長野県・軽井沢町に、成瀬・猪熊建築設計事務所が設計・監理を担当した〈旧軽井沢倶楽部の別荘〉が今月竣工を迎えます。
軽井沢で別荘地を運営する旧軽井沢倶楽部と、成瀬・猪熊建築設計事務所が行う、建て売り別荘プロジェクトの第一弾になります。
以下のテキストは、成瀬・猪熊建築設計事務所による本プロジェクトの設計コンセプトです。
旧軽井沢倶楽部の別荘
私たちが設計を行うにあたって最も大切にしたのは、季節・天候・時間の変化によって全く異なる表情を見せる自然林に囲まれた、恵まれた環境をいかに感じるか、ということです。
一言で自然を感じる、といっても、それは視覚情報だけでなく、音や光などさまざまな要素があります。また、林全体を広く感じるか、細かな枝や葉の肌理を感じるかでも、受け取るものは異なります。また、建築の内外での過ごし方によっても、感じるものは異なります。そこで私たちは、この建築を、中心近くでは全てがつながりつつも、窓辺に近づくほど空間が分割されてゆくように構成し、その空間とそこでの過ごし方・外の環境の関係を定義づけるように、開口部を決定してゆきました。
ダイニングスペースと目の前の林を、吹き抜けに開けた複数の開口部でつなぎ、林に囲まれて過ごす。おちついた小ぶりのラウンジと2階レベルの林の広がりを横並びの2つの開口部とテラスによって水平につなぎ、ツリーハウスのような居心地を感じる。玄関と木々の樹冠を高い吹き抜けとハイサイドライトでつなぎ、林の中にすっぽりと入り込む、と言った具合に。緩やかにつながった環境単位の集合体とでも言えるこの建築は、生活と共にさまざまな外部環境が入り込み、それが積み重なってゆきます。暮らしがあるからこそ、より豊かに美しい自然を感じることができる、そんな建築です。(成瀬・猪熊建築設計事務所)
設計者プロフィール
成瀬友梨(なるせ ゆり)
2002年東京大学工学部建築学科卒業、2004年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 修士課程修了。2005-2006年成瀬友梨建築設計事務所主宰、2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程単位取得退学。2007年成瀬・猪熊建築設計事務所共同主宰、2010-2017年東京大学助教、2017年より成瀬・猪熊建築設計事務所 代表取締役。猪熊 純(いのくま じゅん)
2002年東京大学工学部建築学科卒業、2004年東京大学大学院工学系研究科 修士課程終了。千葉学建築計画事務所を経て、2007年より成瀬・猪熊建築設計事務所共同主宰。2008年より首都大学東京 助教。成瀬・猪熊建築設計事務所
主な作品に〈LT城西〉〈31VENTURES KOIL〉〈豊島八百万ラボ〉〈9h nine hours なんば駅〉、ソウル市の地下鉄駅を改修した〈Dance of light〉などがある。尾瀬国立公園 鳩待峠にて山荘・休憩所の新築プロジェクト(2025年開業予定)が進行中。
主な受賞に、大韓民国の公共デザイン大賞 国務総理賞(2019年)、第15回ベネチアビエンナーレ国際建築展(2016)審査員特別賞(2016年)、日本建築学会作品選集 新人賞(日本建築学会、2015年)、JID AWARD 2015 大賞、Best of Asia Pacific Design Awards 最優秀賞(IIDA、2014年)など受賞多数。主な著書に『シェア空間の設計手法』『シェアをデザインする』(学芸出版社)がある。成瀬・猪熊建築設計事務所 ウェブサイト
https://www.narukuma.com
施設名称:旧軽井沢倶楽部別荘地 区画14
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢
用途:一般住宅
事業者:エムエフケー
設計・監理:成瀬・猪熊建築設計事務所
構造設計・監理:木下洋介構造計画
施工:スタイルテック総合計画
撮影:西川公朗
工事種別:新築
構造:木造ガルバリウム葺
規模:2階建
敷地面積:1,546m²
建築面積:81.34m²
延床面積:122.39m²(1F:71.58m²、2F:50.81m²)
工期:2022年9月~2023年9月
竣工:2023年9月
旧軽井沢倶楽部別荘地ウェブサイト
https://www.kyukaru.com/