2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催まであと284日。
大阪・関西万博のシンボル的建築であり、建設が進められている〈大屋根リング〉のうち、3つに分割された大屋根リング建設の工区の1つ、PW北東工区を担当する共同企業体・大林組JVの代表社である大林組が、建設風景と施工方法について資料を公開しました。
柱や梁、床などの基本構造体(木架構)の建設工事における最後の床材取り付けが、6月26日に完了したのに伴い発表されたもので(2024年6月26日 大林組プレスリリース)、同日に大林組が公開した鳥瞰写真(本稿1枚目)では、〈大屋根リング〉のほぼ全景が姿をあらわしています。
なお、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会では、今年6月末から10月にかけて「大阪・関西万博工事見学ツアー」を複数回実施予定で、ツアーを共催する日本旅行のウェブサイトなどで募集内容が発表されています(2024年5月30日プレスリリース)。
大屋根リングは、109個の木架構ユニットを円形につなぎ、幅約30m、高さ約20m、内径約615m、周長は約2kmにもおよぶ、世界最大級の木造建築です(基本設計:藤本壮介+東畑建築事務所+梓設計)。
大屋根リングの柱と梁は、柱をくり抜いた開口部に梁を差し込む貫接合(ぬきせつごう)により組み立てられているのが特徴で、現行の耐震基準をクリアするための構造体の施工方法は各工区によって異なり、それぞれ独自の技術に建設が進められているとのこと。
大屋根リングの柱と梁は、柱をくり抜いた開口部に梁を差し込む「貫接合」によって組み立てられています。
大林組JVでは、1万本を超える柱・梁部材と、約7,800カ所ある貫接合を設計と施工の両面から効率化を計画しました。
設計段階では、通常柱と梁の接合に用いられる楔(くさび)の代替として、工場で梁に埋め込んだラグスクリューボルト[*1]と仕口(しぐち)部のめり込み防止用支圧プレートを用いることにより、剛性と耐力を確保しています。さらに、設計の合理化によって、現場での固定作業は、ボルトを締め付けて支圧プレートに圧着させる作業のみとし、作業効率を大幅に向上させています。
[*1] ラグスクリューボルト:大きな木材に使用される金属製のネジで、木質ラーメン構法などで用いられるほか、耐震性を確保するための金具の取り付けや、補強金具の留め付けに使用される施工段階では、順次柱・梁を組み立てていく通常の施工方式ではなく、あらかじめ柱に梁を差し込んだ「平面ユニット」や、構造体上部の部材である「立体ユニット」を地上で組み立て、楊重作業により取り付ける施工方式を採用。これにより、高所での作業を大幅に削減し、かつ安全性を向上させ、安定した作業員数での建方工事が進められました。
大林組JVでは、BIMモデルを活用したプロジェクト管理システム「プロミエ®」を採用。〈大屋根リング〉の組み立て工事の進捗と、工場における部材の製造・輸送状況を、現場と協力会社間で共有。両者がそれぞれの進捗状況を随時把握することで、部材の製造と現場への輸送時期の管理をリアルタイムで効率化。当初の計画よりも1.5カ月ほど前倒しの進行となりましたが、同システムの活用により、建方の進捗にあわせたタイムリーな材料製作と輸送管理を行っています。
PW北東工区では、国産材の活用を推進するため、柱材の約50%に四国産のヒノキを、梁材の全量に福島産のスギを採用しています。
これらの木材を原料として、協力会社である藤寿産業(福島県郡山市)が有する国内最大規模の集成材生産工場集成材が製造され、柱・梁部材に必要な加工が行われました。
また、〈大屋根リング〉の上部・床材には、四国産のヒノキとスギを加工したCLT(Cross Laminated Timber / 直交集成板)を採用。部材は大林グループのサイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)が有する国内最大規模のCLT生産工場で製造が行われたとのこと。
PW北東工区では今後、エレベーターやエスカレーターなどの昇降機設備、トイレそのほかの仕上げ工事、大屋根上部には植栽などが行われ、2024年12月に完成予定です(引き渡し前の検査期間を含まず)。
所在地:大阪府大阪市此花区夢洲中一丁目地先
工事内容:
構造:地上 W(木)造、直接基礎 RC(鉄筋コンクリート)造
建築面積:18,513.34m²(大屋根リング全体:61,035.55m²)
延床面積:20,214.90m²(大屋根リング全体:66,900.02m²)
階数:2階
高さ:12m(最高高さ24.766m)
用途:歩廊
契約者:大林組・大鉄工業・TSUCHIYA共同企業体・安井建築設計事務所
工期:2023年4月21日~2025年2月28日(PW北東工区の契約に含まれる、大屋根リングなど約20棟の工期(閉会後の解体工事は含まず)
大林組プレスリリース(2024年6月26日)
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20240626_1.html