「都市を森林の貯蔵庫に還す」ことをコンセプトに掲げ、東京ガスコミュニケーションズが開発・販売している家具プロダクト〈CARBON STOCK FURNITURE(カーボンストックファニチャー)〉を紹介します。
脱炭素化社会の実現を目指して
〈CARBON STOCK FURNITURE〉は、東京ガスグループの長期経営ビジョン「Compass2030」に基づく、2050年以降を見据えた指針として、脱炭素化社会の実現に取り組む姿勢を込めて打ち出された「CO2ネット・ゼロ」の実現に貢献すべく、東京ガスコミュニケーションズが開発、2021年3月から販売を開始しました。
人と森林を再び結びつけるプロダクト
プロダクトを構成する重要なコンセプトとして、以下のポイントが挙げられます。
・CO2(二酸化炭素)を都市に貯蔵し、大気中のCO2の削減に貢献
・木材は近傍から手配し、輸送時にかかるCO2排出量を抑制する
・産地を特定できる国産木材を使用
・一般流通材[*1]を活用する
・再利用を前提に木材の加工は最小限にとどめる
・CO2を”可視化”するデザイン
*1.機械化されたシステムによって大量生産された、市場で最もポピュラーな木材。流通量が多い
都市のCO2ストレージを貯蓄する
樹木には、人の営みが排出したCO2(二酸化炭素)を取り込み、炭素として内部に”固定する”という機能があります。
〈CARBON STOCK FURNITURE〉は、言わば”炭素の貯蔵庫”である木材を、再利用も可能な角材の状態を保ったまま、家具として造作しています。さらには、オフィスや店舗・公共空間などさまざまな空間にも対応したシンプルなデザインとし、販路を広く確保することで、結果的に森林資源の循環利用に貢献します。
東京ガスコミュニケーションズの発表によれば、2021年8月時点で、累計6841.87kgの二酸化炭素を固定したとのこと(炭素固定量を二酸化炭素量に換算)。
また、「CARBON STOCK FURNITURE」では、都市近傍にある森林から採れる木材を選び、輸送にかかるCO2排出量も抑制することができます。
開発にHAGI STUDIOの宮崎晃吉氏が参画
〈CARBON STOCK FURNITURE〉のコンセプト立案とデザインを担当したのは、建築家の宮崎晃吉氏(HAGI STUDIO 代表取締役)。本誌でも何度かインタビュー取材を行い、宮崎氏のさまざまな活動を紹介しています(本稿下部より関連リンクを設定)。
宮崎氏は、〈CARBON STOCK FURNITURE〉が実際に初めて納品された「MOCTION(モクション)」において、東京ガスコミュニケーションズのCARBON STOCK FURNITUREチームと協働して、空間デザインを担当(下の写真)。このときの協働が、林業の問題や木材についてより深く考えるきっかけになったと語っています(東京ガスコミュニケーションズ「CARBON STOCK FURNITURE」公式ウェブサイト収録 関係者インタビューより / https://carbonstock.jp/voice/01/)。
「MOCTION」での活用事例
MOCTION[*2]とは、東京都が西新宿の[リビングデザインセンターOZONE]5階に昨年12月に開設した、国産木材の魅力発信拠点です。
*2.MOCTION:木材の大消費地である東京都が、全国各地とで連携し、オフィス木質化推進の活動を推進する施設(館長:隈 研吾氏)。
東京都報道発表資料(産業労働局・公益財団法人東京都農林水産振興財団)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/11/06/07.html
「MOCTION」の展示・商談スペースに設置された〈CARBON STOCK FURNITURE〉は、東京西部の多摩産材を採用。木材を多用した新たなオフィス空間を提案。さらに、道府県・各地の国産木材にフィーチャーした企画展示も行っています。〈CARBON STOCK FURNITURE〉は商談スペースのテーブルとしても使われ、東京都と全国各地の生産者をつなげる場となっています。
「MOCTION」公式ウェブサイト
https://moction.jp/
リサイクルできることを前提に、流通材をそのまま積み上げたようなデザインと、その家具がおよそどれくらいのCO2を内包しているかも明示している〈CARBON STOCK FURNITURE〉は、人々が木材とその背後にある森林・林業を強く意識させます。大勢の人が暮らす都市と、森林との関係性を再び結びつける役割も担っているプロダクトです。(en)
〈CARBON STOCK FURNITURE〉公式ウェブサイト
https://carbonstock.jp/