全長280mの仮囲いがアートウォールに
2021年5月4日初掲、11月18日正式名称決定
東京・新宿歌舞伎町で進行中のプロジェクト「歌舞伎町一丁目地区開発計画(新宿TOKYU MILANO再開発計画)」の現場の工事用仮囲いを使って、劇場版アニメ「エヴァンゲリオン」とも連動した開発好明氏の作品と、新宿とゆかりの深い写真家の森山大道氏の写真群「SHINJUKU」がアートウォールとして公開されています。
かつてこの地には、映画館「新宿ミラノ座」などがあり、半世紀以上にわたって新宿の文化の一端を担い、変遷を歩んできました。ミラノ座は2014年に閉館。2022年度の竣工を目指して、建築家の永山祐子氏がデザインしたファサードをまとった新たな高層複合施設が建設中です。工事期間中も、新宿の街の魅力と文化を絶やさず、新しい時代の創生への祈りをこめて、「再生 / 新生」をテーマに企画されたアートプロジェクトです(主催: TSTエンタテイメント、ソニー・ミュージックソリューションズ / 2021年4月5日プレスリリース)。
森山氏のフィールドワーク「新宿」の作品群が歌舞伎町に
全長280mの仮囲いで展開する「新宿アートウォールプロジェクト」の一環として今回、展示された森山大道氏の作品群は、写真集『新宿』や『ニュー新宿』などから、新宿の街の姿を切り取った未発表の作品を含む合計29点。南側と西側の工事仮囲いの壁面に配置し、都会の空気を感じながら鑑賞できる屋外ギャラリーとなっています。
森山大道(もりやま だいどう)プロフィール
1938年大阪府生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は“アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。ニューヨーク・メトロポリタン美術館やパリ・カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど世界的評価も高い。
森山大道氏コメント(引用):
“現在新宿の街は、現実と仮想、逸楽と哀感が夜に日に錯綜し、蝟集する群衆が雑多な欲望を抱えてさまよう、巨大なスタジアムと化している。そして新宿という街ほど、坩堝とか煉獄といった言葉がよく似合う所はない。”
[森山大道『新宿』(月曜社、2002年)より / 引用:TSTエンタテイメントプレスリリース]
エヴァンゲリオン×開発好明
「新宿アートウォールプロジェクト」では、森山作品の展示に先行して、開発好明氏による、アニメ「エヴァンゲリオン」の世界観を表現したアートウォール《Evangelion Styrofoam》がすでに展開されています。
開発好明氏(かいはつ よしあき)プロフィール:
1966年山梨県生まれ。東京都在住。多摩美術大学大学院美術研究科修了、多摩美術大学非常勤講師。1995‐96年にかけて365日の展覧会「365大作戦」を全国で行い、その模様をNHK BS「真夜中の王国」の「開発くんが行く」で放映。2002年にPSI MOMA「Dia del Mar/By the Sea」、2004年にヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館「おたく:人格=空間=都市」、2006年にドイツ、ニューナショナルギャラリー「ベルリン-東京、東京-ベルリン」参加。同年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」、2008年イギリスのリバプール「Jump Ship Rat“POP-UP”」出品。2016年市原湖畔美術館「開発好明:中2病展」。2019年東京都現代美術館「あそびのじかん」出品。東日本大震災後、被災地におけるプロジェクトをライフワークとして継続中。
開発好明 展示作品《Evangelion Styrofoam》について:
2019年12月に東側、2020年6月に北側と、段階的に展示。発泡スチロールなどによる梱包材の形状をモチーフに、エヴァンゲリオンの世界観を表現したもの。全長約77mにおよぶ壁面に沿って歩きながら鑑賞することを意識したこの作品は、Webサイトでもスクロールで楽しめるほか、3Dの仮想空間に設置されたウォールを歩きながら見られる「Walk Along vers.」も公開中。
さらに本作品は、エヴァンゲリオン公式アプリ「EVA-EXTRA」のARカメラをかざすと、“エヴァ文字”のメッセージボードが浮かび上がるARメッセージ(シン・エヴァンゲリオン劇場伝言板 AR出現計画)とも連動している。
開発好明氏コメント:
「映画のスクリーンや絵画のサイズなど、人間の視覚に入りやすい大きさってありますよね。でも仮囲いは視覚からはみ出すサイズ。それをどうドラマチックに見せるか考えて、《歩きながら鑑賞する》という体験を目指しました。はじめにエヴァの全体像が見えて、そこから手が後方に流れていく。その先にプラグがあり、ケーブルの流れが続くというように、人の身体と視線を誘導していくようにつくりました。遠景と近景それぞれのおもしろさを、身体的な移動で実感してもらえたら嬉しいですね。」
両氏の作品はWebでも公開
2021年4月5日に完了した森山作品の追加展示をもって、今回の「新宿アートウォールプロジェクト」は完成。森山・開発の両氏の作品は、プロジェクトの特設Webサイトでも公開されています。
「シン・エヴァンゲリオン劇場伝言板 AR出現計画」概要
期間:2022年3月(予定)まで
URL:https://ar.evangelion.co.jp/
「新宿アートウォールプロジェクト」開催概要
会期:2021年4月5日(月)~2022年初夏(予定)
場所:歌舞伎町一丁目地区開発計画建設予定地、および特設Webサイト上
主催:TSTエンタテイメント、ソニー・ミュージックソリューションズ
「新宿アートウォールプロジェクト」特設Webサイト
https://shinjuku-artwall.com/
「歌舞伎町一丁目地区開発計画」概要
「歌舞伎町一丁目地区開発計画」は、東京急行電鉄と東急レクリエーションが事業主体となって進めている再開発プロジェクトです。地上48階+地下5階+塔屋1階、高さ約225mの高層複合施設を整備するもので、2019年8月に本格着工しています(以下の3点のイメージビジュアルは、東急2019年8月5日プレスリリースより)。
計画では、映画館・劇場・ライブホールなどのエンターテインメント施設が入るほか、東急ホテルズの出店が先ごろ発表されています。
ファサードは永山祐子氏がデザイン
建築設計は、久米設計・東急設計コンサルタント設計共同企業体。建物外装デザイナーを永山祐子氏(永山祐子建築設計主宰)が務め、ファサードと照明のデザインなどを担当します。
建設が進む現場では、永山氏がデザインしたファサードも姿をあらわしています。
セラミックプリントを施したファサード
ガラスのファサードは、太陽光の反射をコントロールすることも兼ねた永山氏のデザインで、外側のガラスの表面(第1面)に、セラミックプリントでグラデーションのミリ単位の細かいパターンを施しています。
セラミックプリントを外装に用いるのは、永山氏が長年温めてきた念願のプラン。ファサードにも使用できる高耐候の塗料を採用し、グラデーション印刷とガラスの角度によって、ガラスの反射をデザインし、さらに周辺ビルへの光の反射を抑える試みとのこと(永山祐子氏 facebook 2021年3月24日投稿より)。
竣工予定は2022年度
東急ホテルズが運営する宿泊施設には、地上100メートルを超えるルーフトップができる予定で、高層階にはアートや音楽といった新宿の街の文化をイメージした客室もしつらえられます。
これらの施設整備とあわせて、地域のまちづくりへの貢献として、リムジンバスの乗降場整備や、西武新宿駅前通りのリニューアルなどを実施。隣接する歌舞伎町のシネシティ広場を中心とした公共空間と、本施設が一体となったエリアマネジメントを「歌舞伎町タウン・マネージメント」と連携して実施し、まちの回遊とにぎわいを創出していく予定とのこと。
竣工は、東急電鉄創業100周年を迎える2022年度内(2023年1月)を予定しています。(en)
「歌舞伎町1丁目地区開発計画(新宿TOKYU MILANO再開発計画)」
https://www.tokyu-recruit.jp/news/?p=115
コンセプトは「“好きを極める場”の創出」
施設のブランドロゴと、施設名称を「東急歌舞伎町タワー」に決定したことを東急および東急レクリエーションが発表(2021年11月18日プレスリリース)。
コンセプトは「“好きを極める場”の創出」。竣工は2023年1月11日、開業は同年春を予定。