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ミース建築をY-GSA学生が読み解く企画展示が開幕、3/3まで

[Report]東京都庭園美術館 ランドスケープをつくる―― IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

2024年2月17日初掲、2月18日 シカゴ美術館が公開しているIITキャンパスに関する動画をシェア、2月21日出展者(学生15名)の氏名を追記

建築家の妹島和世氏(横浜国立大学名誉教授)が2022年(令和4)年7月1日付けで新館長に就任した東京都庭園美術館の敷地内、正門横の展⽰スペースにて、Y-GSA(横浜国立大学大学院 建築都市スクール)[*]の学生たちの研究成果を披露した企画展示:ランドスケープをつくる――IITキャンパス/クラウンホール再読「部分と全体」が2月16日より開催されています。

企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

同スペースにおける「ランドスケープをつくる」と題したテーマ展示は、今回で5回目。Y-GSAの企画としては、2022年12月上旬から翌年1月末にかけて開催された「スカイハウス再読」以来となります。

本展は、Y-GSAのプロフェッサーアーキテクト(教授)を2022年3月末で退官し、現在は名誉教授である妹島氏が中心となって進められているワークショップの成果を発表するもので、展覧会として披露することまでがミッションとなっています。

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今回の研究対象は、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe|1886-1969|以下:ミースと略)が米国・シカゴにあるイリノイ工科大学(IIT: Illinois Institute of Technology)キャンパスで設計した、当時としては画期的な大スパンを実現した建築学棟〈クラウンホール〉です。

課題に取り組んだY-GSAの学生たちは、渡米して実際にIITキャンパスを見学しているとのこと。

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

画面奥:SPF材とシナベニヤで学生が製作したイリノイ工科大学キャンパス模型(S=1/500) Photo: TEAM TECTURE MAG

〈クラウンホール〉誕生の背景

ドイツに生まれ、ドイツおよびヨーロッパを代表する建築家の1人であったミースですが、アドルフ・ヒトラー率いるナチス党(国民社会主義ドイツ労働者党)の台頭に伴い、校長を務めていたバウハウスが閉鎖に追い込まれ、1937年には自身も米国への亡命を余儀なくされます(1944年にアメリカ市民権を獲得)。

同時代にミースが米国で手がけたプロジェクト例

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1938年から1958年までの20年間、招かれたイリノイ工科大学(当時名称:アーマー大学)で建築学科の主任教授を務めたミースは、キャンパス内に20棟の施設を設計しました。そのうちの1つが、本展で取り上げる〈クラウンホール〉。ミースが「我々の行った最も明快な構造であり、我々の哲学を表現する最良のものである」と語っている、彼の代表作の1つです。

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

〈クラウンホール〉S=1/30模型 Photo: TEAM TECTURE MAG

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

〈クラウンホール〉は、トイレなど壁で仕切る必要がある小室が地下空間にまとめられ、地上階は柱なしの大空間となっている Photo: TEAM TECTURE MAG

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

俯瞰により、建物の外に出した4つの門型フレームで天井スラブを吊り、1階床スラブは地下の鉄筋コンクリート柱で支えていることがわかりやすい展示 Photo: TEAM TECTURE MAG

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

構造、納まり、マテリアル(物質)に関してまとめた展示 Photo: TEAM TECTURE MAG

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

IITキャンパスでミースが手がけた20棟の配置について考察した展示

キャンパスのマスタープランもミースが構想

また、ミースはIITキャンパスのマスタープラン構想から参画しており、段階的な用地買収によるキャンパス計画が行われた結果、キャンパスが周辺の街に溶け込み、周辺地域を含めて良好な環境を形成しているとのこと。


#The Art Institute of Chicago(シカゴ美術館)YouTube:「ミース・ファン・デル・ローエとシカゴのイリノイ工科大学に関する動画」(2017/09/28)

 

本展示は、クラウンホールとIITキャンパスを「部分と全体」という視点から読み解くものです。縮尺1/500のキャンパス模型と、クラウンホールの1/30模型を中心に、「都市」「建築」「もの」というさまざまなスケールを横断しながら、建築の集まりがキャンパスや都市という全体を構成し、ものの集まりが建築という全体をつくるという、ミースの一貫した思想を紹介しています。
会期は3月3日まで。観覧・入場無料。

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

展示スペースに隣接した建物の奥に、チーズ専門店チーズ専門店(フェルミエ白金台)が今年1月にオープン。立食式のカフェスペースでワインやコーヒー、フードメニューで味わいながら、ミースの模型を眺めることができる Photo: TEAM TECTURE MAG

Y-GSA企画展示「IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」

無料で利用できるエリア(美術館 正門横)の展示スペース エントランス(左奥がチーズ専門店 フェルミエ白金台) Photo: TEAM TECTURE MAG

ランドスケープをつくる――IITキャンパス / クラウンホール再読「部分と全体」開催概要

会期:2024年2月16日(金)〜3月3日(日)
会場:東京都庭園美術館 正門横スペース
所在地:東京都港区白金台5丁目21-9(Google Map
休館日:月曜(※美術館公休日に準じる。月曜が祝日の場合は開館し、翌日休館)
主催:東京都庭園美術館、Fermier
企画:横浜国立大学大学院 建築都市スクールY-GSA
指導教官:妹島和世、西沢立衛、富永 讓、石飛 亮、玉田 誠
出展者(計15名):洪スンウ、境野廉、佐藤翔人、小宮田麻理、小野誠治、香川唯、清水康平、石川泰成、榊真希、吉武洋輔、研谷航輝、物部果穂、黄鵬飛、陳宇澤、前田大貴
問合先:東京都庭園美術館

イベント詳細
https://www.teien-art-museum.ne.jp/event/230216/


*.Y-GSA: Yokohama Graduate School of Architectureの略称。建築家を養成する日本で唯一の大学院として2007年に創設(横浜国立大学大学院 都市イノベーション学府・建築都市文化専攻 建築都市デザインコース)。スタジオ制の教育方式を採用し、少人数制の教育により、濃密な設計教育を行っている。スタジオは4つ設置され、4人の建築家(西沢立衛、乾久美子、藤原徹平、大西麻貴)の教授陣を中心に組織されている。
http://y-gsa.jp/about

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