COMPETITION & EVENT

中村竜治建築設計事務所が会場構成を担当した「Form #1: FormSWISS」

DESIGNART TOKYO DESIGNART TOKYO 2020 参加展示、11/3まで【会場Report】

スイス最新のビジュアルコミュニケーションデザインを通して、これからのデザイン領域と思考に触れる展示会「Form #1: FormSWISS」が、千駄ヶ谷、神宮前、鷹番(下の写真)の3カ所にて、2021年11月3日(火・祝)まで開催されています(最終日は17:00まで、会場所在地など開催概要は後述)。

「Form #1: FormSWISS」BOOK AND SONS会場

「Form #1: FormSWISS」会場の1つ、目黒区鷹番2丁目 [BOOK AND SONS](作品展示前)photo: Ryuji Nakamura

11月6日(金)まで開催されるスパイラルでのポップアップ展示を除く、都内3カ所の会場構成を、中村竜治建築設計事務所が担当しています。

【TECTURE MAG】では、原宿(千駄ヶ谷、神宮前)にある2つの会場を取材。写真を中心にお伝えします。なお、目黒区鷹番にある[BOOK AND SONS]の会場については、中村竜治建築設計事務所より写真提供を受け、10月25日に掲載済みですので、そちらのページをご覧ください。

THINK OF THINGS 外観

3会場の1つ、千駄ヶ谷3丁目にある[THINK OF THINGS]は、文房具やオフィス家具を製造・販売するコクヨのライフスタイルショップ&カフェ(2017年5月オープン)。同社の新商品発表会や各種イベントが行われる2階の多目的スペース「TOT STUDIO」が、今回の「FormSWISS」の展示会場です。

10月25日に掲載した、鷹番の[BOOK AND SONS]会場について速報した記事でも伝えたように、中村竜治氏による今回の会場構成では、3会場とも、建築用空洞コンクリートブロック(A種 390×190×100mm)が使われているのが特徴です。

コンクリートブロックにはとくだん塗装などは施さず、流通品をそのまま会場に敷き、会場内の通路としています。

今回の「FormSWISS」では、いわゆる展示台というものはなく、展示物は”地べた”に置くという手法で統一されています。

展示品をもっと詳しく見よう展示物に近づき、小さな文字で書かれた解説やメッセージも読みこもうとすれば、腰を曲げてしゃがむこむよりほかはなく、まるで「池の中を静かに覗きこむよう」な所作は、中村氏および主催者側が本展で意図したものです。

DESIGNART TOKYO 2020 オフィシャルe-バイク〈VanMoof X3〉

DESIGNART TOKYO 2020 オフィシャルe-バイク〈VanMoof X3〉

本会場「TOT STUDIO」では、これまでにコクヨの新商品展示会などが開催されています。その際には、壁側にテーブルを並べて展示台とし、プレゼンテーションを行ってきましたが、今回の展示手法はその”真逆”をいくもの。スタジオの床がヘリンボーンのタイル貼りだったことに、今回初めて気づく人も多いのでは?

イベントでは、ケータリング業者によるフィンガーフードやドリンクが並べられるオープンキッチンのカウンターも、今回の展示ではお役御免に。

スイスのビジュアルコミュニケーションを展示する展覧会の会場構成です。
仕事中、図面や写真の配置や構図などを考えるとき、出力したものを床に並べて見ることがあります。机や壁より広い背景を確保でき、遠くから眺めることもできると同時に、手軽に並べ替えながら向きや順番をあれこれ考えることもできるからです。今そうしている人がどれだけいるか分かりませんが、この展覧会を企画した丸山新さんが実際に現地を訪れ、取材したスイス人デザイナー達の仕事や仕事場の風景を見ていると、今でもきっとそうしているに違いないと思えるほど、物や実空間と向き合っているように思えました。作品を展示するというよりは、そんな感覚を伝えられる空間になればと考えました。
また、3つある会場はどれも多目的な空間で、純粋な壁がわりと少なく、物理的にも床の方が利用に適していたこともあり、自然と床を使う思考へと向かいました。お互いに離れていて広さや形も異なる会場に空間的な繋がりを持たせるために、ありふれた存在で形や大きさが一定であるコンクリートブロック[*]を空間の素材に利用しました。床の上に展示物とブロックが置かれ、人はブロックの上を歩きながら展示物を見ます。おそらくデザイナー達がその物を検討していた時と同じような感覚で、展示物を感じることができるのではないかと思います。また、会場ごとに異なるブロックの配置は、もともとの空間の使い勝手から少しずつずれていくので、二重に(入れ子というよりはぶれている感じ)空間があるように感じさせます。展示物はその間にあり、どちらからも距離を保っているように感じる会場構成になっています。(中村竜治建築設計事務所)
*場内通路の素材:建築用空洞コンクリートブロックA種(390×190×100mm)

中村竜治建築設計事務所
https://www.ryujinakamura.com/

DESIGNART TOKYO 2020 オフィシャルe-バイク〈VanMoof X3〉

なお、「Form #1: FormSWISS」は、「DESIGNART TOKYO 2020」に参加している会場です。
今回の取材では、DESIGNARTインフォメーションセンター(ワールド北青山ビル1階)でオフィシャルe-バイク〈VanMoof X3〉を借り、2つの会場を回りました。2つの会場は、歩けば5-6分の距離です。

【TECTURE MAG】記事
【試乗Report】DESIGNART オフィシャルe-バイク〈VanMoof〉最新モデル(2020/11/02)
https://mag.tecture.jp/product/20201102-16640/

FormGALLERY(神宮前1丁目)

[FormGALLERY]は、原宿の竹下通りに対して南側に位置する低層ビルの1室にあります。

こちらの会場も、コンクリートブロックを使った会場構成。

[FormGALLERY]は、本展を企画したグローバルデザインプラットフォーム「Form」を立ち上げた、デザインディレクターの丸山 新が代表を務める&Formのオフィスと隣接しています。築45年の鉄筋コンクリート造の1室をリノベーションした空間です。参考までに、改修前の平面図と比べると、オフィスとの境には壁がなかったことがわかります。

平面図(改修前)©︎中村竜治建築設計事務所

平面図(改修後)©︎中村竜治建築設計事務所

この一見すると「床を剥がしただけ」のような空間の改修およびデザインも、2019年に中村竜治が手がけています。&Form代表の丸山氏によれば、中村氏への設計依頼として「ギャラリーとしても使えるオフィス(デザインスタジオ)をつくってしてほしい」と伝えたとのこと。「ギャラリーを併設したオフィス」という依頼ではなかったことが興味深かったと、中村氏は事務所の公式サイトのWORKSページで述べています。

ギャラリー側の空間には、敢えて新しい床を貼らず、改修の際にあらわれた素地に、モルタルを荒々しく塗り込めたデザインとなっています。コンセプトとして、オフィスに対してここは「外部」であり、オフィスの奥にあるベランダと同じような位置付けです。

ゆえに、オフィスとギャラリーとの仕切りはアルミサッシの掃き出し窓に。既存のガラス窓に似た、飛散防止の金網が格子状に入ったガラスのものをセレクトして取り付けています。

オフィス(手前)とギャラリー(奥)の境の立ち上がり

ギャラリー(左)と玄関(右)との境界

会場は、竹下通りと表参道の間に位置することもあり、通りに面した既存の掃き出し窓からは、人や車の往来がよく見えます。それらの気配がとても近しく感じられるため、このギャラリーが「外部」なのだという印象を強めています。

本展は、池の中を静かに覗きこむように、庭園の好きな場所を行ったりきたり佇んだりするように、そんな普段はあまり意識しない「見る」「考える」ことから何か気づきが生まれたりしたらいいな、という想いを込めた展示構成を意図しています。しゃがんだり、目を凝らしてみたり、写真撮影も共有もご自由にどうぞ。しばし時間を忘れてごゆっくりお過ごしください。(本展企画・主催:&Form 公式インスタグラムより)

About:「Form」

スイス、イギリスを中心に欧州で長年活動していたデザインディレクターの丸山 新(&Form 代表)が主宰するグローバルデザインプラットフォーム。世界各国と日本の多様な価値観をデザイン的視点から紐解き、国内外へ双方向に発信することを主眼としている。
その第一弾として、世界に影響を与えるスイスのビジュアルコミュニケーションと、そのデザイン的思考にフォーカス。彼の地のクリエーターや教育機関、美術館など約20組への現地インタビューの映像や、日本初登場となるスイスのデザイナーたちの作品展示、共作したオリジナルグッズの販売、トークイベントなどを通じて、スイスのデザインの多様性、その背景にある教育や文化について紹介。これからの時代に必要とされる豊かな生き方へのヒントとなるような価値観なども多角的に伝える。
今後は、東京での展示の巡回展や、2021年以降もテーマ(フォーカスする国)を変え、継続して「Form」を展開する予定。

「Form #1: FormSWISS」イメージビジュアル

「Form #1: FormSWISS」

会期:2020年10月23日(金)〜11月3日(火)※但し、スパイラルでのポップアップ展を除く
DESIGNART公式ガイドページ
http://designart.jp/designarttokyo2020/exhibitor/formswiss/

会場:THINK OF THINGS(東京都渋谷区千駄ヶ谷3-62-1 / Google Map
営業時間:11:00-19:00(最終日のみ17:00まで)
定休:10月28日(水)
https://think-of-things.com/

会場:FormGALLERY(東京都渋谷区神宮前1-10-7-103 / Google Map
営業時間:11:00-19:00(最終日のみ17:00まで)
https://formtokyo.com/

会場:BOOK AND SONS(東京都目黒区鷹番2-13-3 / Google Map
営業時間:12:00-19:00(最終日のみ17:00まで)
定休:水曜
https://bookandsons.com/

ポップアップ展:MINA-TO(東京都港区南青山5-6-23 Spiral 1F / Google Map
会期:2020年10月30日(金)〜11月6日(金)
営業時間:11:00-20:00
https://www.spiral.co.jp/

&Form 公式ウェブサイト
http://andform.jp/

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン

「Form #1: FormSWISS」

COMPETITION & EVENT2020.10.25
中村竜治が3つの会場構成を手がけた、スイスのビジュアルコミュニケーションデザインを紹介する展示「Form #1: FormSWISS」
COMPETITION & EVENT2021.03.23

企画展「Form #1: FormSWISS」が神戸に巡回

東京開催に続き中村竜治氏が会場デザインを担当
COMPETITION & EVENT2022.10.19

中村竜治建築設計事務所が展示設計を担当

「Form #1: FormSWISS京都展」京都市内の2つのギャラリーにて開催

「DESIGNART TOKYO 2020」

COMPETITION & EVENT2020.10.23

「DESIGNART TOKYO 2020」本日スタート!

国内外のクリエイター・アーティスト、ブランドが多数出展
FEATURE2020.10.30

DESIGNART TOKYO 2020 レポート

新時代のホームオフィスに“声”で寄り添うAlexa
FEATURE2020.10.26

これからのスタンダードに!? 発明的な“ゲル”パビリオンができるまで

DESIGNART TOKYO インタビュー動画:青木昭夫&神谷修平

「DESIGNART TOKYO」アーカイブ

COMPETITION & EVENT2021.10.22

「DESIGNART TOKYO 2021」10/22開幕!

日本最大級の分散回遊型デザイン&アートフェスティバル
FEATURE2022.10.29

【会場レポート】DESIGNART TOKYO 2022

注目のクリエイターたちが競いあうデザインとアートの祭典を見逃すな!
  • TOP
  • COMPETITION & EVENT
  • 中村竜治建築設計事務所会場構成による「Form #1: FormSWISS」11/3まで【会場Report】
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ