花師による「花屋」、デザイナーによる「設計・デザイン」の事業を展開する西海園芸(さいかいえんげい|長崎県東彼杵郡佐見町|代表取締役 山口勇介)。
〈花 西海〉は、創業50年を迎えた同社の新たな社屋であり、店舗を兼ねます。それまで営業していた花屋の店舗(旧称:フルル・ルゥトさいかい 波佐見店)を改築、店名も〈花 西海〉と改められています(西海園芸プレスリリースより)。
新生〈花 西海〉のシンボルは、なんといっても大きな茅葺き屋根です。アップサイクルな素材として、活用方法が近年になって見直されている、小麦藁(小麦を収穫した後に残る葉)が採用されました。
屋根の設計・施工は、伝統的な技法を生かし、現代に応用させた茅葺きに取り組む、くさかんむり(兵庫県神戸市|代表:相良育弥)が手掛けています。
かつては波佐見はもちろん、日本各地で見られた茅葺き屋根。〈花 西海〉の茅葺きは、従来の伝統的な屋根葺きの工法とは全く異なる、ヨーロッパで用いられている工法によるものです(くさかんむりプレスリリースより)。
さらに、造園と花屋の事業を展開してきた西海園芸として、これまで培ってきた強みをいかした空間設計となっています。
テーマとして「循環」を掲げ、大きく以下の3つで構成されます。
ときの「循環」
庭の樹木や草花は長い年月をかけて成長の過程を楽しめるよう剪定(せんてい)されており、植栽や石の配置ひとつをとっても、天候の移ろいによって、異なる趣きや、時間帯による陰影の変化が意識されています。
自然と建築の双方の美しさを際立たせる、日本古来の美意識が感じられる空間に。巡る時間の中で、さまざまな表情を見せ、訪れるたびに異なる印象を受ける庭となっています。
造園設計は、西海園芸の3つの事業の1つ、庭 西海の代表を務める、庭師の山口陽介氏が担当しました。素材の「循環」
店舗に用いや茅(かや)、岩、土、植物は、いずれも地域の素材を採用。茅葺きの原料には、現代の生活においては活用方法が少なく、廃棄されることも多い、小麦藁(小麦を収穫した後に残る葉)を選びました。劣化した小麦藁は、肥料にするなど、素材を余すことなく活用することができる素材で、アップサイクルなものづくりが見直されています。地元の素材でつくることで、地元の土に還すことができ、理に適った素材の活かし方であるとともに、朽ちていく美しさを体現していくことを目指しています。文化・技術の「循環」
茅葺きの屋根は、かつては日本全国に見られ、波佐見町にも根付いていた伝統技術であり、文化でした。現代では失われつつある茅葺きを、茅葺き職人の相良育弥氏(くさかんむり)監修のもと、アップデート。地域のコミュニティと協力して採集した、地元産の小麦藁を1町(=1ha / 3,000坪)分を使用し、店舗のシンボルとなる「茅葺き屋根」がつくられました。
プロジェクトチーム
建築設計:設計機構ワークス(代表取締役 坂口 舞)
建築施工:上山建設
造園設計・施工:山口陽介(西海園芸 取締役)
茅葺屋根設計・施工:相良育弥(くさかんむり代表)
土壁施工:都倉達弥(左官都倉代表)
家具製作:蔵谷亮介(nomade design代表)
グラフィックデザイン:古賀義孝(光画デザイン代表)
〈花 西海〉では今後、地域の人々に親しまれる花屋としてはもちろん、県の内外や海外からも訪れる人々にも楽しんでもらえることを意識して、やきもの・陶芸の町・波佐見ならではのオリジナル商品や、各種サービスを提供していく計画です。
所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1661(Google Map)
営業時間:10:00-18:00
定休日:火曜
オープン日:2022年4月28日(木)
西海園芸 公式ウェブサイト
https://saikaiengei.co.jp/