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みんなの建築大賞推薦委員会(委員⻑:五十嵐太郎)は2月15日、文化庁協力のもとで実施した「みんなの建築大賞2024」の大賞を〈学ぶ、学び舎〉(設計:VUILD)に、推薦委員会ベスト1を〈天神町place〉(設計:伊藤博之建築設計事務所)にそれぞれ授与することを発表しました。
大賞はX(旧Twitter)上での一般投票で最も多く「♡(いいね)」を獲得したもの、推薦委員会ベスト1は、「この建築がすごいベスト10」を選定する推薦委員会の場で最も評価の高かったものに与えられます。
なお、X上での一般投票の獲得票数トップ3は、上位から順に〈学ぶ、学び舎〉、〈天神町place〉、〈花重リノベーション〉(設計:MARU。architecture)でした。
Top image: photo by Japan-Architects Magazine
受賞作である東京学芸大学(東京都小金井市)の〈学ぶ、学び舎〉は、スタートアップ支援などを手掛けるMistletoe(ミスルトウ、孫泰蔵代表)と東京学芸大学が2019年から本格始動したプロジェクト「Explayground(エクスプレイグラウンド)」の拠点で、VUILDが設計を担当。
人が運べる大きさの木材パーツを3D木材加工機で切り出し、コンクリート躯体の打ち込み型枠(コンクリート打設後もそのまま仕上げとする型枠)として使用。木材パーツは1000以上あり、すべて形が異なる。葉脈のようなひだ(梁)は、全体の強度を高めるために導かれた形状。
〈学ぶ、学び舎〉
所在地:東京都小金井市貫井北町4丁目750-2
発注者:MistletoeJapan
設計者:VUILD
設計協力者:佐藤淳構造設計事務所(構造)、Arup(設備)
施工者:アトリエ海
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上1階
延べ面積:295.90m²
施工期間:2022年9月-2023年4月
秋吉浩気 | Koki Akiyoshi
VUILD(ヴィルド)代表取締役CEO。1988年大阪府生まれ。芝浦工業大学工学部建築学科卒業後、慶応義塾大学大学院政策メディア研究科でデジタルファブリケーションを専攻。2017年に建築系スタートアップのVUILD(神奈川県川崎市)を創業。工作機械と3次元デザインツールを組み合わせた木工のデジタルファブリケーション分野を切り開いている。秋吉氏は起業家であると同時に、「建築家/メタアーキテクト」を名乗り、「建築の⺠主化」を目指す。設計した主な建築物に〈まれびとの家〉(2019年竣工、2020年度グッドデザイン賞金賞)、〈琲庵〉(2021年)、〈小豆島TheGATELOUNGE〉(2023年)などがある。著作に『メタアーキテクト──次世代のための建築』(2022年、スペルプラーツ刊)。
慶応義塾大学大学院時代に、米国で1995年に生まれた3D木材加工機「ShopBot(ショップボット)」と出会い、木工技術を変える大きな可能性を感じる。一方で、唯一無二の「作品」をつくろうとする既存の建築家像に疑問を抱いていたため、供給側・需要側の双方で「開かれた木工技術」を実現すれば「建築の⺠主化」につながると考えるようになる。連続起業家の孫泰蔵氏らに背中を押され、29歳でVUILDを創業。3D木材加工機「ShopBot」の販売、設計と加工を結ぶクラウドサービス「EMARF(エマーフ)」の提供、自分好みの家をアプリ上でカスタマイズし注文できるサービス「NESTING」の提供などを行う。それらと並行して、一級建築士事務所としての建築物の設計や施工も行う。
〈天神町place〉は東京・湯島の住宅街にある賃貸集合住宅。3方向を高層建物に囲まれた旗竿敷地に、中庭を囲む自由曲線の平面計画により、計35戸の各住戸が異なる魅力を享受できるように計画された。2023年夏に数日間行われた関係者見学会では、SNS上で見学者の感嘆の声が広く拡散された。
〈天神町place〉
所在地:東京都文京区湯島3丁目
設計者:伊藤博之建築設計事務所
設計協力者:多田脩二構造設計事務所(構造)、坂井初構造設計事務所(構造)、テーテンス事務所(機械設備)、EOSplus(電気設備)
施工者:サンユー建設
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地下1階・地上8階
延べ面積:2448.55m²
施工期間:2021年6月-2023年8月
伊藤博之 | Hiroyuki Ito
1970年埼玉県生まれ。1993年東京大学工学部建築学科卒業。1995年同大学大学院工学系研究科修士課程修了。1995-1998年日建設計勤務。1998年O.F.D.A共同設立。1999年伊藤博之建築設計事務所設立。2019年より工学院大学教授。代表作に〈シモキタハウス〉(2010年)、〈GRID〉(2011年)、〈Hotel & ResidenceRoppongi〉(2012年)、〈BLOOM〉(2014年)、〈辰⺒アパートメントハウス〉(2016年)、〈ウエハラノイエ〉(2018年)〈三組坂flat〉(2019年)、〈PRISMInnOgu〉(2022年)など。
日本最大の設計事務所である日建設計に入社するも、27歳で独立。きっかけは、友人の父親が住宅の設計を依頼してきたことだった。その後、個人住宅や集合住宅、オフィスビル、ホテル、インテリアデザインなどを中心に設計活動を展開。特に集合住宅では、専門家をうならせる大胆な発想と緻密な裏付けによる佳作が多い。
「みんなの建築大賞」は、建築を伝える立場のプロ約30人(推薦委員会)が、一般投票をまじえて選定する新たな建築アワードです。第一段階として推薦委員会が2023年中に完成・発表された建築の中から「世の中に向けて熱く伝えたい建築」10件を選び、これを「この建築がすごいベスト10」として発表。その10件を「X」(旧Twitter)上に掲載し、1月29日- 2月11日の投票期間に、「いいね」数が最も多かったものを「みんなの建築大賞」に選出しました。賞の主旨に賛同し、文化庁が広報に協力しています。
第1段階で推薦委員会が選出した「2024この建築がすごいベスト10」は下記でした(五十音順、建築名の後は主たる設計者名)。
【この建築がすごいベスト10】
1)熊本地震震災ミュージアムKIOKU / 大西麻貴+百田有希 / o+h・産紘設計
2)52間の縁側 / 山﨑健太郎デザインワークショップ
3)後藤邸 / 後藤武+後藤千恵 / 後藤武建築設計事務所
4)SIMOSE / 坂茂建築設計
5)太宰府天満宮仮殿 / 藤本壮介建築設計事務所
6)地中図書館 / 中村拓志&NAP建築設計事務所
7)天神町place / 伊藤博之建築設計事務所
8)庭の床福武トレスFギャラリー / 武井誠+鍋島千恵 / TNA
9)花重リノベーション / MARU。Architecture
10)学ぶ、学び舎 / VUILD
【受賞した2作品以外の8作品】
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The Executive Office of “Japan Architecture Award—Architecture Awards for Everyone—” today announced that The LEARNING ARCHITECTURE FOR LEARNERS (on Tokyo Gakugei University campus), designed and built by VUILD (President and CEO: Koki Akiyoshi), won the Grand Prize, selected based on public votes, in 2024 “Japan Architecture Award—Architecture Awards for Everyone—,” presented by the “Japan Architecture Award—Architecture Awards for Everyone—” Nomination Committee (Chairman: Taro Igarashi) with the cooperation of the Agency for Cultural Affairs, Government of Japan.
The Nomination Committee’s Top Selection is awarded to Tenjincho place (an apartment building in Yushima, Tokyo, designed by Hiroyuki Ito Architects), which received the highest evaluation during the selection process of the shortlisted works.
“Japan Architecture Award—Architecture Awards for Everyone—” is a new architectural award selected by a nomination committee, consisting of about 30 professionals committed to communicating architecture to the general public, and popular vote. In the first stage, the nomination committee selected 10 architectural works, completed or announced in 2023, that they are “passionate about communicating to the world” and announced them as the Top 10 Greatest Architectural Works. The 10 entries were posted on X (formerly Twitter). The entry that received the most “likes” during the voting period from January 29 to February 11 was selected as the Grand Prize. The award’s objective is approved by the Agency for Cultural Affairs, which supports public relations activities.
The following lists the 2024 Top 10 Greatest Architectural Works, selected by the nomination committee in the first stage (in the order of the Japanese syllabary, the work titles are followed by the names of primary architects)
Top 10 Greatest Architectural Works
1) Kumamoto Earthquake Museum Exhibition Hall KIOKU / onishimaki+hyakudayuki architects + SANKO SEKKEI
2) Long house with an engawa / Yamazaki Kentaro Design Workshop
3) Goto Residence / Takeshi Goto + Chie Goto / takeshi goto architect & associates
4) SIMOSE / Shigeru Ban Architects
5) Temporary hall for the Dazaifu Tenmangu Shrine / sou fujimoto architects
6) Library in the Earth / Hiroshi Nakamura & NAP
7) Tenjincho place / Hiroyuki Ito Architects
8) Floors of garden – FUKUTAKE TRES F GALLERY / Makoto Takei + Chie Nabeshima / TNA
9) Hanaju Renovation / MARU. architecture
10) The LEARNING ARCHITECTURE FOR LEARNERS / VUILD
For more information about the final results, visit the following websites:
TECTURE MAG (Japanese / English): https://mag.tecture.jp/event/20240215-106517/
To read the comment from the committee’s chairman, Taro Igarashi, and to learn about all works nominated by the committee members and the selection process, visit the following websites. (Japanese only)
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