「国際平和文化都市」を目指す広島。その陸の玄関口である広島駅前に、新たなランドマークとなる〈広島 J P ビルディング〉が2022年8月31日に竣工しました。
広島駅南口広場は、新駅ビルの建設(註:2025年春開業予定)や路面電車の高架化による新駅ビルへの乗り入れなど開発が進んでおり、〈広島 J P ビルディング〉はこうした開発の動きと一体となって、広島駅周辺のにぎわい創出を目指しています。
今回、この〈広島 J P ビルディング〉のトイレ、161ブースに採用されたのが、アイカ工業の抗ウイルス・抗菌・消臭トイレブース「メラフロントブースウイルテクト レスキューオープン仕様」です。
数あるトイレブース製品のなかからどのような経緯で採用に至ったのか、日本郵政株式会社 施設部 開発設計グループの武田雅志氏に、プロジェクトのコンセプトや背景について、話を聞きました。
「〈広島 J P ビルディング〉では、中四国エリアでオンリーワンのオフィスビルを目指し、広島を代表する戦国武将である毛利元就が提唱した『三本の矢』にかけて、広島らしさの表現、郵政らしさの表現、ビルで働くワーカーのために最高の環境を提供するという3つのコンセプトを柱として計画を進めてきました」(武田氏)
広島駅南口広場という立地における新たなランドマークとなる建築として「広島らしさ」を意識したという武田氏。とはいえ、J R 広島駅直結のテナントビルというとワーカーメインのようにも思えますが、パブリックな空間も重視したと話します。
「〈広島 J P ビルディング〉は広島の『陸の玄関口』である広島駅南口広場と一体的な景観形成とするため、基本計画の段階から関係者と協議を重ねたうえで駅前広場側をセットバックさせて都市に開かれた公開空地を整備し、駅前都市空間のオアシスとなることを目指して計画しました。1階には郵便局が9月26日にオープンし、その他の商業施設も順次オープンする予定となっています。また J R 広島駅の新駅ビル完成時(2025年春開業予定)には、2階レベルのペデストリアンデッキで接続させる予定となっています」(武田氏)
「低層部は都市に開かれたパブリック空間と位置づけて積極的に開放させる計画としました。駅前広場と隣接するレトロな飲食店街として人気がある『エキニシ』とを結ぶ貫通通路や多くの市民やワーカー・旅行者などが集うことができる憩いの空間を整備し、低層部の商業施設と連携した駅前のサードプレイスとなることを想定しています」(武田氏)
誰もが利用する郵便局の親しみやすさや「広島らしさ」はコンセプトだけでなく、内装にも表れています。
「2階のオフィスエントランスは、切手サイズの手漉きの和紙をガラスの上に貼り合わせ、瀬戸内海の風景を代表する『多島美』を表現したクラフトウォールを設け、広島らしさを表現しました。このクラフトウォールは手漉き和紙職人のハタノワタルさんに依頼して仕上げてもらいました」(武田氏)
また、オフィスサポート機能として、ビル内にランチタイムなどを過ごせるテナント専用食堂が設けられています。
「この食堂は食事のみではなく、調理風景も楽しめる躍動感のあるライブキッチンを備え、インテリアでは広島らしさを表現するために備前焼タイルや広島で製作している木製チェア等を採用しました」(武田氏)
「ランチタイムなどに屋外でリフレッシュしてもらうため、食堂から繋がるルーフガーデンを設置しました。瀬戸内レモンやオリーブなど多数の植栽で囲まれた空間とし、ランチタイム以外でも夏場は夜風に浴びながらの貸切りパーティーを行うなど、社員のコミュニケーションの場として利用してもらいたいと考えています」(武田氏)
郵便局を備え、広島駅周辺を利用する市民にも開放して交流を創出する〈広島 J P ビルディング〉ですが、駐車場を除く全フロアのトイレ、合計161ブースにアイカ工業の「メラフロントブースウイルテクト レスキューオープン仕様」が採用されました。
「メラフロントブースウイルテクト」は、木口の曲面加工やソリッドな意匠で人気のある「メラフロントブース」の表面材に、抗ウイルス・抗菌・消臭機能を付加したメラミン化粧板「アイカウイルテクトPlus」を使用したものです。
「コロナ禍に建設したビルということで、抗菌だけではなく抗ウイルスの機能を有している建材を探していました。メラフロントブースは抗菌・抗ウイルス機能だけではなく、消臭機能を有していることと、SIAA登録商品であることが採用に至った最大のポイントとなりました」(武田氏談)。
SIAAマークは、抗菌製品技術協議会が制定したガイドラインに適合した抗菌・抗ウイルス加工製品に表示することが認められているもので、昨今、このSIAAマークが貼られた建材をよく目にするように感じます。やはり利用者の安心に直結するSIAAの基準適合は製品選定のポイントになったようです。
「トイレブース扉は盗撮防止の観点からブース扉の上部に幕板を付けた設計としましたが、トイレブースの中で人が倒れた時の救助が課題となり、その解決策としてアイカ工業のレスキューオープン仕様を採用しました。さまざまな非常解錠装置がありますが、意匠的に目立たない機構であり、特別な鍵などを使用しない商品であることが採用の決め手となりました」(武田氏)
幕板があることで手を伸ばして盗撮されることを防げるだけでなく、盗難防止にも役立ちますが、万が一の救助という点では上部の隙間から入り込むことも、様子をうかがい知ることもできません。
今回、採用されたアイカ工業の「メラフロントブース レスキューオープン仕様」は、ブース扉下端の戸当たりを操作することで内開きのブースを外開きに非常解錠することができ、迅速な救助活動に繋がる製品といえます。
「トイレのデザインは女性の視点を重要視し、一緒に設計していた女性に担当してもらいました。トイレ空間は、白を基調とした衛生器具と水をイメージしたモザイクタイルにより清潔感が感じられる空間とし、トイレブースには温かみのある木目柄を採用し、利用者がほっと一息ついてもらえる場所になっているのではないかと考えています」(武田氏)
抗ウイルス・抗菌は当たり前。これからのトイレは消臭機能も必須
「機能面では、抗ウイルス、抗菌だけでなく、より快適にトイレを利用してもらうために消臭機能もあったほうがよいと思います。消臭機能の付いた壁材は世の中に多くありますが、トイレブース・間仕切りにすることで表裏に消臭機能が発揮されるので、より効果が大きいと考えたからです。どれほどの効果が出るか、楽しみです」(武田氏談)
「喫煙室には耐シガレットタイプの商品、タバコの熱に強い商品ということで、メラミンタイルを使わせてもらいました。やはり汚れやすい場所だと思いますので、メンテナンス性がよく汚れに強いところ、意匠性も採用のポイントになりました。
また、基準階はフロアプレートが80mと大きいため、すべてのテナントに使いやすいよう各階2カ所、両サイドにリフレッシュルームを設置しています。この部屋は足元まで窓があり、西に面していて日差しが入るので、耐候性に優れる点もよかったです」(武田氏)
「広島らしさ」をテーマの1つとして、広島の素材などを採用して空間づくりを行い、広島ならではのオンリーワンのビルができたと話す武田氏。
抗ウイルス・抗菌・消臭など、機能と意匠にもこだわったトイレは早速好評のようです。
「事業関係の方などに見ていただいたなかで、『立派なトイレだね』という感想もいただき、使っていただくお客様に対しても、きっと喜んでもらえるトイレになったのではないかなと考えています。特に女性用トイレはパウダーコーナーも充実させましたし、照明も工夫しているので、オフィスというより商業施設のような親しみやすい雰囲気になったと感じます。
今回は木目柄を採用しましたが、選びやすい自然な木目や、きれいな意匠の木目を揃えていただいているなという印象です。色や種類など選定できる余地をもっと増やしていただければ、設計側としてはとても助かります」(武田氏)
今回採用されたプロダクト
メラフロントブースウイルテクト レスキューオープン仕様
商品名:メラミン化粧板 アイカウイルテクトPlus
品番:EJ-509KC98 / EJ-559KC62 / EJ-896KC74商品名:メラミンタイル
品番:BTM682C / BTM559C
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