2021年5月28日初掲、6月28日 3DビューURL追記[*2]
英国・ロンドンのジャパン・ハウス ロンドンにて、テキスタイルデザイナー須藤玲⼦氏の展覧会「MAKING NUNO Japanese Textile Innovation from Sudō Reiko 須藤玲⼦:NUNO の布づくり」が2021年5月17日よりスタートしました(プレスリリース)。
ジャパン・ハウスは、日本の外務省が、ロンドンのほか、米国サンパウロとロサンゼルスに設置した、日本文化の発信拠点です。アールデコ調の歴史的建造物の3フロアに、ギャラリー・ショップ・カフェ・レストラン・ライブラリーを備えています。
テキスタイルブランド・NUNOのディレクターとして、長年にわたり、独⾃の布づくりに取り組んできた須藤氏。本展は、2019年に⾹港のアートセンターCHATで開催され、⼤きな成功を収めた展覧会[*1.仔細後述]をベースにしながら、須藤氏のクリエイションのサステナブルな側⾯に特に焦点をあてたものです。
本展のアートディレクションを、パノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)の齋藤精⼀氏が担当。2018年に国立新美術館で開催され、話題を呼んだインスタレーション「こいのぼりなう!」でもタッグを組んでいる齋藤氏による、⾳と光、映像を交えたインスタレ−ションで、⼯場での⽣産⼯程を再現するほか、アイデアの源泉となる素材、スケッチ、プロトタイプなどを展⽰し、その⾰新的な布づくりの全貌に迫ります。
須藤 玲子 / Reiko Sudō プロフィール
茨城県石岡市生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイル研究室助手を経て、株式会社 布(NUNO)の設立に参加。現在取締役デザインディレクター。
英国UCA芸術大学より名誉修士号授与。2019年より東京造形大学名誉教授。2008年より良品計画のファブリック企画開発、鶴岡織物工業協同組合、株式会社アズのデザインアドバイスを手がける。2016年無印良品アドバイザリーボードに就任。
主な受賞に、毎日デザイン賞、ロスコー賞、JID部門賞など。
日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術までを駆使し、新しいテキスタイルづくりをおこなう。作品は国内外で高い評価を得ており、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ビクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館等に永久保存されている。
代表作にマンダリンオリエンタル東京、東京アメリカンクラブ、大分県立美術館のアトリウムのテキスタイルデザインなどがある。2018年国立新美術館にて大規模なテキスタイルインスタレーション「こいのぼりなう!」、2019年香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)にて「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」を開催。そのほか国内外の数多くの展覧会に出品。
NUNO公式Webサイト http://www.nuno.com/
齋藤精⼀ / Saitō Seiichi プロフィール
1975年神奈川県生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。Omnicom Group傘下のArnell Groupにてクリエイティブ職に携わり、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでのアーティスト選出を機に帰国。フリーランスのクリエイターとして活躍後、2006年ライゾマティクス(現:アブストラクトエンジン)設立、2016年よりRhizomatiks Architectureを主宰。2020年組織変更により、Rhizomatiks Architectureはパノラマティクス(Panoramatiks)と改め、俯瞰的な視点でこれまで繋がらなかった領域を横断し組織や人を繋ぎ、仕組みづくりから考えつくるチームを立ち上げる。パノラマティクス主宰。
行政や企業などの企画や実装アドバイザーも数多く手がける。2018-2021年グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイターなど。
パノラマティクス Webサイト https://panoramatiks.com/
本展のみどころのひとつが、蚕が繭をつくるときに最初に吐き出す太くて硬い⽷「きびそ」をつかった、鶴岡シルク(⼭形県)とのプロジェクトの展⽰です。
須藤氏のサステナブルな布作りに注⽬した展示で、「きびそ」はこれまで、織物には不向きな素材として廃棄されていましたが、須藤氏が率いるNUNOでは、これを細い⽷に加⼯する技術開発に成功。原材料を無駄なく⽤いて生み出されたテキスタイルは、独特の張りと天然の保湿性、抗菌性を備え、環境負荷を抑えられるだけでなく、魅⼒ある新たな素材として、普及を進めています。
また、本展では、伝統的な染織技術を最新の素材や製造技術と融合することで、独創的なテキスタイルを⽣み出す須藤氏の⼿法についても、持続可能性(サステナブル)という観点から再定義を試みています。
須藤氏と、全国の⼯場や職⼈とのコラボレーションは、その多くが存続の危機に瀕している⽇本の染織産地の産業としての可能性を拡げ、時代に即した技術の伝承を促すサステナブルな取り組みであるといえます。
会場ではそれらの事例として、箔押しやちりめんの技法を独⾃の解釈で布づくりに⽤いている京丹後での取り組みや、熱によって収縮する⼯業⽤素材を活⽤した〈ジェリーフィッシュ〉の製造⼯程などを紹介します。
span style=”font-size : x-small”>#Japan House London YouTube公式チャンネル「Online Event: Tango Chirimen – Factory Visit & Conversation」(2021/05/14)
本展では、上記の動画・京丹後ちりめんを製造する田勇機業のオンライン見学ツアーのほかにも、関連イベントも多数開催。鶴岡にある「きびそ」のオンライン⼯場⾒学会「Kibiso – Textile Sustainability in Yamagata: Workshop Visit & Conversation」も開催されます(後日アーカイブ映像公開あり)。
また、本展に先行して4月に行われた、須藤氏や齋藤氏ら関係者によるオンライントークイベントの内容が、Japan House Londonの公式ウェブサイトおよびYouTube公式チャンネルにてアーカイブとして公開されています。
会場のウォークスルー3D映像も、近日中に公開される予定とのことです[*2]。(en)
*2.Explore the innovative work of textile designer Sudō Reiko in this virtual exhibition of MAKING NUNO
https://www.japanhouselondon.uk/discover/exhibition/making-nuno-virtual-exhibition/
会期:2021年5⽉17⽇(⽉)〜7⽉11⽇(⽇)
会場:Japan House London(英国・ロンドン / 101-111 Kensington High St, London W8 5SA / Google Map)
⼊場無料(予約制)
詳細:
https://www.japanhouselondon.uk/whats-on/2021/exhibition-making-nuno-japanese-textile-innovation-from-sudo-reiko/
※本稿の画像は、出展関係者近影と特記あるものを除き、全てジャパン・ハウス ロンドンに帰属する(©︎ Japan House London)
*1.CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)
香港にて、戦後から2008年まで操業されていた紡績工場、南豐紗廠(南豐テキスタイル)をコンバージョン。近代産業遺産保存プロジェクトの一貫として創立された、非営利のアートセンター。2019年に本展のベースとなる展覧会「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」を開催。同展のキュレーションを、同センターのエグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・キュレーターで、元水戸芸術館主任学芸員の高橋瑞木氏が担当した。
CHAT 公式Webサイト https://www.mill6chat.org/