2026年日本建築学会賞 作品選奨の10建築を特集 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
2026年日本建築学会賞 作品選奨の10建築を特集

2026年日本建築学会賞 作品選奨の10建築を特集

CULTURE

2026年の日本建築学会賞の各賞が今年4月に発表されています(一般社団法人日本建築学会主催)。
そのうちの「作品選奨」は、日本建築学会が毎年発行している学会誌『建築雑誌増刊 作品選集』掲載の作品から特に優れた作品に対して贈られるもので、作品選奨選考委員会による現地調査を経て、2026年は以下の10作品が受賞しました(以下、学会発表順に記載、カッコ内は受賞者の所属組織など)。
昨年に続き、各作品の受賞者から提供があった写真や図版などをもとに詳しく紹介します。

作品選奨10作品

・天神町place(伊藤博之建築設計事務所、多田脩二構造設計事務所)▶︎▶︎▶︎ 見る
・AQ Group本社屋(岩﨑 遊、ホルツストラ、ZO設計室)▶︎▶︎▶︎ 見る
・だら挽きの家(ICADA、Graph Studio)▶︎▶︎▶︎ 見る
・徳島県新浜町団地県営住宅2号棟(カワグチテイ建築計画、島津臣志建築設計事務所、内野設計、長谷川大輔構造計画)▶︎▶︎▶︎ 見る
・茨木市文化・子育て複合施設 おにクル(竹中工務店大阪本店、伊東豊雄建築設計事務所)▶︎▶︎▶︎ 見る
・風姿(手塚建築研究所、オーノJAPAN)▶︎▶︎▶︎ 見る
・STROOG社屋(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)▶︎▶︎▶︎ 見る
・金沢美術工芸大学(SALHAUS、カワグチテイ建築計画、仲建築設計スタジオ)▶︎▶︎▶︎ 見る
・花と根(生物建築舎)▶︎▶︎▶︎ 見る
・大阪避雷針工業神戸営業所(竹中工務店大阪本店)▶︎▶︎▶︎ 見る

 


天神町place

受賞者

伊藤博之(伊藤博之建築設計事務所代表、工学院大学教授)
上原絢子(伊藤博之建築設計事務所)

天神町place

〈天神町place〉鳥瞰 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

 

共にいること / 1人でいること

ビルの隙間と中庭の暗さ
敷地は湯島天神の参道沿い、本郷台地の縁に位置している。周辺に建ち並んでいたホテルは、近年そのほとんどが高層集合住宅に建て替わり、まちは急速にその性格を変えつつある。この建物も同様の用途変更のため、既存改修案や最大容積案などとの比較の中で計画された。
旗竿形状であるうえ、三方を高層建物に囲まれて敷地内の日当たりは期待できない。さまざまな配置を検討した末、中庭を包みながら薄い板を折り曲げたようなボリュームとすることで、各住戸は周囲のビルの隙間と中庭の両方から、光や風、視線の抜けを得られると考えた。その中庭は細長く、模型では井戸の底のように暗かったが、何とか人がいる場所にしたいと考えた。

廊下 / 横穴 / テクスチャ
少しでも光を感じられるよう、以下の3つを行った。
まず、なるべく影をつくらないよう吹抜の輪郭に沿う廊下を減らした。廊下は、その先の住戸をメゾネットにすることで2層おきになっている。次に、吹抜に面して横穴を開け、共用部や住戸のバルコニーとして用いた。バルコニーと住戸の前後関係や住戸の規模の違いで、吹抜まわりのさまざまな位置から光と風を入れるようにしている。最後に、微かな光も感じられるよう、高さ30mの壁に相応の凹凸と幅のあるテクスチャを与えた。実際にはサンブスギの溝腐れ病の被害木を含む、建材としては使えない材を型枠に用いて、直線的でありながらも不規則な表情を目指した。

構造体による人の居場所と互いの距離感
中高層建物において、空間に比べて大きくなってしまう構造体をどのように扱うか、これまでも様々な模索を続けてきた。この建物では、中庭まわりの柱梁の奥行を使って、机やベンチ、カウンターや収納など人の居場所や行為の起点となる造作をリニアに配置し、住戸のなかに仕事場も含むさまざまなシーンを共存させようとしている。この造作の奥行きは室内に光を効果的に拡散するだけでなく、住民同士が窓から中庭を挟んで互いに気配を感じながらも、その適切な距離感を作り出す。

<吹抜け>を<中庭>に
一般的に私たちが<中庭>を、特に人が集う場所としてイメージするとき、それは低層かつ適度な縦横比で十分な明るさのあるものである。一方で、高層マンションに見られる廊下に囲まれた<吹抜け>は人の経験や生活とは無関係なただの暗い空隙である。この計画は、あの<吹抜け>を、人にとって意味のあるものできないかという問いである。あるいはそのプロセスは<吹抜け>を<中庭>にできないかという試行錯誤の連続だった。人のいる状況を作るために、そこに面した部屋をコワーキングにするなどのプログラム提案も行ったが、運営の問題や周辺の過渡的な状況から見送らざるを得なかった。そこで我々としては、中庭のなるべく多様な使い方を将来に担保しながら、まずは暗いなかでも一人ずつが居たくなる場所にする建築のデザインに注力すべきと考えた。そういう場所なら、むしろプログラムを介さずとも、誰かと共にいることができるのではないか。

住み手が共有する建築の特徴
明るい中庭の代わりにイメージしたのは、修道院跡に見られる教会堂の廃墟のようなものだった。その役割を終えても人々がそこを目指し、留まりたいと思うのは、朽ちても残る空間の奥行や光の効果によるところが大きい。もちろん計画と特定の宗教は全く関係がないが、人間をはるかに超える大きさや、移り変わる光に個々に向き合う場所が住戸の集合として生まれ、それを住民が日常の傍に共有することに可能性を感じた。
〈三組坂flat〉(2019年)のグリッドや〈GURURI〉(2016年)の外周通路など、建築の大きな特長を住み手が共有することで、それぞれ1人でいながらも共にいると感じられる状況を、我々は様々なかたちで目指してきた。それがこの計画では、中庭という視覚的にも分かりやすい姿で実現されたと言える。
周囲が無風でもこの建物のバルコニーでは微かな風を感じるという声をよく聞く。吹抜の重力換気かもしれないし、普段感じにくいビルの隙間の、台地を吹き降ろす風が体験されているのかもしれない。いずれにしても高密度な中で、光と風を求めた結果が体験されることをうれしく思う。

いとう ひろゆき

天神町place

〈天神町place〉撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

平面詳細図(3F)

天神町place

断面詳細図

天神町place

断面詳細図

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

天神町place

〈天神町place〉 撮影:西川公朗

DATE
設計・監理:伊藤博之建築設計事務所(担当:伊藤博之、上原絢子、伊藤 愛)
構造設計:多田脩二構造設計事務所
設備設計:テーテンス事務所、EOS Plus
植栽:長濱香代子園庭設計
施工:サンユー建設
所在地:東京都文京区
⽤途:共同住宅(35⼾)
規模:地上8階+地下1階
構造:RC造
敷地面積:782.21m²
延床面積:2448.55m²
竣工:2023年3月

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AQ Group本社屋

受賞者

岩﨑 遊(元 野沢正光建築工房)
稲山正弘(ホルツストラ取締役、東京大学名誉教授)
柿沼整三(ZO設計室会長)
伊藤教子(ZO設計室代表取締役)

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

 

設計コンセプト

大宮駅から西に3km,国道17号に面して建つ8階の耐火純木造ビルである。
中央を廊下,エレベーター,トイレなどを設けたコアとし,東西両サイドを10.92×27.3mの無柱空間としている。1階から4階の主要構造部を2時間耐火,5階から8階を1時間耐火として、強化せっこうボードで耐火被覆した上で,「水平力のみ負担する筋交など」をあらわしとし,木の構造体を都市に表出させた。開口部越しに見える木部はすべて構造材である。
本プロジェクトでは、普及化を目指して軸組工法を採用し,柱脚以外の金物は流通品を使用している。地域のゼネコンと木材調達・プレカット加工・建方を行うサブコンがタッグを組み、施工を担った。30mを超える多層木造であっても,防耐火を含めた設計・確認申請のプロセスが中規模木造と同等になるよう配慮している。軸組工法のもつ汎用性,普遍性を進化・発展させたことで、スパンを飛ばした開放的で自由な空間が実現可能になった。
高倍率の格子耐力壁の開発により,耐力壁でありながら自然採光と自然排煙を可能にした。南北方向に2,730mmピッチで並ぶ柱梁の間に格子耐力壁がはめ込まれ,小ラーメンや相欠き合わせ柱式ラーメンと併せて空間を特徴づける要素となっており,どこか住宅にも通ずる落ち着いたスケール感をもつ木の温もりが感じられるオフィスとなった。
普及型の多層耐火木造が実現したことは,これまで受け継がれてきた在来軸組工法にとって大きな一歩である。高い木材加工・建方技術を有する日本だからこそできる多層純木造建築になったのではないかと考えている。

岩﨑 遊(元 野沢正光建築工房)

 

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

AQ Group本社屋

〈AQ Group本社屋〉 画像提供:AQ Group

DATE
作品名:AQ Group本社屋
設計・監理:野沢正光建築工房
構造設計:ホルツストラ
設備設計:ZO設計室
施工:田中工務店・伊佐建設 特定共同企業体
所在地:埼玉県さいたま市
⽤途:オフィスビル
規模:地上8階
構造:純木造軸組工法
敷地面積:3,776.95m²
建築面積:909.41m²
延床面積:6,076.52m²
竣工:2024年3月

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だら挽きの家

受賞者

岩元真明(九州大学准教授、ICADA共同主宰)
千種成顕(ICADA共同主宰)
荒木美香(Graph Studio共同主宰、関西学院大学准教授)

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

配置図

ICADA〈だら挽きの家〉模型

模型 撮影:岩元真明

設計コンセプト

旗竿敷地に建つ木造住宅のプロジェクトである。設計を開始した2022年は、その年の2月に始まったロシアとウクライナとの戦争と、2020年以降のCovid-19(新型コロナウイルス)の世界的流行の影響による、木材価格の高騰、いわゆるウッドショックの真っ只中で、材料調達からデザインをはじめる必要があると感じていた。
そこで思い浮かんだのが、木材流通において行き場を失った「大径木(たいけいぼく)」の問題である。現在、太い丸太は細い丸太よりも単価が低い。長年かけて育てた木が安く売られ、細切れになって使われる状況をやるせなく思う林業関係者も多いという。ならば、大径木を調達し、安価かつ表情豊かな家を建てたいと考えた。
まずは「だら挽き」と呼ばれる単純な製材方法によって、直径50~60cmの杉丸太を短冊状にスライスする。歩留まりを上げるため、耳も薄皮も残したままだ。こうしてできた厚さ105mmと70mmの挽板を柱梁にすれば、仕上げを兼ねる「杉板挽き放し構造」が出来あがる。端材は階段や家具の材料として徹底的に使い切った。(設計者によるテキスト、下の段落に続く)

ICADA〈だら挽きの家〉

施工風景 撮影:岩元真明

ICADA〈だら挽きの家〉

施工風景 撮影:岩元真明

ICADA〈だら挽きの家〉

施工風景 撮影:岩元真明

ICADA〈だら挽きの家〉

提供:ICADA

 

平面計画は、挽板構造のアイデアと、敷地条件から半ば自動的に導かれた。整形部分の1階にダイニングキッチンと仕事場を、2階に居間・寝室・子ども室を配置。子ども室は可動棚で仕切り、ライフステージの変化に対応する計画とした。路地の空中にはウォークインクローゼット(WIC)を浮かべ、先端部に街路を眺める書斎を設けた。WIC下部は雨に濡れないアプローチとなり、木造のピロティ柱が室内に広がる木質空間をほのめかす。このように路地に浴室・収納を集約することで、整形部の外周壁はモノから解放され、挽板の自然な表情が活きた。

岩元真明+千種成顕

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

ICADA〈だら挽きの家〉

〈だら挽きの家〉 撮影:表恒匡

DATE
作品名:だら挽きの家
設計・監理:ICADA(担当:岩元真明、千種成顕)
構造設計:Graph Studio(担当:荒木美香、氏岡啓威)
環境エンジニアリング:スタジオノラ(担当:谷口景一朗、藤村真喜)
施工:榊住建
所在地:埼玉県さいたま市
⽤途:住宅
規模:地上2階
構造:木造
敷地面積:132.37m²
延床面積:112.98m²
竣工:2024年3月

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徳島県新浜町団地県営住宅2号棟

受賞者

川口有子(カワグチテイ建築計画共同代表)
鄭 仁愉(カワグチテイ建築計画共同代表)
島津臣志(島津臣志建築設計事務所代表)
内野輝明(内野設計代表取締役)
長谷川大輔(長谷川大輔構造計画代表取締役)

カワグチテイ建築計画〈新浜町団地県営住宅2号棟〉

〈新浜町団地県営住宅2号棟〉外観

 

設計コンセプト

日本で初めてのあらわし木造による4階建ての共同住宅である。徳島県「awaもくよんプロジェクト設計競技」にて最優秀賞を受賞し、設計者に指名された。
330mm角の大断面集成材の柱・梁を内外にあらわし、特殊な技術によらず、日本において最も標準的な構法と寸法体系により、誰もが取り組めるモデルとなることを目指した。令和元年改正の建築基準法で新たに定められた「避難時倒壊防止検証法」を用いて、主要構造部は75分準耐火構造とし、密に絡み合う構造・設備・防耐火・遮音・平面計画のすべてにおいて高いレベルで統合を図っている。
親密で豊かな人の息遣いが感じられるものの、高齢化が進む同地域で行なったフィールドリサーチをもとに、生活者が住戸内に閉じこもらず、「多対多」の自然な見守りあいが生まれることを企図し、共用廊下に面して「間の間(あいのま)」と名付けた中間領域を設けた。
本作は、町とつながった暮らしのできる共同住宅となっている。

内野設計+島津臣志建築設計事務所+カワグチテイ建築計画

 

カワグチテイ建築計画〈新浜町団地県営住宅2号棟〉

〈新浜町団地県営住宅2号棟〉外観

カワグチテイ建築計画〈新浜町団地県営住宅2号棟〉

〈新浜町団地県営住宅2号棟〉外観(部分)

カワグチテイ建築計画〈新浜町団地県営住宅2号棟〉

〈新浜町団地県営住宅2号棟〉共用廊下

カワグチテイ建築計画〈新浜町団地県営住宅2号棟〉

〈新浜町団地県営住宅2号棟〉共用廊下

DATE
作品名:徳島県新浜町団地県営住宅2号棟
設計・監理:カワグチテイ建築計画(担当:川口有子、鄭 仁愉)
共同設計:内野設計(担当:内野輝明)・島津臣志建築設計事務所(担当:島津臣志)
構造設計:長谷川大輔構造計画(担当:長谷川大輔)
所在地:徳島県徳島市
⽤途:共同住宅
規模:地上4階
設備:上久保設備設計
施工:亀井組・岡田組特定建設工事共同企業体
敷地面積:3,327.60m²
延床面積:1,727.31m²
竣工:2023年2月

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茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

受賞者

國本暁彦(竹中工務店大阪本店設計部設計第3部長)
市川雅也(竹中工務店大阪本店設計部設計第4部門主任)
慶 祐一(竹中工務店大阪本店設計部構造第2部門シニアチーフエンジニア構造担当)
吉村純哉(竹中工務店大阪本店設計部構造第2部門主任)
伊東豊雄(伊東豊雄建築設計事務所代表取締役)

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

〈茨木市文化・子育て複合施設 おにクル〉 Photo: Nacasa&Partners

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

〈茨木市文化・子育て複合施設 おにクル〉 Photo: Nacasa&Partners

 

「日々何かが起こり誰かと出会う 暮らしを目指して」

1.敷地
〈茨木市文化・子育て複合施設 おにクル〉は、大阪府茨木市に2023年に開館した公共施設である。
敷地はJRと阪急の2駅を結ぶ東西商業軸と、南北のグリーンベルト 環境・文化の軸が交差する場所で、かつ市役所に隣接する市にとって象徴的な場所である。この敷地に建つ施設も市の象徴的な建築となることが当初から期待された。

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

〈茨木市文化・子育て複合施設 おにクル〉計画地広域図 提供:伊東豊雄建築設計事務所

2.縦の道
多目的ホール(1階)、こども支援センター(2階)、スタジオ(3階)、大ホール(4階)、図書館(5・6階)、プラネタリウム / 市民活動センター / 和室(7階)と多様なプログラムで構成され、それらはエスカレーターを備えた吹き抜け空間「縦の道」により融合されている。
縦の道を中心に、各階毎に図書館機能や多くの座る場所を積極的に配し、幼児から高齢者まであらゆる市民に選択性のある多様な居場所を提供している。

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

「縦の道」断面 イメージ 提供:伊東豊雄建築設計事務所

3.「立体的な公園」のような公共施設
敷地北側の芝生広場と建物は空間として連続しており、この広場の延長とも言える1階は開放的で誰でも入りやすい。さらに施設全体から壁は極力なくし、各階に緑のテラスを積極的に配することで、内に居ても外部のような開放感を感じさせるので建物全体が立体的な公園のようである。

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

「立体的な公園」のような公共施設 イメージ

4.市民が育てる
茨木市では“主役は市民である“ことが徹底され、多くの市民活動が活発に行われてきた。本施設の整備に際しても、市民・行政・設計者が通常の公共施設では考えられない親密な関係の下で建設が進められた。この結果、累計100を超えるワークショップが開催され、参加者は2000人を越えた。そのうち10回は設計・施工者である我々が主体となり、多くの市民・行政の方との出会いの機会を得た。こうした取り組みの中、おにクルは開館から2年連続で200万人(1日平均5500人)が訪れる、人口30万人弱の市にとって異例の賑わいを見せている。

竹中工務店+伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

「縦の道」 撮影:中村 絵

 

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

断面図 提供:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

1階 大屋根広場 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

1階カフェ イベント風景(合気道志道塾主催) 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

2階 大屋根テラスとおはなしのいえ 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

おはなしのいえ 内観 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

3階 アートライブラリー 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

3階 スタジオ 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

大ホール(ゴウダホール) 撮影:中村 絵

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

4階 大ホール ホワイエ 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

5-6階 図書館(おにクルぶっくぱーく)吹き抜け 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

5階 図書館(おにクルぶっくぱーく) 撮影:中村 絵

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

5階 図書館(おにクルぶっくぱーく) 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

6階 テラス 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

7階 市民活動センター(手前)、屋上広場 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

茨木市文化・子育て複合施設 おにクル

芝生広場 撮影:伊東豊雄建築設計事務所

 

DATE
作品名:茨木市文化・子育て複合施設 おにクル
設計・監理:伊東豊雄建築設計事務所・竹中工務店共同企業体
構造設計:竹中工務店・佐々木睦朗構造計画研究所・多田脩二構造設計事務所
設備設計:竹中工務店・建築エネルギー研究所
音響計画:永田音響設計
家具デザイン:藤森泰司アトリエ
サイン計画:廣村デザイン事務所
テキスタイルデザイン:安東陽子デザイン
照明計画:LIGHTDESIGN
ランドスケープデザイン:竹中工務店
防災計画:竹中工務店
テクニカルアドバイザー:LUFTZUG
舞台機構設備設計:秋月宏文
舞台照明設備設計:あかり組
ワークショップ企画・運営:studio-L
アートワーク:
Cycle(南壁面):名和晃平
おはなしのいえ(2階):井上直久(デザイン監修)
施工:竹中工務店
建主:茨木市
所在地:大阪府茨木市
⽤途:劇場・子育て支援施設・図書館・市民センター・プラネタリウム
規模:地上9階
構造:RC 造・SRC 造・S 造、免震構造
敷地面積:10,500m²
延床面積:19,715m²
竣工:2023年10月

おにクル ウェブサイト
https://www.onikuru.jp/

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風姿

受賞者

手塚貴晴(手塚建築研究所代表、東京都市大学教授)
手塚由比(手塚建築研究所代表)
大野博史(オーノJAPAN代表取締役)

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉アウトドアリビング 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉秋川の湯・露天風呂 撮影:FOTOTECA 木田勝久

設計コンセプト

東京・秋川渓谷に面した傾斜地に建設した、1日1組限定のオーベルジュのプロジェクトです。現代日本の風土と文化に応えるべく、形式を超えた現代の和を目指しました。
33メートルの長い軒先には柱が全くありません。軒先の高さは床面から1.5m。人の目線の高さで秋川渓谷を屏風絵として切り取ります。「暁」「宵」と名付けた2枚の襖絵は、その渓谷に立ち込める夜明け前と日没後の一瞬の光を現わしています。中心の空間はあえて外部としました。深い軒下は自然との対話を促します。雪を愛で、夏の谷風を聴く。新緑を愉しみ、紅葉を嗜む。この場では雨や雪も風情となります。

建物は失われつつある匠の技の結晶体です。基本は木構造ですが、軒先には鉄骨が仕込まれています。この建築では型式に拘らず、木造も鉄骨も匠が技をふるい、時代を超えた空間表現を目指しています。古建築同様、飾らない本物の構造表現が空間を組みあげています。

内外の壁には20mm角に過ぎない細かい無数の棒材を、1mmの隙間を開けつつ貼り並べてあります。色は五日市街道にかつて存在した町屋の柿渋色。家具はあえて「ちり」を残した伝統的な収まりとし、部材の成り立ちが明確な和の風合いを残しています。風姿には二つの湯があります。谷川へと開かれた外の湯は、谷川を映し万華鏡の夢幻の世界へと誘います。内の湯は黒く染めあげ、空蝉の心を表しました。

手塚貴晴

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉入り口・玄関 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉竹林の中庭 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉墨色の風呂 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉イーナリビング 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉襖絵(暁と宵) 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉鏡の間 ダイニング 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

〈風姿〉は秋川と盆堀川の落合にあり、西には天然の要害を生かした城山を背負っている 撮影:FOTOTECA 木田勝久

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

敷地計画図 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

敷地断面図 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

平面図 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

断面図 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

断面詳細図 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

手塚建築研究所〈風姿(ふうし)〉

構造ダイアグラム 図版提供:TEZUKA ARCHITECTS

DATE
作品名:風姿
設計・監理:手塚貴晴+手塚由比+矢部啓嗣 / 手塚建築研究所 (担当:ソッキー、小野良希)
構造設計:大野博史 / オーノJAPAN(担当:藤田竜平)
施工:田代浩二 / 水雅(担当:西出圭佑、松井美穂 池沢国大[大工])
照明:角舘まさひで / ぼんぼり光環境計画(担当:黒川祥穂)
外構:石川圭一 / 10景(TEN-KEI)
家具:遼有堂(担当:峯岸遼有、Nikesh Shrestha)
:ハンマーヘッド楽具(担当:安藤 元)
:VERITA SOFA(担当:鈴木 誠)
薪ストーブ:山林舎(担当:竹内 淳)
事業主・建主:黒茶屋
所在地:東京都あきる野市
主要⽤途:旅館
規模:地上1階
構造:鉄骨造、一部木造
敷地面積:1326.47m²
延床面積:261.85 m²
竣工:2023年11月

風姿 ウェブサイト
https://fushi.co.jp/

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STROOG社屋

受賞者

原田真宏(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO主宰建築家、芝浦工業大学教授)
原田麻魚(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO主宰建築家、代表取締役)
市場靖崇(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOシニアアーキテクト)

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

 

「ドミノから、次のシステムへ」

空間的にも時間的にも、アウトラインのない建築のシステムはできないだろうか、と考えてきた。
もちろん私たちにはドミノ・システムという、どこまでも拡張可能で、産業構造を含めて広く普及した思考と構造の方法があるのだが、あの自由と言いながらもグリッドモデュールという絶対的な基本単位が存在していることには、人間を均質的に捉える思考がその基礎に据えられているようで、カタにはめられる気持ちの悪さというのか、違和感を消し去れないでいる。
アウトラインを持たず、グリッドモデュールからも自由な空間的・構築的なドミノに代わるシステムはないものか。そのヒントになったのは、このSTROOG社の代表の自邸である「立山の家」と、その展開である「LIAMFUJI」になる。この2つの仕事は、共に壁面を一枚で形成するほどの大断面集成材で作られていて、その巨大な壁=梁による十分な曲げ応力と、これも十分なスタンス幅による鉛直方向に剛な接合によって、上下層で構造がグリッド状の「通り芯」から自由になり、その結果、空間もまた断面的に新たな関係で接続されることになった。これらの時点では、平面的にはグリッドが踏襲され、空間システムも完結していたので、これをほぐし、時間的・空間的にアウトラインのないシステムへと向かうことを考えた。
STROOG本社でとったのは、長さはまちまちの幅3000mmのCLT原板を複数用意し、これに任意に切り込みを入れ、井桁状にノックダウンするように組み上げる方法である。CLTは直交積層合板という和名の通り直交する2軸に強軸を持つため、どの部位も鉛直に抵抗する柱と水平に抵抗する梁の性質を両有し、なおかつ無垢材であるので切り込み位置はミリ単位で自由になる。これと切り込みの噛み合い深さがそのまま接合スタンスとなってラーメンが成立する構造的合理性と合わせて、立体的にグリッドモデュールに束縛されないシステムが成立する。またアウトラインは完結せずに、ほつれるように空間的・時間的な余地へと解放されているので、生命体のように場面場面で必要性や環境の変化に適合しながら、どこまでも成長していくことも可能になる。そして生み出された建築的空間は、これを現実化したCLTのラミナと同じように、方向性のある空間が直交するように組み上げられ、そのように異方に積層する空間群を、斜めに抜ける関係性が縫い合わせるといった、全く新しい空間性が生まれている。この均質ではない空間の関係性と、CLTの質量の周囲に生まれるアトモスフィアとが重なることで生まれる場所性は、ドミノシステムの持つ均質さとは全く異なる質のものになった。
新しい木材が生む、新しいシステムである。それは、ドミノの普遍性は引き継ぎながらも、より多様な、人の居場所を生み出していく生命的なシステムとなったのではないかと考えている。

原田真宏

 

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉断面詳細図 提供:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉1階平面図 提供:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉2階平面図 提供:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉施工風景 撮影:新 良太

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

〈STROOG社屋〉施工風景 撮影:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ)STROOG社屋

45度方向に切り欠いた相欠き接合部 撮影:STROOG

DATE
作品名:STROOG社屋
設計・監理:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(担当:原田真宏 原田麻魚 京兼史泰 市場靖崇)
構造設計:KMC(担当:蒲池 健)
所在地:富山県滑川市
⽤途:事務所
規模:地上2階
構造:木造(CLT)
敷地面積:905.04m²
延床面積:499.64m²
竣工:2022年12月

STROOG ウェブサイト
https://stroog.com/works/works-15064/

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金沢美術工芸大学

受賞者

日野雅司(SALHAUS共同代表、東京電機大学教授)
栃澤麻利(SALHAUS共同代表)
安原 幹(SALHAUS共同代表、東京大学教授)
川口有子(カワグチテイ建築計画共同代表)
鄭 仁愉(カワグチテイ建築計画共同代表)
仲 俊治(仲建築設計スタジオ共同代表、東京都立大学准教授)
宇野悠里(仲建築設計スタジオ共同代表)

SALHAUS・カワグチテイ建築計画〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:設計共同企業体(および仲建築設計スタジオ)〈金沢美術工芸大学〉

〈金沢美術工芸大学〉鳥瞰 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

SALHAUS・カワグチテイ建築計画〈金沢美術工芸大学〉

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

 

「地域に開き、正しく閉じる」

本プロジェクトは2023年に移転した、金沢美術工芸大学の新キャンパスです。分棟形式とすることで、中心を貫く『アートプロムナード』と、5つの『庭』という特徴づけられた外部空間を設けています。
アートプロムナードは学生の交流・生活の場であると同時に、地域住民が散歩しながら大学の活動や作品を目にする開かれた場所です。一方で、校舎に囲まれた『創作の庭』は、制作に没入し、自己と向き合いながら新しい芸術の創作に集中できる環境です。地域に開きつつ、正しく閉じられた空間が両立する、街のようなキャンパスです。
加えて、キャンパス各所に設けた『アートコモンズ』は、学生の展示や課題の講評会が行われるギャラリー空間です。学生は通りがかりにアートコモンズで行なわれている他専攻の展示や講評会に偶然に出会うことができます。また、創作の庭を囲むように配置された『共通工房』は、領域を横断する現代のアート制作を支えるために新設された制作の場です。木や金属、石など素材別に用意された専門性の高い各共通工房に、どの学生も自由にアクセスすることができます。
またデジタル機器やシアタールームなど、新しい芸術の表現を支える共通工房も用意されています。こういった環境はすべて、学科・専攻の枠を越えて互いの創作に触れ、刺激し合うための場づくりであり、キャンパス全体が2階ブリッジでつながる回遊性の高い計画となっていることも、学生・教員たちの交流を誘発しています。
本計画では3つの設計事務所が協働することで、ひとつの主体によるデザインでは起こりえないような、多様性を内包した景観・空間を生み出す試みを行っています。金沢美術工芸大学の学科・専攻の多様さを建築が受け止めること、それだけの包容力をもつことが重要と考え、設計においても多様性を担保しつつ全体がバラバラにならないような協働のあり方を模索しました。それぞれの守備範囲が複雑に相互乗り入れするように分担をすることで、さまざまな材料やディテールが混ざり合い、街並みのような風景ができたと考えています。

日野雅司、川口有子、仲 俊治

 

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

〈金沢美術工芸大学〉 画像提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

断面図 提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

金沢美術工芸大学

キャンパスおよび周辺配置図 提供:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ

DATE
設計:
建築:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
構造:構造計画プラス・ワン
設備:総合設備計画
外構:スタジオテラ
積算:日積サーベイ
照明:岡安泉照明設計事務所
サイン:廣村デザイン事務所
家具:藤森泰司アトリエ
音響:永田音響設計
監理:
建築:SALHAUS・カワグチテイ建築計画・仲建築設計スタジオ
構造:構造計画プラス・ワン
設備:総合設備計画・ムラシマ事務所
施工(建築):
真柄トーケン、兼六、北川、鈴木特定建設工事共同企業体
城東、ウェルビー、本田特定建設工事共同企業体
所在地:石川県金沢市
建主:金沢市
⽤途:大学
規模:地下1階、地上3階
構造:PCa造、RC造、鉄骨造、木造
敷地面積:47,275.44m²
延床面積:37,357.65m²
竣工:2023年7月

金沢美術工芸大学 ウェブサイト
https://www.kanazawa-bidai.ac.jp/

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花と根

受賞者

藤野高志(生物建築舎主宰、東北大学准教授)
森田達也(生物建築舎)

生物建築舎〈花と根〉

〈花と根〉外観 画像提供:生物建築舎
南側になだらかに傾斜した農地の一角に建つ。庭の地形はL字型の建物の入隅に向かって緩やかに上昇し、一部は盛り上げ、丘のように造成した。屋根から単管を吊り下げ、住まい手がこの家に手を入れていくきっかけとした。窓の前の日除けは建主による施工。単管は汎用品を用いており、建主が容易に組み替えたり継ぎ足したりできる

 

淀みをつくる

関東平野の北、山から平地へと水が運んだ土が、なだらかな南向き斜面として堆積している。この日当たりのよい農地の一角で、地面と関わる暮らしを望む家族の住宅である。
この土地の黒土は、雨を蓄えて作物を育み、冬は空っ風に吹かれ、痛いほどの土煙となって平野を下る。四季豊かな田畑ではあるが、人が暮らすには水と土の循環が激しい。だから、流れの中で身を寄せられる物陰をつくろうと考えた。
まず、季節風に対しL型に壁を立てる。風が割れ、入隅に淀みができる。土や植物の種が運ばれ、堆積していく。やがて緑が根付き、溜まった土を地形として定着させる。草木が伸び、緑陰に生き物たちがやってきて、小さな生態系ができる。もし、この屏風のような壁に住めたら、人も生態系の一部となれるかもしれない。
こうした結びつきを目指して、L型の建築と、入隅に堆積する地面をつくった。建築を背に単管が組まれ、タープが架かり、デッキやサッカー場が手づくりされた。住まい手が自ら手を入れ続け、様相を変化させていく。土が肥沃だから草木はすくすく育つ。大きな流れの中では建築は低い壁に過ぎないが、流れがあるからこそ壁の脇に淀みが生まれ、生き物が身を寄せ根付く。絡みつきが増えれば、淀みはさらに深くなる。
一方で、生態系の編み目が密になればなるほど、そこから自由になる居場所も必要だと思った。物見塔は、いったん建築の外に出て、屋根の上を歩かないと辿り着けない。安心できる淀みから顔を出し、流れに晒されるのである。
根を張るように場所への理解を深め、その経験を元に、花が開くように想像を広げる。地面に関わる日常の中で、たまに物見塔に登って遠くを思うことで、自らも循環の一部にあると忘れずにいられる。

藤野高志

 

生物建築舎〈花と根〉コンセプトイメージ

提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉配置図

配置図 提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

東側遠景 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

南東側外観 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

南側外観 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

上の居間から玄関の見下ろし 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

作業場から玄関越しに上の居間の見上げ 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

上の居間 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

上の居間から台所を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

台所から上の居間を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

下の居間から上の居間を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

納戸から南側を見る  撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

デッキから南側を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

デッキから東側を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

物見塔南側の屋根には、太陽光パネルと既製品の足場デッキが載っている 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

物見塔から南東を見る 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

東側夕景 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

南東側夕景 撮影・画像提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

提供:生物建築舎

生物建築舎〈花と根〉

配置平面図 提供:生物建築舎
庭の66種の樹種選定とランダムな配置は、多様ながらも野原や雑木林のような野性的な風景を目指したもので、自然の生育を重視した粗放管理を基本としている

生物建築舎〈花と根〉

立面断面展開図 提供:生物建築舎

DATE
作品名:花と根
設計・監理:藤野高志 / 生物建築舎
担当:藤野高志、森田達也、池田暉直*、竹中遼成*、渡邉雅大*(*印:元所員)
外構・造園:酒井恵子、酒井俊介 / ホスタガーデンズ
施工:
建築:建築舎四季(担当:小池健史)
基礎:秀建(担当:新井秀幸)
木材・プレカット:研屋(担当:岡田安弘)
木工事:西村建築(担当:西村浩行)
家具工事:清水建築(担当:清水正三)
外壁(木):日野原建築(担当:日野原啓一)
外壁屋根:富岡板金(担当:富岡道明)
鋼製建具:戸塚(担当:都所一男)
木製建具:中島木工所(担当:中島健太)
左官:龍見左工店(担当:龍見 晃)
クロス:建装(担当:奈良雅祥)
タイル:ライズカンパニー(担当:高橋敬次)
塗装:マルモ建創(担当:丸茂清次郎)
電気:後閑電気(担当:後閑照冶)
水道:丸新設備(担当:井上尚治)
外構:垣組(担当:花垣昇一)
鉄骨加工:アサヒエンジニアリング(担当:新井博文)
所在地:北関東
⽤途:専用住宅
規模:地上2階+物見塔
構造:木造在来工法
敷地面積:543.04m²
延床面積:176.30m²
竣工:2024年6月


大阪避雷針工業神戸営業所

受賞者

山崎篤史(竹中工務店設計部 シニアチーフアーキテクト)
大石幸奈(元竹中工務店設計部)※受賞発表時 同社社員
村上友規(竹中工務店設計部 構造部門 チーフエンジニア)

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Nacasa&Partners

 

「つなぐ減築、ひらく増築」

避雷設備を設計・施工する企業の神戸にある営業所の改修計画である。1989年竣工の鉄筋コンクリート4階建ての既存建物は、倉庫が1・2階に分かれているのが不便で、さらには35年の間に4階の社宅は不要になり、3階の事務室も半分以上が余っていた。そのため1/3程度の規模の2階建てに建て替えたいというのが当初の要望だった。しかし、調査をしてみると、内装や設備は更新時期を迎えていたものの、躯体や外装タイルは健全だった。
そこで私たちは、大量の廃棄物を出してわざわざ小さく建て替えるのではなく、不要な部分を減築して軽量化し、その分、既存躯体からの跳ね出しだけで基礎をつくらず増築する提案をした。これにより倉庫を1階に集約し、事務室と吹抜けでつなぐことで要望をかなえることができた。
さらに、今後70年以上ある躯体寿命を全うしてもらうことも重要だと考え、新たに付け足す材料には「経年美化」する素材を選び、ユーザー自身で容易に補修や交換が行えるディテールにするなど、時とともに建築への愛着や価値が増していくよう意図した。
既存躯体を地形と捉え、そこから建築を構想することで、”普通の建物”を長く愛される建築へとつくりかえた。こうした手法により、建築の寿命と都市の持続性について新たな可能性を示したいと考えた。

山崎篤史

 

 

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Yosuke Ohtake

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Yosuke Ohtake

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Yosuke Ohtake

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Yosuke Ohtake

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Tomoki Hahakura

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉 Photo: Tomoki Hahakura

大阪避雷針工業神戸営業所 図版

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉断面図(提供:竹中工務店)

大阪避雷針工業神戸営業所 図版

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉ダイアグラム(提供:竹中工務店)

大阪避雷針工業神戸営業所

〈大阪避雷針工業神戸営業所〉エリア鳥瞰  Photo: Yosuke Ohtake

DATE
作品名:大阪避雷針工業神戸営業所
設計・監理:竹中工務店(担当:山崎篤史、大石幸奈〔元社員〕)
構造設計:竹中工務店(担当:須賀順子、村上友規、許斐健太郎)
設備設計:竹中工務店(担当:山崎将吾、小林峻、吉本梨紗)
照明:ぼんぼり光環境計画(担当:角舘まさひで、黒川祥穂、竹内俊雄〔元社員〕)
植栽:Planta(担当:清野陽介)
既存樹活用:SHARE WOODS(担当:山崎正夫)
カーテン:fabricscape(担当:山本紀代彦)
3Dプリント:Boolean(担当:濱崎トキ、遠藤理音)、S-Lab.井上企画
所在地:兵庫県神戸市
⽤途:事務所・倉庫
規模:地上2階
構造:既存部:鉄筋コンクリート造 / 増築部:鉄骨造・木造
敷地面積:660.87m²
延床面積:471.59m²
竣工:2024年4月

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作品選奨選考委員会での選考経過および上記10作品の選出・贈賞理由は、日本建築学会ウェブサイトの各賞発表ページを参照してください。

日本建築学会「2026年各賞受賞者」発表ページ
https://www.aij.or.jp/2026/2026prize.html

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