2023年3月19日初掲、5月14日会場写真追加、5月23日トークイベント情報追記
京都工芸繊維大学美術工芸資料館にて、日本近代建築と思想を読み解く2つの企画展が開催されます。会期はともに2023年3月22日から6月10日まで。
建築家・鬼頭 梓(1926-2008年)は東京・吉祥寺に生まれ、青年期を戦時下に送る。敗戦後の1946年に東京帝国大学(のちの東京大学)第一工学部建築学科に入学。1950年の卒業後は、前川國男(1905-1986年)が率いる前川國男建築設計事務所に入所。前川のもとでは、〈神奈川県立図書館・音楽堂〉(1954年)、〈世田谷区民会館・区庁舎〉(1959・1960年)などを担当した。
1964年に独立した後、鬼頭は〈東京経済大学図書館〉(1968年)、〈日野市立中央図書館〉(1973年)、〈洲本市立洲本図書館〉(1998年)など、全国各地に30を超える図書館を手がける。同時に、図書館の書架や家具もデザインし、民主主義が到来した時代に相応しく、誰もが等しく利用できる公共空間として、開架式の閲覧室を有する戦後型図書館建築のパイオニアとして大きな足跡を残した。
また、師の前川が尽力した、建築家の職能確立のために尽力し、新日本建築家協会会長を務めるなど社会的な活動も精力的に行なっている。受賞も数多く、設計した図書館などが評価され、日本建築学会賞(作品)、建築業協会賞、日本図書館協会建築賞優秀賞などを受賞している。
本展では、「生活の根拠地」としての戦後型図書館の地平を切り拓いた鬼頭の仕事とその建築思想について、設計原図、撮り下ろしの現況写真、模型などを通して紹介する(主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館|特別協力:金沢工業大学、NPO法人建築文化継承機構[JIA-KIT建築アーカイヴス]、前川建築設計事務所、建築ジャーナル)。
シンポジウム「鬼頭梓の建築から考える図書館の未来像」
日時:2023年6月10日(土)13:00-16:30
会場:京都工芸繊維大学 60周年記念館 1階記念ホール
タイムスケジュール(予定):
13:00-13:45 開会挨拶
並木誠士(京都工芸繊維大学美術工芸資料館館長)
基調講演:松隈 洋(神奈川大学教授、京都工芸繊維大学名誉教授)
展覧会紹介:山崎泰寛(京都工芸繊維大学教授)
13:45-15:30
レクチャー
1.湖東町立図書館(現・東近江市立湖東図書館)
江竜喜代子(東近江市立能登川図書館館長、前・湖東図書館館長)
2.日野市立中央図書館
島田潤一郎(夏葉社代表)
3.洲本市立洲本図書館
佐田祐一(建築家、鬼頭梓建築設計事務所OB)
※各図書館の展示模型製作に携わった学生による建築紹介も行う
15:30016:30
ディスカッション
料金:無料
聴講方法:要申し込み(会場定員に達した場合は締切)
申込締切:6月9日(金)
申込受付フォーム
https://www.kit.ac.jp/entry/view/index.php?id=225461
※アーカイブ配信予定あり
同大学附属図書館 YouTubeチャンネルにて2023年7月頃配信予定。
https://www.youtube.com/@user-be5dr9qw7r
問合せ:京都工芸繊維大学附属図書館(TEL:075-724-7185)
主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館 / 附属図書館
イベント告知ページ
https://www.lib.kit.ac.jp/tenji/#symposium2023
1937年に島根県に生まれ、2019年に没した長谷川 堯(はせがわ たかし)は、早稲田大学文学部で美術史を専攻したのち、建築評論家の道を歩んだ経歴の持ち主である。
同大学で、恩師となる美術評論家で建築評論家の草分けでもあった板垣鷹穂(1894-1966年)に出会い、板垣の指導のもと、近代建築史を卒業論文のテーマに選び、、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、ワルター・グロピウスの建築思想をテーマとする卒業論文をまとめた。板垣は長谷川の卒業論文を高く評価し、当時知られた建築雑誌『国際建築』を主宰する小山正和に伝えたことから、学生の卒業論文にもかかわらず同誌に連載され、長谷川は1960年の大学卒業と同時に建築評論家としてデビューを飾る。
だが、長谷川のその後の道のりは、文学部出身という異色の存在であったことなどから、決して順調なものではなかった。
それでも、精力的な執筆を続けた長谷川は、独自の視点から日本の近代建築史を検証し、1972年に代表作となる『神殿か獄舎か』(相模書房より初版)を著し、建築業界にセンセーショナルを巻きおこす。1975年に『都市廻廊』で毎日出版文化賞を受賞、1979年には『建築有情』でサントリー学芸賞を受賞している。
同書の刊行と前後して、長谷川は建築家の村野藤吾(1891-1984年)の知遇を得る。村野は、親子以上に年の離れた新進の長谷川に信頼を寄せ、対談相手として何度も指名した。村野の晩年に親交を深めていった長谷川は、建築家としての村野の再評価と、近代建築史の再考などに取り組み、2011年に『村野藤吾の建築 昭和・戦前』(鹿島出版会)を著すなど、今に続く村野の歴史的評価を決定づける数多くの仕事を残している。
本展では、長谷川と村野の交流と対話の軌跡をたどりながら、長谷川の眼差しと言葉を手がかりに、村野建築を振り返る。加えて、建築史家・建築評論家の長谷川 堯が成し遂げた多彩な仕事を通して、建築を社会が共有するために必要なものとは何かを考え、広く共有する(主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館、村野藤吾の設計研究会)。
会場:京都工芸繊維大学美術工芸資料館
所在地:京都府京都市左京区松ケ崎橋上町1(Google Map)
会期(共通):2023年3月22日(水)〜6月10日(土)
休館日(共通):日曜・祝日
開館時間(共通):10:00-17:00(入館は16:30まで)
入館料(共通):一般200円、大学生150円、高校生以下無料
※京都工芸繊維大学の学生・教職員は学生証・職員証の提示により無料
※大学コンソーシアム京都に加盟する大学の学生は学生証の提示により無料で入場できます。
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳または被爆者健康手帳の提示で本人と付添1名まで無料
※会場ではCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策を実施
京都工芸繊維大学美術工芸資料館 ウェブサイト
https://www.museum.kit.ac.jp/