COMPETITION & EVENT

「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

森美術館開館20周年記念展 会場レポート【読者プレゼントあり】

東京・六本木にある森美術館が2023年10月18日に開館してから20周年を迎えました。これを記念する展覧会「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が10月18日より始まりました。

本展の見どころ

世界共通の課題である環境危機に対し、現代アートがどのように向き合い、自分たちの問題としていかに意識が喚起されるのか。世界16カ国、34人のアーティストが出展した会場は、作品に込めたコンセプトや隠喩、素材、制作プロセスなどを読み解き、未来の可能性について考える場となっています。

ゲスト・キュレーターのバート・ウィンザー=タマキによる「第2章:土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」では、1950年代から1980年代に日本のアーティストが、当時社会問題となっていた公害や放射能汚染問題にどのように向き合ってきたかを紹介。昨今、世界各地で環境問題に関する展覧会が開催されているなかで、日本の文脈から本展を特徴づけるというユニークな試みです。

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

エミリヤ・シュカルヌリーテ〈時の矢〉2023年 ビデオ・インスタレーション 16分

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

ハンス・ハーケ〈海浜汚染の記念碑〉(〈無題〉1968-1972/2019年の部分) 1970年 デジタルCプリント
33.7×50.8cm
Courtesy: Paula Cooper Gallery, New York © Hans Haacke / Artists Rights Society (ARS), New York

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

鯉江良二〈土に還る(1)〉1971年 シェルベン(衛生陶器を粉末にしたもの)32×50×50cm 所蔵:常滑市(愛知) 撮影:怡土鉄夫

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

西條 茜〈果樹園〉2022年 陶 130×82×82 cm 展示風景:「Phantom Body」アートコートギャラリー(大阪)2022年 撮影:来田 猛

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

マルタ・アティエンサ〈漁民の日2022〉2022年 ビデオ、サイレント 45分44秒(ループ)
制作協力:ハン・ネフケンス財団、モンドリアン財団、シェーン・アケロイド
コミッション:第17回イスタンブール・ビエンナーレ
Courtesy: Silverlens, Manila/New York

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

イアン・チェン〈1000(サウザンド)の人生〉2023年 ライブ・シミュレーション、サウンド 永続
Courtesy: Pilar Corrias, London; Gladstone Gallery, New York
展示風景:「イアン・チェン:1000(サウザンド)の人生」ピラー・コリアス(ロンドン)、2023年 撮影:アンドレア・ロセッティ

本展では、前の展覧会の展示壁および壁パネルを一部再利用しているのも大きな特徴です。廃棄物の物量を極力抑えるとともに、塗装などの仕上げも省略し、環境に配慮した展示デザインとなっています。
展示室の間仕切りも、100%リサイクル可能な石膏ボードを採用しているほか、再生素材を活用した建材の使用、資材の再利用による廃棄物の削減など、省資源化に取り組んでいます。

『TECTURE MAG』では、10月17日に行われたメディア向け内覧会を取材、会場の様子を撮影しました(以下、Photo: TEAM TECTURE MAG)。

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第1章 全ては繋がっている|ニナ・カネルの新作〈マッスル・メモリー(5トン)〉のための展示空間

ニナ・カネルの本展に合わせた新作は、日本の養殖真珠を題材に制作されたもの。ホタテの貝殻が敷き詰められた上を来場者が歩くと粉砕される

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために会場風景

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第2章 土に還る 会場風景

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第2章 土に還る|藤田昭子〈出縄〉のためのマケット 1976-1977年頃 テラコッタ(左の展示台の作品)

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第3章 大いなる加速|モニラ・アルカディリ〈恨み言〉2023年

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第3章 大いなる加速|保良 雄〈fruiting body〉2023年
何億年もかけて形成される大理石と、ゴミを高温で溶解してできたスラグ(鉱滓)を並列したインスタレーション

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第3章 大いなる加速|左手の壁はダニエル・ターナーによる新作インスタレーション

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第4章 未来は私たちの中にある|ケイト・ニュービーによるインスタレーション〈ファイヤー!!!!!!!〉2023年

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第4章 未来は私たちの中にある|松澤 宥〈私の死(時間の中にのみ存在する絵画)〉1970年

森美術館開館20周年「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」会場写真

第4章 未来は私たちの中にある|アサド・ラザ〈木漏れ日〉2023年
故障していた森美術館の天窓のロールスクリーンの修理のために組まれた足場に着目したインスタレーション(展覧会終了後は建材として再利用される予定)

本展では、作家自身が来日して新作を制作できる環境も予め用意されました。日本でのリサーチに基づいて制作された新作群は、展示室のスペースの半分以上を占めます。海外からの作品輸送にかかる諸般のエネルギー削減を目指したのも、エコロジーをテーマに掲げた本展ならではといえます。

本展開催趣旨

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われています。この地球規模の環境危機は、諸工業先進国それぞれに特有かつ無数の事象や状況に端を発しているのではないか。本展はその問いから構想されました。

本展では、国内外のアーティスト34名による歴史的な作品から新作まで、多様な表現約100点を4つの章で紹介しています。

第1章「全ては繋がっている」では、環境や生態系と人間の活動が複雑に絡み合う現実に言及します。
第2章「土に還る」では、1950年から80年代の高度経済成長の裏で、環境汚染が問題となった日本で制作・発表されたアートを再検証し、環境問題を日本という立ち位置から見つめ直します。
第3章「大いなる加速」では、人類による過度な地球資源の開発の影響を明らかにすると同時に、ある種の「希望」も提示する作品を紹介します。
最終章である第4章「未来は私たちの中にある」では、アクティビズム、先住民の叡智、フェミニズム、AIや集合知(CI)、精神性(スピリチュアリティ)などさまざまな表現にみられる、最先端のテクノロジーと古来の技術の双方の考察をとおして、未来の可能性を描きます。

本展のタイトル「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」は、私たちとは誰か、地球環境は誰のものなのか、という問いかけです。人間中心主義的な視点のみならず、地球という惑星を大局的な視点から見渡せば、地球上にはいくつもの多様な生態系が存在することにあらためて気付くことでしょう。

本展では、環境問題をはじめとするさまざまな課題について、多様な視点で考えることを提案します。また輸送を最小限にし、可能な限り資源を再生利用するなどサステナブルな展覧会制作を通じて、現代アートやアーティストたちがどのように環境危機に関わり、また関わり得るのかについて思考を促し、美術館を対話が生まれる場とします。

森美術館開館20周年記念展
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

会期:2023年10月18日(水)~2024年3月31日(日) ※会期中無休
開館時間:10:00-22:00
※火曜のみ17:00まで(但し、2024年1月2日と3月19日は22:00まで)
※10月26日(木)は17:00まで
※最終入館は閉館30分前まで
会場:森美術館
所在地:東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ森タワー53階(Google Map
平日観覧料金:一般 2,000円、学生(高校・大学生)1,400円、子供(4歳~中学生)800円、シニア(65歳以上)1,700円
土・日曜・祝日観覧料金:一般 2,200円、学生(高校・大学生)1,500円、子供(4歳~中学生)900円、シニア(65歳以上)1,900円
※本展は事前予約制(日時指定券)を導入、専用オンラインサイトから「日時指定券」を購入してください
※当日に空きがある時間帯は予約なしで入館可

入館チケット専用オンラインサイト
https://visit.mam-tcv-macg-hills.com/

展覧会詳細
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/eco/

主催:森美術館
20周年記念協賛:大林組、清水建設、鹿島建設
協賛:麻生グループ、きんでん、トヨタ自動車、三菱電機ビルソリューションズ、斎久工業、三機工業、竹中工務店、ユニ・チャーム、雄電社、櫻井工業
協力:チヨダウーテ、シャンパーニュ ポメリー
助成:文化庁、スウェーデン芸術助成委員会、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
制作協力:エルメス財団、デルタ電子、関ヶ原石材、おだわら名工舎
企画:マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)、椿 玲子(森美術館キュレーター)
第2章ゲスト・キュレーター:バート・ウィンザー=タマキ(カリフォルニア大学アーバイン校美術史学科教授、美術史家)


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※応募者多数につき抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了(個々の問合せには対応しません)
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません

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