FEATURE
How to View and Enjoy Expo in the Age of SNS
Interview with Taro Igarashi
FEATURE2025.05.01

大阪・関西万博の見逃せない建築ポイントを紹介

[Interview]五十嵐太郎流|SNS時代の万博の見方・楽しみ方

「大阪・関西万博」の開幕から半月が経ち、〈大屋根リング〉や国内外のパビリオンなどの施設について、メディアやSNSでさまざまな情報が見られるようになってきました。

万博に関連するインタビューを以前に行った建築史家であり建築批評家の五十嵐太郎氏も、開幕してすぐに2日間にわたって万博会場を訪れ、所見を新聞などで綴っています。

TECTURE MAGでは今回の万博の建築について、どのような見方をすればより面白くなるのか? 見逃せないポイントはどこか? また、これまでの万博と比較して浮かび上がることや、今度の万博の予想まで、詳しく聞きました。広い視野をもって万博を見るための補助線として、活用ください。

Top image: Taro Igarashi

五十嵐太郎 | Taro Igarashi

1967年パリ生まれ。建築史・建築批評家。1992年東京大学大学院修士課程修了。博士(工学)。現在、東北大学大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。芸術選奨新人賞。『日本建築入門』(筑摩書房)、『被災地を歩きながら考えたこと』(みすず書房)、 『モダニズム崩壊後の建築』(青土社)、『現代建築宣言文集』(共編著、彰国社)ほか著書多数。

 

INDEX

  • 登ってわかる〈大屋根リング〉の効果
  • “モノの力”を感じられるパビリオン
  • テーマを先鋭化させた若手建築家のプロジェクト
  • 実は相性抜群!? SNS時代の初めての万博
  • これからの万博はどうなるのか

登ってわかる〈大屋根リング〉の効果

── 〈大屋根リング〉(基本設計・実施設計・工事監理:藤本壮介)は実際に見て、どう感じられましたか?

[大阪・関西万博Reoort]世界最大の木造建築、全周約2kmの大屋根リングからレポートするExpo 2025の見どころ

五十嵐太郎(以下、五十嵐):昨年の10月に、ほぼ完成した状態で1度見たことがあったのですね。「これはすごい」と思いましたよ。土木スケールというか、高速道路やランプ(傾斜路)を遠目で見るようなスケール感ですよね。そして昨年は人がいない状態でしたが、今回は人がたくさん屋根の上に登っていて、これもまた見え方として面白いものでした。20mや12mの高さにいる人が、遠くにパラパラと動いて見えるのは不思議な光景です。

〈大屋根リング〉の上部。Photo: Taro Igarashi

そして屋根の上に登ると、外国パビリオンを包むことが一目瞭然です。塔ではない構築物によって、それぞれのパビリオンを平行移動しながら上のほうから見るというのは、万博史上初めての体験なのではないかと思います。普通は通りの目線から見るだけですが、今回は上から見下ろす視点を獲得したということです。こうなると、パビリオンなどの屋根のデザインも大事だなと感じました。〈スペインパビリオン〉や〈カナダパビリオン〉ほか、「霧の屋根」をもつステージ(註:KIRI ARCHITECTSが設計したポップアップステージ[東内])などは大屋根リングを上がったところからもよく見え、すごく効果的だなと思いました。

〈ポップアップステージ(東内)〉設計:KIRI ARCHITECTS。Photo: Taro Igarashi

── 〈大屋根リング〉の円の効果については、いかがでしょう?

五十嵐:円が持つ強い囲み感は、人が入ることでより強く感じました。2005年の「愛・地球博」のときも長久手会場では「グローバル・ループ」という環状の通路が使われていましたが、地形に沿いながら少し崩れたかたちだったので、囲むという印象ではなかったと思います。今回は円形で囲んでいることがすごく明確ですし、特に外国館はすべて〈大屋根リング〉の中に入っているので、世界が1つの輪の中にあるということがシンボリックでわかりやすいものでした。海の上に浮いて水上ステージにしているところも、効果的に見えました。〈大屋根リング〉を実際に見れば、みんなの記憶に残ると思います。

「ウォータープラザ」越しに見た〈大屋根リング〉。Photo: Taro Igarashi

まあ個人的には、伝統的な木造工法ということを強調しなくてもよかったのではないかと思います。「清水の舞台」で使われている貫を用いた工法だという説明内容が、繰り返されたのだと思うのですが。貫を使った工法として引き合いに出すなら、鎌倉時代に重源(ちょうげん)が関わった〈東大寺〉の木造建築ではないかと思います。それまで和様しか見たことがなかった当時の日本人にとって、新しい大仏様の異様に巨大な木造建築は、ブレイクスルーとなりました。〈大屋根リング〉も、CLTも活用した新しいタイプの大型木造建築だと説明したほうがよかったのではないかと思います。

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未来社会を構想するという点では、1970年万博で全体の基本計画に携わった丹下健三が自身の研究室で発表した「東京計画1960」(1961年)がありました。「東京計画1960」で一般的に知られているのは、東京湾に人工島と道路が張り出した絵ですが、その計画を裏付ける分析データやレポートがすごく分厚い量なのですよね。その後に建築家として有名になる大勢の学生が集まり、作成しています。その勢いをもって、未来都市のひな型として1970年の「大阪万博」にも取り組んでいたはずで、「愛・地球博」や今回の「大阪・関西万博」との違いを感じます。今は大学の研究室と設計事務所の活動が切り離されるようになったので、単純な比較はできないのですが。

“モノの力”を感じられるパビリオン

── 海外パビリオンには多種多様な館が揃いました。印象に残ったのはどこでしょう?

五十嵐:「愛・地球博」のときはすべての国で、用意された箱のパビリオンのファサードに手を加えるくらいのデザインでした。世界の個性的なパビリオンが並んでいる今回は、街を歩くような楽しさがあります。まだ十分に見ることができていないので、6月にまた訪れる予定にしているのですが。先日見た海外パビリオンの中では、ノーマン・フォスターが設計した〈サウジアラビアパビリオン〉は、中庭と路地のような空間をうまく分棟形式に組み込んでいて面白かったですね。

[大阪・関西万博]海外パビリオン紹介_サウジアラビア

── 今回、パビリオンでは没入型体験の場を提供する館が多い印象です。

五十嵐:メディアアートや映像展示が多いですね。ただ、最先端というよりは少し前の技術を一般向けにしたものなので、印象に残っているものがあまりないのですよね。一方でX(旧Twitter)では、リアルな彫刻や絵画などを持ってきて展示している〈イタリアパビリオン〉が話題になっていました。モノとして面白い本物は、人の印象に強く残るのでしょう。そうした意味ではパビリオン自体も、紛れもなくモノとして存在し、中に入ることができないとしても外観を見れば感じることがあります。海外パビリオンでは通りに面して自国の料理を出す館があり、多くの人にとって食も楽しめるのではないでしょうか。

〈イタリアパビリオン〉内部。Photo: Taro Igarashi

〈イタリアパビリオン〉では彫刻「ファルネーゼのアトラス」やカラヴァッジョの絵画「キリストの埋葬」が話題となった。Photo: Taro Igarashi

── いくつかのシグネチャーパビリオンでも、モノの力を改めて認識しました。

五十嵐:〈河瀨館〉は、設計した周防貴之さんに案内してもらいました。その中でも特に「森の休憩所」が、予約なしでも使える休憩所になっていて良かったですね。また、一般には見ることができないスタッフ用のスペースも抜かりなく構築的に設計されていたことが印象的です。

[大阪・関西万博]シグネチャーパビリオン紹介_河瀨直美氏

── SANAAが設計した〈宮田館〉はどう見られましたか?

[大阪・関西万博]シグネチャーパビリオン紹介_宮田裕章氏

五十嵐:周りから見ただけですが、1970年「大阪万博」の〈スイスパビリオン〉(設計:ウィリー・ワルター)を思い出しました。格子で上に向かって迫り出すように構成された、外部空間が重要なパビリオンです。〈宮田館〉は構造で頑張ってすごく繊細にできていて、自分は〈スイスパビリオン〉を先鋭化させたものかな、と思いました。

隣接する〈静けさの森〉も面白かったですね。会場の中心部にモニュメントを置かないボイドのような案は、誘致時の案から受け継がれています。

会場の中央に設けられた〈静けさの森〉。Photo: TECTURE MAG

テーマを先鋭化させた若手建築家のプロジェクト

── 若手建築家20組が関わったトイレや休憩所、ステージはどのように見られましたか?

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五十嵐:以前にも言いましたが、そもそも若手建築家が、小規模な施設にしか携わっていないことに違和感があります。若手建築家とはいえ1970年「大阪万博」での黒川紀章くらい(当時36歳)の年齢になっていて、ある程度大きな民間パビリオンを手掛けてもいいのではないかと思うのですが。

[Interview]議論が深まった「万博と建築」のこれから(5/5)大阪・関西万博を五十嵐太郎が語る

ただ、小規模な施設ゆえにピュアに建築のテーマがクリアになり、実験する姿勢が見えるものが多かったと思います。例えば萬代基介さんの〈ポップアップステージ(南)〉は本当にシンプルですが、球体の工法をどう解くかという、すごくテクトニックなデザインになっています。20組のプロジェクトではありませんが、KOMPASの小室 舞さんが設計したサウナ〈太陽のつぼみ〉も、太陽工業との協働で実験的な構造に挑戦していました。僕が内部に入ったときは風が激しいときで、テレビで見る台風中継のような体験をしましたが(笑)。

サウナ〈太陽のつぼみ〉設計:KOMPAS。Photo: Taro Igarashi

今回のトイレは、外部から直接個室に入るタイプが多いですよね。ジェンダーレストイレの流れがあったからかもしれません。出入り口の方式が混乱を招くとSNSで話題になっていたのは個室タイプで、確かにわかりにくいなと思います。ただ、サイン計画をきちんとすれば解決されるのではないかとも思っています。

あとは、若手建築家たちは木や石などの自然素材を積極的に用いながら、新しいデジタル技術と組み合わせていたことが印象的です。そしてリユースの話は「愛・地球博」でもされていましたが、リユースが今回さらに強く意識されているのは、今の時代を反映していると思います。半年間の仮設構築物だけれど、もっと長い寿命の中にマテリアルをどう位置づけているかということが、今風だなと感じました。

〈休憩所2〉設計:工藤浩平建築設計事務所。約750の天然石が吊るされている。Photo: TECTURE MAG

全体として、万博でしかできない実験的なことをしているのは、僕は良いことだと思っています。逆にアートは、有名なアーティストがけっこう作品を出しているのですが、なんとなく既存の作品を置いたようで、この万博でなければチャレンジできないという作品がなかったように見えました。そうした意味では、1970年大阪万博で岡本太郎がつくった「太陽の塔」が最たるものでした。もともとは丹下健三がすでに設計した大屋根を「ぶち破る」と言い出したとされています。それを認めた当時の万博のトップもすごいと思いますが、稀代のトリックスターがいたことから、建築とアートが拮抗するスリリングな関係が生まれたのだと思います。今回は残念ながら、〈大屋根リング〉に挑戦するようなアート作品は出なかったと見ています。美術批評家の椹木野衣さんは、〈大屋根リング〉こそが「太陽の塔」のように「ベラボー」なものだった、と指摘していました。

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ストリート・ファニチャーでも、1970年「大阪万博」では榮久庵憲司が率いるGKインダストリアルデザイン研究所が調査と基本設計で関わり、配置計画やシステムのデザインがされて、可変性があったり組み換えができるようにされていました。今回の「大阪・関西万博」では時代を反映して、木製のベンチがたくさん置かれていますが、デザインに参加する主体が複数になっているため、デザイン的に統一感はあまりない印象があります。

実は相性抜群!? SNS時代の初めての万博

── トイレや休憩所などでは、SNSの反応も多く見られます。

五十嵐:SNSで“2億円トイレ”として話題になった〈トイレ5〉を設計した米澤 隆さんには現地で話を聞きました。今や有名になり、「例のトイレを探そう」とゲームのように見に来る人もいるらしいです。あのトイレは分棟構成で、全体像がわかる俯瞰のパースが発表されたときにはそこまで話題にならなかったのですが、完成した状態の一部を写真で切り取られて炎上してしまいました。そうした経緯を聞いて、そうか、SNSで炎上のターゲットにされやすいデザインがあるのだなと気づきました。

〈トイレ5〉設計:米澤隆建築設計事務所。Photo: Taro Igarashi

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今回の「大阪・関西万博」はSNS時代に入ってから、日本で開催される初めての万博なのですね。良くも悪くも、SNSとの相性が合っているのかもしれません。批判を浴びる施設がある一方で、「〈イタリアパビリオン〉はすごい」と話題になったり。実際に見ると、そこまですごいのかなと逆に思うくらいなのですが。パビリオンの展示や飲食店を含めて、2〜3日では、誰も万博の全体を経験することはできませんよね。各自がみんな自分が見た万博のことをSNSに投稿して、自分が見ていない部分をSNSの情報で補完する。これまでになかったメディアと万博の関係性ができていて、これから半年間でさまざまな情報が出てくるとき、最終的に万博の評価がどうなっていくかは興味があります。

1970年の大阪万博ではなんの問題もなく成功したと思っている方がいるかもしれませんが、想定をはるかに上回る人が来場して問題がいろいろと起こっていたことが、資料を紐解くとわかります。雑誌「新建築」の記事では「未来都市が大混乱に陥っている」と揶揄されたり、同じく雑誌「近代建築」では「ディストピア万博」などと書かれたり。僕の研究室の修士課程の学生が、先にあげた榮久庵さんのことを調べていたところ、ストリート・ファニチャーをつくるにあたって海外を視察し、休憩所やベンチなどの必要数を決定したようです。でも開幕すると全然足りなくなり、途中でかなりの数が追加されたといいます。

メディアとの関係でいえば、オリンピックとも比較できるでしょう。もともと万博は1851年に始まって、近代オリンピックは1896年に始まりました。万博は鉄道で都市を結ぶ大量輸送やマスツーリズムが可能になってできた仕組みで、都市開発とセットで開催されてきました。オリンピックは万博に比べるとマイナーなイベントでしたが、テレビの同時中継が可能になったことで、商業化も合わせて短期集中での盛り上がりを見せるようになりました。また、万博では技術の最先端を見せようにも、ナノテクノロジーなどの見えないものにシフトしてきました。万博とオリンピックのメジャー感は、20世紀後半には逆転していたと思います。ただ、先ほど触れたようにSNSの登場で、新しいメディアが万博との親和性が高くなったのかもしれません。

これからの万博はどうなるのか

再利用などが検討されている〈大屋根リング〉。Photo: Taro Igarashi

── 五十嵐さんは今回の万博で、〈大屋根リング〉などを少しでも残すことができればいい、と言われていましたね。

[Interview]議論が深まった「万博と建築」のこれから(3/5)大阪・関西万博を五十嵐太郎が語る

五十嵐:そうですね、数カ月でも残してより多くの人が体験できればいいと思っています。1970年大阪万博の大屋根も結局8年ほどは残っていました。太陽の塔もそのままにしていたら再評価されて、再び公開されています。50年以上経ってメカニックな機構は動かなくなっていますが、巨大なインスタレーションの“モノ”としては基本的にほとんど同じ状態です。逆に、もし当時最先端のメディア・アートであったとしたら、古臭くなっていたし見られなくなっているでしょう。

── 隣地で予定されているIR(カジノを含む統合型リゾート)との関連も、たびたび話題になります。

五十嵐:地下鉄などのインフラの利用で一緒くたに捉えられているかもしれませんが、IR施設の敷地は万博会場の隣で、IRの2期になるかもしれませんが、万博の会場跡地の利用案決定はこれからです。

[Interview]議論が深まった「万博と建築」のこれから(4/5)大阪・関西万博を五十嵐太郎が語る

ただ、前の大阪万博後には跡地や周辺に万博公園や民博(国立民族学博物館)など文化的なものができたのに、今回はIRなのか…と思ってしまいますよね。正直、マカオなど近場のアジアのカジノに勝てるのかなと疑っています。一昨年に四半世紀ぶりにマカオを訪れたのですが、以前とはまったく変わっていました。新しく開発されたコタイ地区は、ラスベガスのスタイルがそのまま移植された広域なテーマパーク・カジノに発展していて、“エッフェル塔”も“ロンドン塔”も“ヴェネツィア”もあり、中国本土の人で賑わっていました。フィリピンのマニラにもそれなりに大きなカジノスペースがあり、今のスケール感だと、大阪のIRがアジアで国際的な競争力を持つのは難しいだろうと思っています。

マカオのカジノリゾート。サンマルコ、エッフェル塔、ビッグベンが見える。Photo: Taro Igarashi

コタイ地区の地図(左)とヴェネチアが再現されたエリア(右)。Photo: Taro Igarashi

── これからの万博について、どうなっていくと思われますか?

五十嵐:今年の2月に、前回開催されたドバイ万博の跡地を見に行きました。直径が約2kmの環状のアヴェニューには、スライド式の日除けを張って活用されていました。また、グリムショウ・アーキテクツ設計の〈Terra – サステナビリティパビリオン〉、ノーマン・フォスターが設計した〈Alif – モビリティバビリオン〉、ICARIA ATELIERが設計したドバイの首長を称える〈VISIONパビリオン〉は展示を含めて見ることができました。ほかの建物も想像以上に残っていて、跡地を新都市にする勢いでニュータウン化の開発が進んでいます。

Terra – サステナビリティパビリオン / グリムショー・アーキテクツ

Alif – モビリティバビリオン / フォスター アンド パートナーズ

〈VISIONパビリオン〉外観。設計:ICARIA ATELIER。Photo: Taro Igarashi

〈VISIONパビリオン〉内部。設計:ICARIA ATELIER。Photo: Taro Igarashi

先に挙げた今回「大阪・関西万博」の〈サウジアラビアパビリオン〉は、見るからにお金がかかっていました。サウジアラビアは次回2030年万博の開催国で、僕は今年の2月に開催都市のリヤドを訪れたのですが、実際にお金持ちの国です。数年前までは映画館も禁止されていたような戒律の厳しい国ですが、先回のドバイ万博の成功例を見て経済特区をつくり、ザハ・ハディドが設計した駅も去年に完成し、万博の受け入れ体制を整えています。

ザハの幾何学美が紡ぐ、サウジアラビア首都の接続性を極めた交通ハブ〈KAFDメトロ駅〉ザハ・ハディド・アーキテクツ

〈KAFDメトロ駅〉外観。設計:ザハ・ハディド・アーキテクツ。Photo: Taro Igarashi

〈KAFDメトロ駅〉内部。設計:ザハ・ハディド・アーキテクツ。Photo: Taro Igarashi

また、例えばノーマン・フォスターのフォスター+パートナーズ、グリムショウ・アーキテクツ、ホプキンス・アーキテクツなど、特にイギリス系の建築家の事務所が中東ではさまざまな仕事をしています。

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誘致合戦に勝利した理由でもあるようですが、次回のリヤド万博では、各国のパビリオンにサウジアラビアから資金援助もあると聞きました。従来の万博では資金が少なく共同の「コモンズ」で出展してきた国も、独立したパビリオンをつくることができるかもしれません。そうなると、次回のリヤド万博は過去最大級の万博になるのかもしれません。

(2025.04.21 オンラインにて)

Interview & text: Jun Kato


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