ワークスペースのあり方を問うオフィスがオープン
働き方改革、そしてCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響が加わり、ワークスペースのあり方が大きな関心事となっている。
個人が仕事内容に合わせて最も生産性の高い場所や時間、相手を選ぶ働き方を指す「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」という言葉も一般的になってきた。
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本記事では、これからの働き方を予期させるオフィス〈CIC Tokyo〉のオープニングイベントの様子と、設計にあたった小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所)がオフィスの設計ポイントを解説する動画をお届けする。
Movie & Photographs: toha(特記をのぞく)
〈CIC Tokyo〉の設計意図を小堀哲夫氏がプレゼンテーション
オープニングイベントが開催されたのは、2020.10.01の都民の日。
Withコロナ時代の新しい試みとして、リアルとオンラインで同時開催された。
CIC Japan ジェネラルマネージャーの井筒省吾氏による開会挨拶、CIC Japan 会長の梅澤高明氏によるプレゼンテーションのほか、来賓として招待された平将明氏(前・内閣府副大臣)や小池百合子氏(東京都知事)の挨拶がなされた。
▲井筒省吾氏(CIC Japan ジェネラルマネージャー) Photo provided by CIC Japan
▲梅澤高明氏(CIC Japan会長)と小池百合子知事(右)
そして〈CIC Tokyo〉の設計を担当した小堀氏も、プレゼンテーションに登壇して設計意図を説明。
▲小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所)Photo provided by CIC Japan
▲CIC Japan による配信収録動画(外部リンクの新規タブが開きます)。小堀氏のレクチャーは 41:00 – 50:10 に収録
生命体のようなオフィスを実現するボロノイ・グリッド
小堀氏は〈CIC Tokyo〉が入る虎ノ門ヒルズビジネスタワーの立地特性や江戸時代から続く都市構造を読み解き、「新旧が融合して多様性を生み出す」をコンセプトにしたことを説明。
細胞(CELL)が分裂・結合していく生命体のようにオフィスの姿を描き、さまざまなかたちのオフィス空間をつくるために「ボロノイ・グリッド」を導き出した。
▲オフィスの模型。ボロノイ・グリッドで大小の個室が区切られながら連続している
人工的なグリッドに対して、ボロノイは有機的な連続性をもち、互いが影響し合いながら全体を構成する。
小堀氏は、オフィスの大小・多数の部屋がすべて多様なまま存在する美しさを、ボロノイ・グリッドを適用しながら実現した。
2フロアにわたる〈CIC Tokyo〉の中央部分には、上下階を階段でつなぐ「ベンチャーカフェ」を設置。今回のカンファレンスなどが行われるスペースとして機能する。
▲「ベンチャーカフェ」は、上下のフロアを一部で抜いた開放的なエリア。イベント時には階段が客席にもなる (Photograph: Takahiro Arai)
そして163もの個室が有機的に連続し、見通しの効かない曲がりながら続く廊下には、溜まり場となる場所に「ROJI CORNER(ロジ・コーナー)」を設置。
▲大小のオフィスをつなぐ通路「ROJI」の交差点にある「ROJI CORNER」
この様子は、小堀氏が現場で解説する動画を見ていただきたい。
「全体でみんなで打ち合わせをすることもできるし、1人でこもりたい場合は隠して閉じこもることもできる。半オープンなかたちで居場所をつくりました」と小堀氏は語る。
ボロノイ・グリッドの空間にフィットする「ドーナツデスク」
そして小堀氏は、ボロノイ・グリッドの部屋に適応する「ドーナツデスク」も考案。
次のように説明する。
▲ボロノイ・グリッドの空間に合わせてデザインされた「ドーナツデスク」
「ボロノイ形式のかたちになると、均質な空間に合わせた四角いテーブルはそぐわなくなる。8パターンのドーナツデスクをつくり、組み合わせることで空間にフィットさせていくものを考えました」という。
その他にカンファレンスルーム、シャワールームや仮眠室を備える「ウェルネスエリア」なども備えるオフィスの様子は、CIC Japanのスタッフがオフィス内を紹介する「バーチャル・ツアー」で見ることができる。
▲CIC Japanによる「バーチャル・ツアー」は 3:34:05 – 3:50:00(外部リンクの新規タブが開きます)
多様なスタイルで使えるさまざまな居場所をボロノイ・グリッドで実現し、新たな働き方の可能性を示す〈CIC Tokyo〉。
空間デザインとイノベーションの密接な関係も、ここから見えてくるはずだ。
(jk)
CIC Tokyo
https://jp.cic.com/
小堀哲夫 | Tetsuo Kobori
1971年岐阜県生まれ。1997年法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程修了。久米設計を経て、2008年株式会社小堀哲夫建築設計事務所設立。現在、法政大学デザイン工学部建築学科教授、梅光学院大学客員教授。
主な受賞に2018年日本建築学会賞、JIA日本建築大賞(ROKI Global Innovation Center –ROGIC-)、2019年JIA日本建築大賞(NICCA INNOVATION CENTER)、2019年Dedalo Minosse International Prize 特別賞ほか。
https://tk-a.jp/office/