CULTURE

借りた物でつくりそのまま返せるパビリオン

プラスチック廃棄物をリサイクルしたカラフルなタイルを纏う〈People's Pavilion〉

CULTURE2023.12.11
〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Jeroen van der Wielen

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Jeroen van der Wielen

〈People’s Pavilion〉は、環境先進国とも言われるオランダで毎年開催されているダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)にて、2017年に建てられた9日間限定のパビリオンです。

サプライヤーや製造業者、地域住民からの借り物で構成されており、それらを帯で固定するという建設方法により、無傷で所有者へ返却することができます。また、外装材はプラスチック廃棄物から作成されており、廃棄物を色別に分類することで色とりどりのカラーリングを実現しています。

共にアムステルダムを拠点に活動する建築スタジオである Overtreders Wとbureau SLA が設計しました。

借りた資材をバンドで固定してつくる宿泊施設〈Stable Stack〉Overtreders W、オランダ

(以下、 Overtreders Wから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

デザイン・ウィークの期間中、ミーティング・スペースとして使用された100%借り物の建築

〈People’s Pavilion〉は、サーキュラーエコノミーを建築的に表現しているパビリオンである。250m²の建物をつくるため、Overtreders Wとbureau SLAは必要な材料をすべて借用するという、革新的なアプローチでこれを達成した。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

借り物を帯で結んで固定する、ネジも接着剤も工具も使わない建設方法

サプライヤーや製造業者からの材料だけでなく、アイントホーフェンの住民からも材料を借用した。〈People’s Pavilion〉は、持続可能な建築の新しい未来を示している。

コンクリートや木製の梁、ファサードの要素、ガラス屋根、再生プラスチックの外装材すべてが9日間借り出され、ダッチ・デザイン・ウィーク終了後に所有者に返却された。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

すべての資材を無傷のまま残し、建設現場にはネジも接着剤もドリルもノコギリも必要としない。

この実現のために私たちは、すべての材料を互いに帯で結び、固定するという、まったく新しい建設方法を考案した。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Filip Dujardin

プラスチック廃棄物からつくる色とりどりのリサイクルタイル

パビリオンの外壁は、アイントホーフェンから出るプラスチック廃棄物を種類と色ごとに注意深く分別し、私たちが製造したこけら板で構成されている。

このこけら板は、Overtreders Wとbureau SLAによる、100%すべての素材を廃棄物からリサイクルする「Pretty Plastic tile」の開発の重要な一歩となった。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Jeroen van der Wielen

プラスチック廃棄物を、プロジェクト単位ではなく大規模に救うためのリサイクル業界との協力

通常、プラスチックをリサイクルするとさまざまな色が混ざり合い、灰色の色合いになる。しかし、廃棄物をあらかじめ色別に分類することで、すべての板を異なる色とすることが可能となる。

私たちは、プラスチック再生業者のGovaplast社と協力し、「Pretty Plastic Shingle」と名付けた被覆材をつくり上げた。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

© Jeroen van der Wielen

現在、多くのデザイナーがプラスチック廃棄物を利用している。しかし、その規模は非常に小さい。

もし、毎年大量に廃棄されているプラスチックゴミを本当に減らしたいのであれば、デザイナーはプラスチックリサイクル業界と協力して、より大規模に美しい製品をつくらなければならないのである。

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

PROCESS

2017年の〈People’s Pavilion〉建設以降、世界中の建築家からリサイクルプラスチック板を自分のデザインに取り入れたい、という連絡を多く受けた。そこで私たちは、再生プラスチックの被覆材の開発と生産に焦点を当てた新会社Pretty Plasticを設立した。

Pretty Plasticは3種類のデザイン、12色のカラーバリエーションを取り揃えており、今ではさまざまな建築物やプロジェクトに使用されている。

Pretty Plasticの公式サイトはこちら

www.prettyplastic.nl

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

PROCESS

© Cutjongens

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

PROCESS

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

PROCESS

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

BREAK DOWN © Jeroen van der Wielen

〈People's Pavilion〉 Overtreders W、bureau SLA、ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)

BREAK DOWN © Jeroen van der Wielen

以下、 Overtreders Wのリリース(英文)です。

PEOPLE’S PAVILION

100% borrowed building as meeting space during Dutch Design Week 2017

The pavilion is an architectural statement of the new circular economy. Overtreders W and bureau SLA have accomplished this with a radical new approach: all of the materials needed to make the 250m² building are borrowed. Not only materials from traditional suppliers and producers, but also from Eindhoven residents themselves. The People’s Pavilion shows a new future for sustainable building architecture: a powerful design language with new collaborations and intelligent construction methods.

Concrete and wooden beams, facade elements, glass roof, recycled plastic cladding: everything is borrowed for 9 days and will be returned to the owners after the DDW. All materials will remain unharmed. There are no screws, glue, drills, or saws on the construction site. To make that happen, we invented a whole new construction method: all materials were strapped together.

The cladding of the pavilion consisted of shingles we produced from plastic waste from Eindhovenaren that was carefully sorted by type and colour. As such, these shingles were an important step in the development of our Pretty Plastic cladding material.

CREDITS
in cooperation with: bureau SLA
client: Dutch Design Foundation
year: 2017
location: Ketelhuisplein, Eindhoven
structural engineers: Arup
built by: Ham & Sybesma
photography: Jeroen van der Wielen & Filip Dujardin
film: Cutjongens
many thanks to: New Horizon, IJB groep, Stiho groep, Govaplast, Tetris, Elektroned, DEGO, Morssinkhof, Vitra & Keizersgrachtkerk

PRIJZEN
winner Dutch Design Award 2018
winner Frame Award Sustainability 2018
winner Arc ‘18 Innovatie Award 2018
nominated for New Material Award 2018

「PEOPLE’S PAVILION」 Overtreders W 公式サイト

https://www.overtreders-w.nl/en/peoplespavilion

bureau SLA 公式サイト

https://bureausla.nl

 

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