東京・神宮前のワタリウム美術館にて、中国で業余建築工作室(アマチュア・アーキテクチャー・スタジオ)を率いる、建築家の王澍(ワン・シュウ)と陸文宇(ルー・ウェンユー)の展覧会が12月4日より開催されます。
開幕翌日の12月5日には、日本の建築家も登壇するシンポジウム「建築すなわち庭」が日本女子大学 成瀬記念講堂にて予定されています(要申込)。
ワン・シュウは2012年に中国大陸出身の建築家として初めてプリツカー賞を受賞、来年の2027年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合キュレーターを務める、中国を代表する建築家のひとりです。本展は、1997年にスタジオを共同設立し、主宰するルー・ウェンユーとともに歩んできたこれまでの活動について、「庭」をテーマとしつつ総覧する、日本では初の本格展となります。
出展者プロフィール
ワン・シュウ(王澍 / Wang Shu)
建築家。1963年生まれ。南京工学院(現・東南大学)を卒業後、同大学院修士課程を修了。2000年に上海同済大学大学院博士課程を修了。現在は中国美術学院建築芸術学院院長・教授。1997年にアマチュア・アーキテクチャー・スタジオ(業余建築工作室)を中国浙江省杭州市に設立、ルー・ウェンユーと共同主宰。ルー・ウェンユー(陸文宇 / Lu Wenyu)
建築家。1967年生まれ。南京工学院卒業。現在は中国美術学院建築芸術学院教授。1997年にアマチュア・アーキテクチャー・スタジオ(業余建築工作室)を中国浙江省杭州市に設立、ワン・シュウと共同主宰。2024年より英国王立建築アカデミー国際賞審査委員長を務める。ポートレート © I.Mathie
ワンとルーが主宰するスタジオにつけられた「アマチュア」には、巨大な設計組織や市場の速度に従うのではなく、伝統的文人のように、自らの「内的な基準」に従って建築を考えるという批評的な態度が込められている[*]。
これまで彼らは、中国の伝統的な園林、山水画、詩文、工芸、そして各地の土地に根ざした素材や技術を参照しながら、建築と自然、古さと新しさ、素材と時間、形態と空間の新たな可能性を探究している。
主な建築作品として、中国美術学院象山キャンパス、寧波博物館、杭州中山路保存改修計画、文村リノベーション、富春山館、臨安博物館、杭州国家版本館などがあり、著作に『設計的開始』、『造房子』(邦訳『家をつくる』)がある(ともに著者はワン・シュウ)。
これまでの主な受賞に、エーリッヒ・シェリング建築賞(2010年)、フランス建築アカデミー金賞(2011年)があり、2012年にはワン・シュウが中国大陸出身の建築家として初めてプリツカー賞を受賞している。*編集部註:2氏によるこの態度のあらわれとして、独自のドメインは保有しているものの、事務所のウェブサイトの運営には消極的であり、現在は非公開となっている
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中国美術学院象山キャンパス[第2期](2007年竣工、浙江省杭州市、延床面積80,000m²) 撮影:富井雄太郎
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中国美術学院象山キャンパス[第2期](2007年竣工、浙江省杭州市、延床面積80,000m²) 撮影:富井雄太郎

寧波博物館(2008年竣工、浙江省寧波市)、延床面積 30,000m²) 撮影:富井雄太郎
本展について
ワン・シュウとルー・ウェンユーは、1997年に中国・杭州でアマチュア・アーキテクチャー・スタジオ(業余建築工作室)を設立して以来、急速な都市化と経済成長が進む現代中国において、独自の建築実践を続けてきました。
彼らが掲げる「建築すなわち庭(建築即園林)」という考え方は、中国の伝統的な庭園である「園林」への深い洞察から生まれたものです。園林とは、木、石、水、橋、亭などの要素が組み合わされ、自然物と人工物が溶け合うことによって、ひとつの世界を立ち上げる空間です。それは、ありのままの自然ではなく、自然と人間の想像力が交わることで生まれる、もうひとつの環境でもあります。ワンとルーは、この文人的な庭の思想を現代建築へと引き受けながら、園林、山水画、詩文、工芸、そして土地に根ざした素材や技術を手がかりに、建築の新しい可能性を切り拓いてきました。解体された村落から集められた瓦やレンガ、土、木、竹といった素材は、彼らの建築において単なるリサイクル材ではありません。それらは、失われつつある土地の記憶を呼び覚まし、新しい都市生活のなかに、別の時間を流れ込ませるための重要な媒体です。
本展では、原寸モックアップ、図面、模型、スケッチ、映像、写真、そして今回新たに設計・施工される茶室などを通じて、自然と人工、素材と身体、記憶と未来が交わる彼らの建築世界を紹介します。ワタリウム美術館の展示空間をひとつの「庭」として歩きながら、時間をかけて成熟してきた彼らの建築の魅力を体感する展覧会です。(ワタリウム美術館 プレスリリースより)太湖洞(たいことう):中国伝統庭園(園林)の太湖石の奇岩をイメージしてファサードに穿たれる自由な開口 撮影:富井雄太郎
瓦爿壁(わーぱんへき):解体された集落から廃棄されたレンガや瓦を集め再組積して作られるファサード
庭をつくることは、私たちが今日慣れ親しんでいる建築学とはまったく異なる、もうひとつの建築のあり方を示している。
それはきわめて土着的であり、同時にきわめて精神的な建築活動である。ワン・シュウ
本展では、ワタリウム美術館の3層にわたる立体的な展示空間を活かし、鑑賞者が「庭」を散策するように、さまざまなスケールを横断しながら、ワン・シュウとルー・ウェンユーの建築を体感できる展示となります(会場構成:フジワラテッペイアーキテクツラボ)。
展示は主に以下4つの要素で構成されます。
ワンとルーの建築は、手触りに富む物質性と、中国の伝統建築を現代的に読み替えた大胆な構法によって特徴づけられます。本展では、彼らの建築作品に用いられてきた木架構、竹や土の壁の原寸モックアップを展示します。写真や図面だけでは伝わりにくい素材の重さ、粗さ、温度を、身体的な距離で体験することができます。また、多彩なマテリアル・パレットとしての「材料板」も展示し、瓦、レンガ、土、木、竹などが、どのように建築の表情と空間をつくり出しているのかを紹介します。
ワンとルーは、手作業による膨大なスタディを通じて建築を構想してきました。本展では、完成した建築図面に加え、構想の初期段階に描かれたスケッチやコンセプト模型を紹介します。建築がどのように考えられ、「実験」され、時間をかけて形になっていくのか。その思考の過程をたどります。
![業余建築工作室(アマチュア・アーキテクチャー・スタジオ)中国美術学院象山キャンパス[第2期]ドローイング(2014)](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2026/10/29130753/20261029amateur-arvhitecture-studio-ex_press05.jpeg)
ドローイング 中国美術学院象山キャンパス[第2期](2005年、64.9X22.8cm、紙に鉛筆)

ドローイング 文村リノベーション(2014年、42X29.7cm、紙に鉛筆)
ワンとルーの建築は、目まぐるしく変化する現代中国の時間とは異なる、ゆっくりとした時間を生み出します。その独特な時間性を伝える映像と写真資料を展示します。なお、作品写真の多くは本展のために新たに撮影されており、展覧会の開幕に合わせて刊行される作品集にも掲載予定です。

文村リノベーション(2016年竣工、浙江省杭州市、延床面積28,400m²) 撮影:富井雄太郎
彼らの活動拠点である浙江省杭州市は、龍井茶の産地として知られ、南宋時代からの茶文化を育んできた土地でもあります。本展では、4階展示室に、竹や木材を用いたプレファブ・ユニットによって構成される本展オリジナルの現代茶室を設けます。中国茶室本来の目的である“リラックスする場所”として来館者に開放されるように計画されます。

中国国家版本館杭州分館(2023年竣工、浙江省杭州市、延床面積 103,100m²) 撮影:富井雄太郎
会期:2026年12月4日(金)〜2027年月28日[日]
会場:ワタリウム美術館
所在地:東京都渋谷区神宮前3-7-6(Google Map)
休館日:月曜(1月11日・1月22日は開館)、12月31日〜1月4日
開館時間:11:00-19:00
入館料:大人 1,500円 / 大人ペア 2,600円 / 学生(25歳以下)・高校生・70歳以上・身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の提示者および介助者1名まで 1,300円 / 小・中学生 500円
企画:ワタリウム美術館
主催:ワン・シュウ+ルー・ウェンユー建築展実行委員会
キュレーション:ワン・シュウ、ルー・ウェンユー、助川 剛、市川紘司、ワタリウム美術館
会場構成:フジワラテッペイアーキテクツラボ
作品集制作:millegraph(ミルグラフ)
協力:アマチュア・アーキテクチャー・スタジオ、中国美術学院建築芸術学院
特別協力:中国国際航空、カセイ物産
助成:公益財団法人窓研究所、公益財団法人朝日新聞文化財団
後援:外務省、日本建築学会、日本建築家協会、在日本中華人民共和国大使館
ワタリウム美術館 ウェブサイト
http://www.watarium.co.jp
シンポジウム「建築すなわち庭」
日時:2026年12月5日(土)13:00-16:30
会場:日本女子大学 成瀬記念講堂
所在地:東京都文京区目白台2-8-1 日本女子大学 目白キャンパス内(Google Map)
参加費(税込):3,800円(ワタリウム美術館サポート会員・アートパス会員は割引あり)
参加方法:要申込、下記イベント詳細ページまたはワタリウム1F受付にて受付(定員に達し次第、終了)
タイムスケジュール
第1部 13:00-
基調講演「ワン・シュウ+ルー・ウェンユーの建築」
登壇者:ワン・シュウ、ルー・ウェンユー
第2部 15:00-
トークディスカッション「建築すなわち庭」
登壇者:妹島和世(建築家)、隈研吾(建築家)、ワン・シュウ、ルー・ウェンユー
進行役:藤原徹平(建築家)
注意事項
・使用言語:第1部は中国語、第2部は中国語と日本語(中日同時通訳の音声はZoomアプリにて配信、同時通訳を利用する場合はスマートフォンとイヤホンを持参[会場での機器類貸し出しなし])
・見学会:第2部終了後、日本女子大学 図書館・青蘭館・120年館(外観のみ)・杏彩館(いずれも設計:妹島和世)の特別見学ツアーあり。シンポジウム参加者はツアー入退場自由で参加可能(16:40-17:30予定)
・中学生以下参加不可
シンポジウム「建築すなわち庭」詳細ページ
https://watarium.base.shop/p/00023
作品集『ワン・シュウ+ルー・ウェンユー作品集|建築すなわち庭(仮題)』
本展の開催を記念して刊行される、ワン・シュウとルー・ウェンユーの最初期から最新作までを総覧できる、初の作品集
対話:ワン・シュウ+ルー・ウェンユー × 妹島和世
解説:市川紘司
発行:millegraph
判型:224×297mm
言語:日本語・英語
刊行時期:2026年12月