2021年2月6日初掲、2月13日 会場写真+作家情報追記、4月24日 開催状況に関する追記
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大防止のため、スケジュールが変更される場合があります。最新の開催状況は、会場ウェブサイト・SNSなどで確認してください
建築家の青木淳氏(青木淳建築計画事務所 / ASに改組)がデザインを手がけ、大阪・御堂筋に昨年開業した〈ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋〉の5階に、アートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」が2021年2月10日にオープンしました(1枚目の画像・会場写真:JOAN MITCHELL / CARL ANDRE – FRAGMENTS OF A LANDSCAPE / Exhibition view at Espace Louis Vuitton Osaka, 2021 / Photo credits: © Keizo Kioku/Louis Vuitton)。
開館記念展は、アメリカを代表する2人のアーティストを紹介する「Fragments of a landscape(ある風景の断片)」展。
1950年代に画家としての活動をスタートさせ、第二次大戦後の抽象表現主義の旗手となったジョアン・ミッチェル(Joan Mitchell / 1925-)と、1970年代初めにミニマル・アート運動を牽引した彫刻家のカール・アンドレ(Carl Andre / 1935-)の作品が展示されます。
ジョアン・ミッチェル(1925-1992年)は、シカゴ美術館附属美術大学で学び、1948年に渡仏、1949年までパリに滞在しました。拠点とするニューヨークに戻ると、コンラッド・マルカ=レーリ、ウィレム・デ・クーニング、フランツ・クラインが設立した芸術家の集いの場「ザ・クラブ」(「8thストリート・クラブ」とも呼ばれる)の活動に参加。1953年にステイブル・ギャラリーで個展を開催して高く評価されました。
それから2年後、ミッチェルはニューヨークとパリを往き来する生活を送り、フランスでは北米出身のアーティストたち(シャーリー・ジャフィ、サム・フランシス、ノーマン・ブルーム、ソール・スタインバーグ、ジャン=ポール・リオペル)と親交を深めました。
1969年にクロード・モネが住んでいたことで知られるヴェトゥイユに居を構えると、豊かな色彩によって光に寄せる想いを表現しはじめ、その作風は、彩られた表面の細分化という特徴を帯び、ミッチェルは「抽象的印象派」と見なされるようになります。ただし、この呼称は、彼女の作品の骨格をなすダイナミックな対立──自然を忠実に表現したいという想いと、尊敬するファン・ゴッホから影響を受けた主観的で激烈な表現のパワーのぶつかり合い──を消し去るものでした。
1972年以降、ミッチェルは大型作品に取組むようになります。異彩を放つ作品の構造は、彼女特有の官能的な色使いが存分に発揮されることを可能にしました。1980年代初頭、才能の絶頂期を迎えたミッチェルは、今回展示される《Untitled》(1979年)や《Cypress》(1980年)に表れているように、明らかに風景画に回帰しています。晩年期の作品に見られる光と色が交互に繰り返される抽象的「モチーフ」は、彼女の筆遣いがますます自由になっていったことを示しています。
建設関係者が多い環境で生まれ育ったカール・アンドレ(1935年-)は、基礎的な素材を好んで扱い、それは前の世代が実践していた抽象表現主義への反応の表れとも言えます。
アンドレは、アメリカの画家フランク・ステラの影響を受け、独自のスタイルを確立しました。すなわち、素材そのものへの愛着、厳格な制作姿勢、象徴性の拒絶です。アンドレは早い時期から、彫刻に根源的な変化をもたらす試みに挑戦しました。それは、床や地面との関係の重視、ダイレクト・カービングの手法です。
素材は、彫刻を施すよりも未加工の状態のほうが興味深いとの信念を抱くようになると、ついには素材に手を加えることを全面的に放棄し、煉瓦や丸太や規格品である合成コンクリートブロック、金属板などをそのまま使うことを選択するにいたります。
彼の創作の原理原則は、形状、構造、場所の等価性です。アンドレ本人によると、彼の作品は周辺の 環境と切り離せぬ関係を結んでいて、作品自体に固有の意味があるわけではなく、作者が手を加えた痕跡は残っていません。
彼の最も有名な作品の1つは、地面に薄い金属板を置いたものであり、人々に上を歩いてもらうことで芸術作品の神聖視を打破することを意図しています。あらゆる物体と同じく、芸術作品も摩耗することがあり得る、摩耗すべきだ、との主張が込められています。
今回展示される《Draco》(1979-2008年)は、ウェスタンレッドシダー(ベイスギ)の材木を組み立てた作品であり、展示室の中央に設置されることで来場者の動きを妨げ、展示空間の構造を強調します。
今回、この2人のアーティストを並べて紹介することで、一見したところ背反する2つの芸術潮流──激烈な色使いによる自由な表現と、あるがままの素材で見せる幾何学的厳密さの奥深さが照らし出されます。2人の共通点は根本に迫るアプローチであり、これが作品の周囲に、そして作品と空間との間に緊張を生み出しています。
本展は、これまで未公開のフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)の所蔵作品を、世界各地のエスパス ルイ・ヴィトンで紹介する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として開催されます。
本展は、大阪のほか、東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウルの各都市を巡回する予定で、この国際的なプロジェクトを通じて、より多くの人々に所蔵作品に触れる機会を提供することを目指しているとのことです。(en)
会期:2021年2月10日(水)〜7月4日(日)
開場時間:12:00-20:00
休場日:店舗営業時間に準じる
※臨時休館:4月17日(土)〜30日(金)予定
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大防止のため、スケジュールが変更される場合があります。最新の開催状況は、会場ウェブサイト・SNSなどで確認してください
注.会場内の混雑防止のため、入場制限を実施する場合あり
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪(大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F)
入場料金:無料(予約不要)
エスパス ルイ・ヴィトン
https://www.espacelouisvuittontokyo.com/
ルイ・ヴィトン ジャパン プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000140.000060591.html