2024年9月8日初掲、9月9日会場写真追加
東京・銀座5丁目の銀座メゾンエルメス フォーラムにて、美術家の内藤礼(1961-)の展覧会が9月7日より開催されています。
本展は、今年6月25日から9月23日にかけて東京・上野の東京国立博物館にて開催されている、同じタイトルを掲げたもう1つの内藤の個展「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」に続くものであり、2つの会場が連環する構成となっています。
本展会期中の土曜・日曜・祝日には、東京国立博物館(上野)とメゾンエルメスフォーラム(銀座)を結ぶ無料シャトルバスも運行されます(発車時刻などの案内はこちら)。
東京国立博物館にて「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」開催、9月より銀座メゾンエルメス フォーラムにて開催される個展と連環した展示構成【読者プレゼントあり】
「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を、一貫した問いとして作家活動を続けてきた内藤は、光や影、水や大気のうつろいがもたらす生と死のあわいに、日々見過ごしがちなささやかな事物や情景、知覚しがたい密やかな現象を「根源的な生の光景」として、私たちの中に結び付けることで、深い体験をもたらします。
本展は、東京国立博物館にて、9月23日まで開催されている同名の展覧会と一連の流れを持って構想されたもので、会期を一部重ね合わせながら、ひとつの大きな円環を描くというかたちで展開いたします。
歴史ある建築物とさまざまな年代に制作された膨大な文化財を所蔵する東京国立博物館の環境とは対照的に、銀座メゾンエルメスの近代的な建築〈銀座メゾンエルメス〉(編集部註.設計:レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ)の内部にあるフォーラムには、ギャラリー所蔵の作品群はありません。都市の中心部に浮かび、一見、空っぽのようにも感じられる空間は、ガラスブロックを通じた自然光とともに街からもたらされる人工の光や色彩に満ち、また過去から隔てられた場所でもあります。
内藤は、光のうつろいによって、一層はかなく、また色濃く感じられる生への眼差しを、この場所へかりそめに宿らせ、そこに「生の没入」を見出そうとします。連続する2つの会場は、絵画や立体作品によって繋がる構成をとっています。とりわけ、2023年から24年の間に日々作家のアトリエで制作された絵画〈color beginning/breath〉のシリーズは、展覧会へと向かう作家の生の刻として、物理的な時間の不可逆性を示し、両会場を結ぶ円環の語りの一軸を形成します。東京国立博物館で縄文時代の土製品や獣骨と出会い紡がれた親密な時間やままごとの痕跡、数々の展示室を巡る回路からもたらされた記憶、それらは、会期を完全に重ねることのない本展においても、作品の断片や空気、眼差しの間に交差する時空を形成し、空間に佇む人や低い位置に設置された〈座〉に身を寄せる人の姿を通して、超越的な協和を浮かび上がらせます。
過去に生きた人に出会うことができないように、未来に生きる人にも、昨日や明日という時間にも、私たちは今、物理的には出会うことはできません。だからこそ、内藤の「生まれておいで 生きておいで」という呼びかけが鑑賞者の地平に現れるとき、太古から続く自然や命への畏れや祈り、それによってもたらされた創造の力や精神世界への共鳴を、風景の中に認めるのでしょうか。そして、未来へ向かういかなる生もが、慈悲と祝福の息吹で満たされんと希求するのでしょうか。
銀座メゾンエルメス フォーラム プレスリリースより
内藤礼(ないとう れい)プロフィール
1961年広島県生まれ、現在東京を拠点に活動。これまでの主な個展に「breath」(ミュンヘン州立版画素描館、2023年)、「うつしあう創造」(金沢21世紀美術館、2020年)、「明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2018年)、「Two Lives」(テルアビブ美術館、2017年)、「信の感情」パリ日本文化会館(2017年)、「信の感情」東京都庭園美術館(2014年)、「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」(神奈川県立近代美術館 鎌倉、2009年)、「Being Called」(カルメル会修道院/フランクフルト近代美術館企画、1997年)、「地上にひとつの場所を」(第47回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館、1997年)、「地上にひとつの場所を」(佐賀町エキジビット・スペース、東京、1991年)がある。
恒久展示作品に〈母型〉(豊島美術館、2010年)、〈このことを〉(家プロジェクト きんざ、ベネッセアートサイト直島、2001年)がある。
2019年第69回芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門)、2018年第60回毎日芸術賞、2003年第一回アサヒビール芸術賞、1994年日本現代藝術奨励賞(インスタレーション部門)受賞。
会期:2024年9月7日(土)~2025年1月13日(月・祝)
開館時間:12:00-19:00(入場は18:30まで)
休館日:水曜、10月24日(木)
※開館日時は予告なしに変更される場合あり
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
所在地:東京都中央区銀座5-4-1(Google Map)
入場料:無料
主催:エルメス財団
特別協力:東京国立博物館
協力:タカ・イシイギャラリー
本展詳細 / 銀座メゾンエルメス フォーラム ウェブサイト
https://www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/forum/240907/