『TECTURE』(https://www.tecture.jp/)には、日々多くの建築作品が投稿され、さまざまなクリエイターのアイデアや取り組みが共有されています。その膨大なデータの中から、作品の特徴やテーマに焦点を当てながら『TECTURE MAG』編集部視点で紹介していきます。
さて、陽だまりの温かさが思い起こされる今日この頃。同時に、サンルームについて改めて考えてみませんか。サンルームとは、もともと“建物の一部として庭先やバルコニーにせり出した、ガラス張りの部屋”を指すようですが、その解釈を少し広げて見てみると、設計者のアイデア次第でさまざまなカタチとして表現されています。
この記事では、『TECTURE』に投稿された住宅の中から、サンルームに焦点を当てピックアップした、8作品をご紹介します。
INDEX
- 園部の住居 / タトアーキテクツ
- HouseOS / 1-1 Architecuts
- AKO HAT / Camp Design
- 金沢の家 / 中西昭太建築事務所
- 6つの小さな離れの家 / 武田清明建築設計事務所
- 光の路庭 / TENK
- mimosa house / marutau arqui
- 川沿いの家 / 中野晋治建築研究室
〈園部の住居〉
設計:タトアーキテクツ
所在地:京都府南丹市
周辺環境やコミュニティとの接点となる、さまざまな半屋外空間を取り入れた住宅です。中でも三角形平面のサンルームでは屋根部と外壁部にポリカーボネート波板が採用され、2層分吹き抜けの気積をもっています。吊り戸を開くことで、大きな軒下のような開放的な外部空間となります。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/17
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20200506-house-in-sonobe/
〈HouseOS〉
設計:1-1 Architecuts
所在地:愛知県
3つの異なる用途地域に沿った建屋(住宅、農業用倉庫、温室)を、それぞれ隣地境界線ぎりぎりに寄せて建てることで、1つの建築として設計されています。倉庫や温室では数多くの植物が栽培されていて、植物たちの居場所であるのと同時に、住宅という暮らしの器を拡げる空間にもなっています。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/1598
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20220222-houseos/
〈AKO HAT〉
設計:Camp Design
断熱性のほとんどないRC造打ち放しの住宅の改修計画。既存の外壁にガラス張りの外皮を被せることで内外の境界部に新たな空間をつくり出しています。この空間は人の動線や内外のバッファーになるだけはなく、その建具の開閉で空気や熱の流れを調整できる、コントロールルームのように機能しています。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/837
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20210913-ako-hat/
〈金沢の家〉
設計:中西昭太建築事務所
所在地:石川県金沢市
悪天候や寒い時期が続く北陸地方において、開放的な暮らしを実現する住宅です。北陸で伝統的に用いられる玄関土間を再解釈した屋内庭園は、急傾斜の大屋根が取り込む太陽光に溢れています。季節や時間の移ろいの機微も楽しむことができる住空間となっています。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/2302
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20230629-house-in-kanazawa/
〈6つの小さな離れの家〉
設計:武田清明建築設計事務所
所在地:長野県
戦前から引き継がれてきた住宅のリノベーション。新旧入り混じり時代が重層した敷地内には、ガラス張りの6つの小さな離れが散在しています。離れのいくつかは、長年眠っていた防空壕や井戸などの地下空間の上に増築したもので、安定した地中熱を活かした環境が生まれています。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/38
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20200528-house-with-6-annexes/
〈光の路庭〉
設計:TENK
所在地:岡山県岡山市
ガラス張りの屋根が架かった土間空間を、街と接するように内包した平屋住宅。この土間空間は内と外だけではなく、パブリックとプライベートが諧調的に移り変わる中間領域となっています。『TECTURE』には竣工から3年後の写真も投稿されており、内外と公私が溶け合うような姿を見ることができます。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/1130(竣工時)
https://www.tecture.jp/projects/4729(竣工から3年後)
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20220106-hikari-no-michiniwa/
〈mimosa house〉
設計:marutau arqui
所在地:鳥取県鳥取市
瓦屋根が残る古くからの町並みと、新興住宅地の境目に位置した平屋の住宅です。ガレージに隣接したサンルームは風除室と物干し場を兼ねていますが、躯体が現しであることに加え、見上げると赤褐色の瓦とガラス瓦の混ぜ葺きとなっており、この地域のプリミティブな景観を想起させるような空間となっています。
TECTURE:https://www.tecture.jp/projects/1441
TECTURE MAG:https://mag.tecture.jp/project/20220408-mimosa-house/
〈川沿いの家〉
設計:中野晋治建築研究室
所在地:福岡県福津市
川沿いに建つ平屋住宅です。全体の構成がシンプルなぶん、大きな円形テラスと、大きな引き戸を介したポリカーボネート波板によるサンルームの存在感が際立ちます。住まい手に委ねたサンルームの使われ方次第で、川や街並みに対しての構えや関係性がガラリと変わります。
住まい手によっては屋内とも屋外とも、また私的とも公的とも捉えられるサンルーム。暮らしの多様化が進む中、設計者のアイデア次第で、その多様性の受け皿となってくれるかもしれませんね。ぜひ参考にしてみてください。