石川県金沢市にある谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館にて、1960~70年代の建築界にみられた潮流の1つ、「デザイン・サーヴェイ」にスポットをあてた展覧会が開催されています。
会期中、関連イベントや、同館学芸員によるガイドツアーも併催されます。

京都府伊根町「伊根亀山」の写真 提供:明治大学建築アーカイブス
1960~70年代にかけて、数多くの建築関係者が日本全国の街並みを調査し、建築系雑誌に図面や図解などの実測・調査成果を発表した一連の活動は「デザイン・サーヴェイ」と呼ばれています。特に、オレゴン大学と、建築史家・建築評論家の伊藤ていじ(1922-2010)による金沢・幸町の調査は、「デザイン・サーヴェイ」という言葉が充てられた国内初の事例であり、今年はこの調査が『国際建築』誌上で公開されてから60年を迎えます。
本展では、全国各地で行なわれた膨大な調査記録の中から、「デザイン・サーヴェイ」の潮流の中心を担った事例をいくつか紹介しています。幅3mを超す大判の紙面に精緻に描かれた図面や、生き生きとした当時の写真などからは、「ヴァナキュラー(その土地固有のもの)」を追い求めた建築家たちの熱意が伝わってきます。調査手法や図面表現の試行錯誤とその成果を通じて、集落や都市を記録し分析することへの現代的な意義についても考えさせられることでしょう。

愛媛県愛南町「外泊(そとどまり)」の写真 提供:水野一郎
第1章:デザイン・サーヴェイのはじまり
デザイン・サーヴェイの前史としての民家・集落調査の紹介と、オレゴン大学と伊藤ていじによる金沢・幸町調査を図面や写真、掲載誌から紹介
主な展示物:
今 和次郎『日本の民家』掲載用複製原図など、民俗学調査資料
バーナード・ルドフスキー『ARCHITECTURE WITHOUT ARCHITECTS』
オレゴン大学 金沢・幸町調査複製原図

大判図面「金沢 幸町 全体屋根伏図」 所蔵:金沢工業大学建築アーカイヴス研究所
第2章:建築界が取り組んだデザイン・サーヴェイ
デザイン・サーヴェイの中心的な役割を担った、明治大学神代雄一郎研究室、法政大学宮脇檀ゼミナール、東京藝術大学の3グループを通して調査の多様性を紹介
主な展示物:
明治大学 神代研究室「伊根亀山」デザイン・サーヴェイ図面、写真、掲載誌
法政大学 宮脇ゼミ「馬籠」デザイン・サーヴェイ図面、写真、掲載誌
東京藝術大学「外泊」「白毫寺」デザイン・サーヴェイ写真、掲載誌

展示の様子
第3章:非戦災都市・金沢を調査した東京工業大学
東京工業大学[*]の篠原一男(1925-2006)と平井 聖(1929-)の両名の研究室が実施した、金沢の古い街並みに着目した調査について紹介、建築家と建築史家の調査アプローチの違いが浮かび上がる
主な展示物:
東京工業大学 篠原研究室「金沢・観音町」調査図面、写真
東京工業大学 平井研究室「旧東のくるわ」調査図面、野帳、写真
*.東京工業大学:2024年10月に東京医科歯科大学と統合、東京科学大学(Science Tokyo)と改称

大判図面「金沢 観音町 全体平面図」 所蔵:東京科学大学
第4章:現代に続くデザイン・サーヴェイの遺伝子
約10年の一時の潮流に終わったデザイン・サーヴェイの精神や技術を受け継いでいる活動のうち、街並み調査にデザイン・サーヴェイの手法が用いられた2つの事例を紹介
主な展示物:
法政大学宮脇ゼミ「丹波篠山」デザイン・サーヴェイ図面、写真
工学院大学伊藤ていじ研究室「倉敷」調査図面

展示の様子
会期:2026年6月20日(土)~10月18日(日)
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(休日の場合は翌・平日休館)
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館(企画展示室)
所在地:石川県金沢市寺町5丁目1-18(Google Map)
観覧料(常設展観覧料を含む):一般 1000円、大学生・65歳以上 800円、高校生以下無料
主催・企画:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館(公益財団法人金沢文化振興財団)
監修:青井哲人(建築史家、明治大学教授)
協力:金沢工業大学、工学院大学、東京科学大学、東京藝術大学、明治大学
後援:北國新聞社

建築フォーラム1
開催日:2026年7月25日(土)※終了
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館
登壇者:ヨコミゾマコト(建築家、東京藝術大学美術学部建築科教授)、惠谷浩子(風景学者、奈良文化財研究所景観研究室室長)、青井哲人(建築史家、明治大学教授、本展監修)※オンライン参加
司会:三宅理一(谷口吉郎・吉生記念金沢建築館館長)
建築フォーラム2
日時:2026年8月22日(土)18:00-20:00
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 企画展示室1
定員:30名程度(事前WEB申込・先着順)
登壇者:八束はじめ(建築家・建築評論家、芝浦工業大学名誉教授、都市デザイン研究体II)、鳥羽耕史(文学研究者、早稲田大学文学学術院教授)、青井哲人 ※オンライン参加
司会:三宅理一
館内ガイドツアー
同館学芸員による常設展・企画展の展示案内
開催日(終了日を含む):7月19日(日)、8月15日(土)、9月20日(日)、10月17日(土)
時間(各日共通):14:00-15:00
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 企画展示室
参加費:当日有効の企画展観覧チケットが必要
定員:なし・事前申込不要
谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 ウェブサイト
https://www.kanazawa-museum.jp/architecture/
谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館について
金沢市立の建築ミュージアムとして2019年7月オープン。金沢出身の建築家・谷口吉郎の住まい跡地に、吉郎の息子である建築家の谷口吉生が設計して建設された。常設展として、吉郎の代表作である迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室を再現しているほか、建築や都市をテーマとした企画展を開催している。