COMPETITION & EVENT

【審査結果】KUKAN OF THE YEAR 2022

〈route to root - retracing the story of down. -〉〈おそいおそいおそい詩〉〈上勝ゼロ・ウェイストセンター〉の3作品が「日本空間デザイン賞 / 日本経済新聞社賞 2022」を受賞

一般社団法人日本空間デザイン協会(DSA)と 一般社団法人日本商環境デザイン協会(JCD)が共同で主催する日本空間デザイン賞の今年のグランプリ・KUKAN OF THE YEAR受賞作品が発表されました(以下、主催者発表順)。

日本空間デザイン賞 2022 KUKAN OF THE YEAR / 日本経済新聞社賞 2022

作品名:route to root – retracing the story of down.
受賞者:TAKT PROJECT 吉泉 聡

作品名:おそいおそいおそい詩
受賞者: 株式会社髙橋匡太 髙橋匡太

作品名:上勝ゼロ・ウェイストセンター
受賞者:中村拓志&NAP建築設計事務所 中村拓志

作品名:route to root – retracing the story of down.

route to root - retracing the story of down.

〈route to root – retracing the story of down.〉 撮影:大木大輔

受賞者:TAKT PROJECT 吉泉 聡
部門:Aグループ 01.エキシビジョン、プロモーション空間

作品名:おそいおそいおそい詩

おそいおそいおそい詩

〈おそいおそいおそい詩〉 撮影:下司悠太

受賞者: 株式会社髙橋匡太 髙橋匡太
部門:Aグループ 03.エンターテイメント&クリエイティブ・アート空間

作品名:上勝ゼロ・ウェイストセンター

上勝ゼロ・ウェイストセンター

〈上勝ゼロ・ウェイストセンター〉 撮影:藤井浩司(TOREAL)

受賞者:中村拓志&NAP建築設計事務所 中村拓志
部門:Cグループ 09.公共生活・コミュニケーション空間

グランプリ選出までの流れ

「日本空間デザイン賞」の審査は、「Longlist」と呼ばれる入選327作品の中から、厳正な2次審査を経て、最終・3次審査に進出する「Shortlist」が選ばれます。
応募の部門は、A・B・Cの3グループに計11のカテゴリーが設定され、この11部門ごとに金・銀・銅賞の上位3賞が選出されます。さらに、この金賞受賞作品の中から、グランプリ「KUKAN OF THE YEAR 2022 / 日本経済新聞社賞」が選出されます(このほかに「サステナブル空間賞」を選出)。

今年の入賞は135作品。この中から、8月27日におこなわれた3次・最終審査にて、銅賞13、銀賞12、金賞11の合計36作品が選出され、9月14日付けで「日本空間デザイン賞」公式ウェブサイト上で発表されています。

上記グランプリ以外の金賞受賞作品:〈松屋の地域共創 ×「青森 ねぶた」クリスマス2021〉〈HIROPPA〉〈The Moving Kitchen〉〈reload〉〈合宿所yutorie〉〈藤田美術館〉〈竹中工務店静岡営業所〉〈住倉〉

「Shortlist」詳細
https://kukan.design/award/

日本空間デザイン賞 2022 受賞式典

受賞式典の様子 Photo by HIROSHI TSUCHIDA

金賞受賞作品から選ばれる「KUKAN OF THE YEAR」は、10月21日に東京・五反田の東京デザインセンターにてセミクローズで行われた受賞式典の中で発表されました(前述)。

3次・最終審査員の1人である建築家のアストリッド・クライン氏(クライン ダイサム アーキテクツ)は、式典の中で今回の審査を振り返り、2020年から続く長いコロナ禍のため、空間のウェルビーイング(WellBeing)に対して人々の意識の高まりがみられること、またその重要性について見解を示しました。

アストリッド・クライン氏

アストリッド・クライン氏 Photo by HIROSHI TSUCHIDA

審査員 選評

※『年鑑日本の空間デザイン 2023』(六耀社、2022年12月発売予定)より一部抜粋(テキストは主催者提供)

〈route to root – retracing the story of down.〉

審査委員 上條昌宏(『AXIS』編集長)

「IoTを活用すれば、生産段階から最終の物流まで、ログをとったりトレーサビリティを確認したりすることが容易にできる昨今、このインスタレーションはさらに踏み込み、素材がどこから来て、どこへ向かうのかといったアパレル産業にとって欠かせない持続可能なプロセスを、幻想的なインスタレーションで見事に可視化する。
密度の高い一連の展示は、ダウンジャケットから遡り、自然の恵みをもたらすグース・ダックに至るまでのプロセスを1本の”ルート”で表現。薄暗い室内に小さなダウンボールをつなぎ合わせてつくられた緩やかな導線に導かれるようにして、ダウンにまつわるリサイクルや環境に配慮した加工の取り組みなどを追体験していく。ダウンの道筋を示すその情景は、ちょっとした人の動きなどに反応するインタラクティブ性も備える。ダウンの生産背景を伝えることは、同時にダウン衣料が抱える問題点を見る者に伝えることでもある。人の動きなどに反応する作品は、正しい知識を発信することで『人々とダウンの関係性を変化させる』ことを意図しているようにも思えた。
教科書的にプロセスの変遷や情報をたどるだけでもなく、見る者の目を新たな世界に見開かせる意味でも、刺激的で生々しい魅力を発散している展示は、まさに「未来へつながるダウンのルーツをたどる旅」という印象にピッタリだった。見知らぬ地への旅に出かけたような空間構成の魅力が、ダウンへの思いをいっそう募らせたのではないだろうか。」


〈おそいおそいおそい詩〉

審査委員 遠山正道(株式会社スマイルズ 代表取締役社長)

「日本空間デザイン賞とは、JCDとDSAが空間デザインに対して”与える”賞である。しかし本作は、われわれが気づきを”得る”賞になったと感ずる。すなわち、

・デザインされるべき物理的な空間は、ない
・空間が、文字あるいは文学によって成立している
・特定のデザイナーは不在だが、むしろ人の要素しかない
・費用対効果の指数があるならば、全応募作の中でもトップであろう
・日本建築学会賞では与えられ得ない

5年に一度のDocumenta15で提唱されたのは『Make Friends No Art』。権威ではない、1人ひとりのフラットなつながり。階級の権化のような欧米アートの世界最大の祭典においてすら、非中央集権のムードに満ちており、そのムードは他領域にも伝播されるだろう。
昨今の若者と対話をすると、安定を求めるその背景にはソーシャルマインドがデフォルト化し、マッチョな商業主義に嫌悪すら抱いているように感ずる。資金をもつビッグクライアントが著名デザイナーに依頼するリッチな空間のことよりも、一人ひとりの足元の幸福 や地球や全体や隣人のありさまに関心が向き、そしてそれに自らがどう関われるかを、リアルに求めているようだ。
市場を形成する生活者にも、生み出す側の内部にも、そのような若者がまもなく過半を占めることになる。2022という現在、そしてこれからに向けて、JCDとDSAはどういう”空間デザイン”を志向するのか。〈おそいおそいおそい詩〉は、1人ひとりのつながりと実行によって、今の足元からきっと先へ通じる一筋を照らしてくれた。ありがとう。」


〈上勝ゼロ・ウェイストセンター〉

審査員 東 利恵(東 環境・建築研究所代表、建築家)

「経済の成長期には、経済性、効率性、利便性などに目がゆきがちになり、都市化することが発展の理想のように思え、人々は都市に集中していった。しかし、20世紀末には日本経済の成長はペースを大きく落とし、また、一方で日本の人口が加速度的に減少してゆく。21世紀には社会全体の閉塞感や停滞感が蔓延している。このような状況下で地方の一町村であった上勝町は、ゼロ・ウェイスト、つまりゴミを生み出さないという決心を打ち出していた。地方の街にとっての豊かさなのか、目標と掲げるものは何なのか、都市にはできない方法を選択し、大きく舵を切ったのだ。その活動が上勝ゼロ・ウェイストセンターに結びついていくわけである。
今までであれば、嫌われていたゴミ収集場、処理場が新しい価値を生み出し、村民が運び込み、自分たちの手で分別し、処理をし、その過程で人のつながりを生み出す。小さなコミュニティの規模が今までにはなかった取り組みの実現を可能にしている。
建築家はこの取り組みをデザインするときに、ここで起きていることを理解し、この目的にあったハードの規模を大事にしながら、屋根下の空間とそれに囲まれた中庭によって居場所の快適さを大事にした空間の豊かさを生み出している。また、町の人がもち寄った建具などの素材をうまく建築空間に取り込むことによって、住人にとって身近な建築になり、プログラムを空間化した今にふさわしい秀逸な建築となった。上勝ゼロ・ウェイストセンターは地方のコミュニティの新しい方向の可能性を示唆するものとなっている。」

「KUKAN OF THE YEAR 2022」イベント

「KUKAN OF THE YEAR 2022」3作品の受賞者らによるトークセッションの様子 Photo by HIROSHI TSUCHIDA
左から、モデレーターを務めた飯島直樹氏(JCD理事)、吉泉 聡氏、髙橋匡太氏、中村拓志氏

受賞者コメント

受賞作品:〈route to root – retracing the story of down.〉
受賞者:TAKT PROJECT 吉泉 聡
「この度は、KUKAN OF THE YEARに選出いただき誠にありがとうございます。200平米に満たない小規模の展示であり、また、これまであまり着目されることがなかった、ダウンジャケットの中身である『ダウン素材』に関する展示ですが、その意図を丁寧に掬い上げていただいた審査員の皆さまに、この場をお借りして御礼申し上げます。
画面を通して情報を取得する事が簡易な時代ですが、だからこそ、空間を通して五感で伝わる事が一層意味を持つ時代だと思います。そういった体験をこれからもつくっていきたいと思います。」


受賞作品:〈おそいおそいおそい詩〉
受賞者:株式会社髙橋匡太 髙橋匡太

「全く望外の賞を頂きましたこと、この上なく嬉しく光栄です! 同時に空間デザイン賞の「懐の深さ」に尊敬の意を抱き、畏れ入りました次第です。
『色物』『奇策』『不意打ち』そう思われるのではないか? エントリーの際に一抹の不安が僕の頭を過ぎりました。しかし本人達は至って真摯に、 限られた予算の中で『コロナ禍の中で美術と詩に何ができるか?』を考えた結果の作品です。 それをもっと多くの人にメッセージを伝えたい思いで応募しました。
本作品はコロナ禍の中、計画・立案しましたが、何度も延期になり、開催すらも危ぶまれました。しかし閉塞感しかない日常生活の中、此処を往来する町の人々に元気になってほしい、少しでも『明日が楽しみ』だと感じて欲しい一心で実現しました。
僕は空間デザイナーではありませんが、公共空間に関わる1人の人間として、多くの方々に何かの気づきを感じてもらえる作品をこれからも作っていきたいと思います。この素晴らしい受賞の喜びを励みに明日も頑張ります! ありがとうございました。」


受賞作品:上勝ゼロ・ウェイストセンター
受賞者:中村拓志 & NAP建築設計事務所 中村 拓志
「大変名誉ある賞を頂き光栄です。徳島県上勝町に建つ〈ゼロ・ウェイストセンター〉は、45種のゴミ分別所やリサイクルショップ、ホテル、交流ホールが複合する環境配慮型施設です。センターに集まったゴミだけでなく、不足分は公募して集めたゴミで構成した建築は、ゴミが資源という価値を超えて、町の人々の思い出の集積となって迫ってきます。
この賞を励みに、持続可能な社会のための 空間的実践をさらに加速したいと考えています。」

2022年度の金賞以下の入賞作品については、「日本空間デザイン賞」公式ウェブサイトにて紹介されています。
今後、受賞者インタビューが掲載される予定です。また、受賞者によるオンラインセミナーも詳細が決まり次第、随時発表されます。

「日本空間デザイン賞」公式ウェブサイト
https://kukan.design/

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「日本空間デザイン賞 2022」募集要項

COMPETITION & EVENT2022.03.28

「日本空間デザイン賞 2022」4/1 応募受付開始

Shortlist受賞者はドイツ「iF Design Award 2023」への応募特典を付与

日本空間デザイン賞 / KUKAN OF THE YEAR アーカイブ

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