東京・南青山4丁目に、リンナイ(本社:愛知県名古屋市)の新たな拠点〈Rinnai Aoyama(リンナイ青山)〉が7月3日にグランドオープンしました。
『TECTURE MAG』では、プレオープン期間中に行われたプレスプレビューにて〈リンナイ青山〉を見学。二俣氏にも取材しました。リンナイから提供を受けた内外観画像をビジュアルとして、リンナイの新たな体験型ショールームについてレポートします。

リンナイ青山 外観 photo by Daisuke Shima
〈リンナイ青山〉は、ガスコンロや給湯器、衣類乾燥機といった熱エネルギー機器の開発・製造・販売を事業とし、これまで法人顧客(B to B)を対象に販路を構築、プロダクトを送り出してきたリンナイが、新たなユーザーとの接点となるブランド体験施設を、南青山の地に初めてオープンしたものです。
店舗のコンセプトは、社外から招いたクリエイター[*.メンバーは後述]とともに立ち上げられました。芝大門2丁目にある同社のB to Bの製品体験施設〈Rinnai Hot.Lab 浜松町〉とは異なる構成で、リンナイが伝えたいブランドイメージおよび高機能プロダクト群について発信し、よりよい暮らしを提案することを目的とした施設となっています。
〈リンナイ青山〉主な特徴
・人々が集い、交わる、暮らしの拠点となる体験型ショールーム
・コンセプトは「熱と移ろい」
・さまざまな人々が集えるラウンジと、キッチンを備えたリビング空間(予約制)を用意
・フラッグシッププロダクトのほか、国内外ブランドのオーダーキッチンも展示

1階キッチンエリア photo by yansu
展示されている(G:LINE(ジーライン)〉は、都内の高級レジデンスのために開発され、現在はリンナイのフラッグシップブランドとなっている

「G:LINE」シリーズなどのオーブン・コンロを展示したキッチンエリア photo by yansu
〈リンナイ青山〉は1階と4階の2フロアに分かれており、両フロアの設計を、空間・プロダクトデザイナーの二俣公一(ふたつまた こういち)氏が率いるケース・リアル(CASE-REAL)が担当しました。
住宅設備機器メーカーのショールームでよくみられるような陳列展示ではなく、空間を広々ととった大胆なレイアウトを採用しているのが特徴です。豊かで上質な暮らしとは何かを追求し、そのためのプロダクトを厳選して展示。それらの一部は体感することも可能です。
設計者 プロフィール
photo by Kohei Take
二俣公一
空間・プロダクトデザイナー。福岡と東京を拠点に空間設計を軸とする「ケース・リアル」とプロダクトデザインに特化する「KOICHI FUTATSUMATA STUDIO」を 主宰。国内外でインテリア・建築から家具・プロダクトに至るまで多岐に渡るデザインを手がける。JCDアワード(現・日本空間デザイン賞)やFRAMEアワード、 Design Anthologyアワードなど国内外で受賞多数http://www.casereal.com/
http://www.futatsumata.com/
設計コンセプト
リンナイがお客様へ直接プレゼンテーションしていくための場所、 そして、多様な人が集まり、交流が生まれる空間。 エントランスに設けたインナーテラスは、そのようなブランドのこれからの姿勢のようなものが表れた計画のひとつです。テラスを開放できる引戸や、ファサードに対して大きく斜めに角度をつけたガラス間仕切りによって、通りからこの場所への導入をつくりながら内外を緩やかにつなげることを考えました。インテリアは、タイルや石材、ステンレスなど、質実剛健なブランドイメージを意識しています。 そして全体は重厚感や凛とした空気をつくりながらも、場所によって木材や左官材などを組み合わせ、 住空間と結びつきの強いブランドだからこそ、適度な柔らかさや暖かみも感じられる居心地の良さを目指しました。(ケース・リアル / 二俣公一)
「一般的なショールームの場合、面積に対してどれくらいの数量でプロダクトを並べられるかを考えるものですが、そういった従来型の店舗は、自社のプロダクトを通して、上質な暮らしを提案し、その気づきとなるような体験を提案していきたいという、クライアントが目指すものとはそぐわない。空気感もふくめてどうやって表現するか、そこが最初の課題でした。
また、この既存建物は、1階のフロアレベルが下がっていて、改装前はやや薄暗く閉鎖的な印象がありました。天井もあまり高くはない。そこで、外部に対して開かれ、内と外とのバッファーゾーンとなる”インナーテラス”を提案しました。外周部の既存のサッシは取り外してすべて交換し、L字の接道部分には大型の引き戸を入れて、できる範囲で開け放てるようにしました。エントランスまわりにはテーブルと椅子を置いて、誰でも気軽に、ちょっとした休憩などに使ってもらえるようになっています。」(二俣氏 談)

リンナイ青山 1階エントランス photo by Daisuke Shima

1階「インナーテラス」 photo by yansu

「インナーテラス」 photo by Daisuke Shima
「1階の内部空間は、可変的に使えることを前提にしたレイアウトです。黒とグレーを基調にした配色は、近年のリンナイにとって重要なプロダクトシリーズである〈G:LINE〉からイメージされる重厚感、質実剛健さがもとにしました。
1階のプロダクトはこのほかに、高機能給湯システム〈マイクロバブルバスユニット〉とハイブリッド給湯器〈ECO ONE(エコワン)〉だけで、ショールームとしてはかなり大胆に絞り込んだ展示です。バスエリアのさらに奥は、ぐるりとプロダクトを見ていく回廊のような空間となっています」(二俣氏 談)

バスルームおよび給湯器関連プロダクトのエリア photo by yansu
浴槽と壁はテラゾー仕上げ。奥の空間は向かって右側から入り、ぐるりと1周しながら、〈ウルトラファインバブル〉や〈マイクロバブルバスユニット〉などの製品の機能を体感として伝える

従来のショールームのイメージとは異なる、ホテルのラウンジのような空間 photo by yansu
「今回のプロジェクトは、人々の豊かな暮らしを施設全体で提案するというものでしたので、全体の大きなテーマとして、この場所を訪れて使ってくださる方々に心地よく過ごしてほしいという願いがありました。大型のラウンジチェアをたくさん配置しているのもそのためですし、入ってきたときに最初に見える、いわば〈リンナイ青山〉の”顔”として、マーブル模様のカウンターを長尺の9mというボリュームで置いています。大判のセラミックストーンがもつ高級感、美しさやモノとしての迫力だけでなく、リンナイの主力製品であるガス給湯器を実際に使える機能をもたせています。湯を沸かして淹れたてのコーヒーを提供したり、食に関するイベントなどでの利活用を前提に設計しました。」(二俣氏 談)

リンナイ青山 1階フロア
プレス内覧会時は淹れたてのコーヒーが提供された
1階フロアが、人々の流入をはかり、リンナイとしてのブランドイメージを伝えるパブリックな空間であるのに対して、4階はプライベート感が強まり、人々の「暮らし」を主軸に構成されてます。キッチン・ダイニング・リビングも備えた空間のほか、フロアの奥にはバスルームもしつらえられています。利用は完全予約制です。

靴を脱いで利用する4階フロア photo by Daisuke Shima
「1階は、リンナイのプロダクトに触れて、体験してもらうことが主題でした。人々を受け入れ、ときにはコミュニケーションもはかる、アクティブな空間でしたが、この4階では、リンナイのプロダクトをふだんの生活のなかで使っていくことをより深く体感できる空間を目指しました。キッチン・ダイニングで少人数で調理して、食べて、食後はドリンクを手にリビングのソファでくつろいだり、天気がいい日はテラスに出てみたり。さまざまなイベントで使えると思います。もちろん1階も多目的な使い方を想定してはいるのですが、ここではより生活感のあるしつらえを意識しました。柔らかい色調とし、左官や木による仕上げや、厳選して配置した家具や小物類など、かなりこだわったインテリアとなっています。」(二俣氏 談)

4階フロア photo by Daisuke Shima
「これまでにも、企業のショールームの空間設計をいくつか手がけていますが、近年は、ある程度のフレキシブルさをもたせてオープンにしたいという要望が増えてきたように思います。それに対して、今回のプロジェクトでは、クリエイターチームによって施設の性格なり方向性がかなり練られていて、僕らはその与条件からの読み解きをどう空間に反映していくかを考えました。かなり大胆な提案にもクライアントがGOサインを出してくれています。そのほかにも、上質なマテリアルを使ったり、職人による高度な仕上げもあって、人々の豊かな暮らしを提案する、上質な空間になったと思います。」(二俣氏 談)
*クリエイターチーム
クリエイティブディレクター:服部友厚(CASADUY)
ブランドディレクター:今村玄紀(B&H)
コンテンツディレクター:藤本美紗子(inu)
プロジェクトマネージャー:船橋友久(COPILOT)
アートディレクター:富田良祐(B&H)
スタイリング:竹内優介
設計:ケース・リアル(二俣公一、下平康一、久保山実暉)
照明計画:中村達基(BRANCH LIGHTING DESIGN)
植栽計画:高浦裕子(GREENETTA)
施工:美留土
Rinnai Aoyama Concept:熱と移ろい
熱が巡り、人が交わる。
移ろいの中で新たな価値が生まれる
集いの場。
物質を構成する原子や分子は常に運動しており、
私たちはその運動の激しさを「温度(=熱)」として感じとります。
この施設は多様な人々が集い、
交流していくことによって、
熱が巡り伝導していく場所となることを目指します。
ここで伝えられた熱が、移ろうことにより
新たな熱を創造し、未来へとつながることを
願っています。
所在地:東京都港区南青山4-18-11 フォレストヒルズイースト1F・4F(Google Map)
営業日:火曜~土曜
営業時間:10:00-17:00
定休日:日・月曜、祝日、ゴールデンウィーク・夏季休暇・年末年始
利用方法:一部予約制(オープンスペースなどの一部フロアは予約不要)※詳細はウェブサイトを参照
※4階フロアで展示中の国内外メーカー:Aria & Aura、F-FURNITURE、eggersmann
Rinnai Aoyama ウェブサイト
https://aoyama.rinnai.jp/