日本の建築シーンを牽引する、1960年以降生まれの建築家・35組による、力強く語る「かたち」を持ったプロジェクトを紹介する展覧会が、横浜にて1月12日より始まりました(主催:一般社団法人日本建築設計学会)。
本展を主催する日本建築設計学会(Architecture Design Association of Nippon: ADAN)は、2009年に始まった建築新人戦を運営してきた KASNET(Kansai Architecture School Network)を母体とし、さらなる拡張と活動の充実を目指して、2014年に一般社団法人化され、学会組織として設立された団体です(組織概要)。
会長を建築家の竹山 聖氏が務め、乾 久美子、隈 研吾氏、倉方俊輔氏、古谷誠章氏ほか49名が理事として名を連ねています。
本展は、ADAN主催、フランスの現代アート振興団体であるFRAC(FOND Regional D’ Art Comtemporain)との共催で、フランス・オルレアン地方のFrac Centre-Val de Loire(サントル=ヴァル・ド・ロワール)にて開催された展覧会「Quand la forme parle. Nouveaux courants architecturaux au Japon (1995-2020)」の日本凱旋展です。
同展覧会は、当初は2020年10月から2021年3月にかけて、サントル=ヴァル・ド・ロワールで開催される予定が、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で、その後の巡回展も含めてスケジュールが変更となっていました。
現在は、フランス・パリ日本文化会館に巡回中(会期:2021年11月24日~2022年2月19日)。展覧会のキュレーション、日仏会場ともに、建築評論家で建築史家の五十嵐太郎氏(東北大学大学院教授)が担当しました。
Exposition « Quand la forme parle. Nouveaux courants architecturaux au Japon (1995-2020) » from Frac Centre-Val de Loire on Vimeo.
#Exposition « Quand la forme parle. Nouveaux courants architecturaux au Japon (1995-2020) / Frac Centre-Val de Loire 2020年11月24日公開
Frac Centre-Val de Loire Webサイト
「Quand la Forme Parle(1995-2020)」概要
https://www.frac-centre.fr/expositions/dans-les-murs/quand-forme-parle/quand-forme-parle-1312.html
本展は、このフランスでの展覧会と同じ出展者によって、パリでの展覧会と並行して開催されます。
内容は更新され、昨年12月に神戸(会場:兵庫県立美術館)にて国内で初開催。今年1月12日より横浜に巡回しています(本展の会期終了後、京都に巡回予定)。
本展は、フランスを巡回した展覧会を再編したものであり、改めて日本の現代建築におけるかたちの可能性を問うことを目的とした。
日本では派手な造形が目立ったポストモダンの最盛期と空前の好景気が重なったために、1990年代の初頭にバブル経済が崩壊した後、強烈な形態が忌避され、むしろ周辺環境を読み込むデザインが注目された。さらに1995 年の阪神・淡路大震災を受けて、脱構築主義のデザインは不謹慎なものとみなされ、2011年の東日本大震災が発生した後、かたちよりも、コミュニティの関係が重視されるようになった。
だが、そもそも両者は対立するものなのだろうか?実際、独創的な形態をつくりながらも、ただ奇抜なオブジェをめざすわけではない、すぐれた建築は数多く存在する。コンテクストを読み込みながら、ときにはコミュニティにも関与していくかたちは成立するはずだ。今回の展覧 会では、以上の主旨にもとづき選んだ建築家35組を紹介する。彼/彼女ら はボストバブル期に活動を開始し、まだ30代の気鋭の若手を含む。
かたちは意図を内包した視覚言語である。もちろん、古典主義の建築も、要素の統辞論が言語になぞらえられ、ポストモダンの時代には、看板や過去 の意匠が発するメッセージに注目し、言語の意味論のように建築を記号としてとらえる考え方が流行した。しかし、現代の日本人建築家は、かたちのデザインによって人々のふるまいをうながし、新しい関係性をもたらす。さらに周辺環境との応答も通じて、かたちは語るだろう。本展では、各建築家にかたちをどう考えるかについての文章も提示してもらった。
本展のもうひとつの狙いは、海外に発信される日本建築展の枠組をズラすことである。
従来の展覧会は、東京の男性建築家による東京の作品ばかりだった。なるほど、戦後からバブル期の東京は、斬新なデザインの実験場だったが、現在は地方都市の状況がおもしろい。そこで本展は、東京中心に陥ることなく、環境が異なる日本各地の建築家による様々な実践の紹介も目的としている。また、昔は女性の建築家がめずらしい存在だったが、今は人数が増え、活躍 もめざましい。本展は35組の建築家のうち、1/3以上にあたる13組に女性が 入るのは、新しい傾向を反映したものだ。
なお、日本会場ではフランスの展示と構成を変え、サイズとしてはおおむねS・M・Lというふうに、ビルディングタイプとしては住宅から公共建築へ、という順番でプロジェクトを紹介している。五十嵐太郎(建築史家、東北大学教授、本展キュレーター)
出展者:竹口健太郎・山本麻子|蟻塚 学|芦澤竜一|千葉 学|工藤和美・堀場弘|遠藤克彦|遠藤秀平|畑友 洋|平田晃久|岩元真明・千種成題|乾 久美子|岩瀬涼子|光嶋裕介|久保秀朗・都島有美|前田主介|前田茂樹|みかんぐみ|宮 晶子|宮本佳明|百枝 優|永山祐子|中村拓志|西沢立衛|大西麻貴・百田有希|小原賢一・深川礼子|斎藤隆太郎|島田 陽|栗原健太郎・岩月美穂|菅原大輔|田根 剛|手塚貴晴・手塚由比|宇野 享|山下保博|米澤 隆|吉村真基
なお、本展は、ル・コルビュジエと彼のパリ事務所に在籍していた前川國男らが関与して1929年に改修された「アジール・フロッタン(Asile flottant)」の復活プロジェクトの一環として開催されます。
セーヌ川に係留され、1995年まで難民のための”浮かぶ避難所”として前川らが改修したこの船は、2018年2月にセーヌ川の増水で水没後。2021年に奇跡の浮上を遂げました。その保存に日本建築設計学会が関わっている、復活プロジェクトの展示もあわせて行われます。
会期:2022年1月12日(水)〜2月19日(土)
開場時間:11:00-19:00
会場:BankART Station
住所:横浜市西区みなとみらい5-1新高島駅B1F(Google Map)
入場料:700円
※会場ではCOVID-19対策を実施
キュレーション:五十嵐太郎
プロデュース:遠藤秀平
会場空間デザイン:竹口健太郎・山本麻子(アルファヴィル)
グラフィックデザイン:フジワキデザイン
コーディネーション:石坂美樹
協力:神奈川大学 曽我部昌史研究室
主催:一般社国法人日本建設計学会
共催:BankART 1929
シンポジウム ※終了
日時:2022年1月8日(土)23:00-25:00(フランス時間15:00-17:00)
トークイベント
開催日:2022年1月16日(日)、2月19日(土)予定(時間など詳細が決定次第、ADANのWebサイトほかにて発表)
会場:BankART Station併設カフェ
定員:先着順に受付30名
※展覧会入場料700円が必要
1月16日(日)16:00-
登壇者:五十嵐太郎、岩瀬諒子、遠藤秀平、久保秀朗、曽我部昌史
展覧会詳細・日本建築設計学会Webサイト
http://www.adan.or.jp/news/event/3483