火災で発生した煙や高熱を感知し、警報を発して知らせる住宅用火災警報器。消防法改正により、2006年6月1日から既築・新築を問わず、戸建・共同・アパートも含めた500m²以下の住宅には設置が義務付けられています。
戸建住宅の場合、寝室と階段に必ず設置しなくてはならない機器ですが、住宅を設計する側や住まい手とすれば、あまり目立ってほしくない、というのが正直なところ。
その機器本体の色はといえば、ほぼ白色(ホワイト)の1択。インテリアコーディネートどころか、そもそも選択肢の幅がありませんでした。
そんな従来の「常識」を打ち破る、BLACKの住宅用火災警報器(以下、一部で住警器と略)が、パナソニックから2022年5月に発売されました[*1]。業界では初のカラーで、ありそうでなかった「BLACK住警器」の登場です(*注1.ワイヤレス連動型煙子器のみ)。
「BLACK住警器」の開発の背景について、パナソニック エナジーシステム事業部マーケティングセンターの清家大志氏に話を聞きました。
これを読めば、住宅の新築ないしリフォーム・リノベーションでは避けて通ることのできない、住宅用火災警報器の知識が深まります。
「これまでの住宅用火災警報器(住警器)といえば、白が無難という捉え方でした。家庭用電化製品に”白物家電”というパワーワードがあるように、業界全体でみても、白色の人気は昔から高いものでした。ところが、ライフスタイルの多様化などにより、黒色やグレー色といったダーク系商材の人気が、この2年ほどの間に高まってきたのです。例えば、同じ電設資材でみると、当社で販売しているスイッチ・コンセントの配線器具ブランドのうち、SO-STYLE(ソー・スタイル)では2年で約4倍、アドバンスシリーズでは約2倍という、明らかな販売増がみられました。」(パナソニック 清家氏談)
住警器のラインナップでは、これまでに和の空間に対応した薄茶系の「和室色」はありましたが、そのほかは白色しか用意がありませんでした。
「グレーや黒色といったモノトーン色の人気の高まりを受けて、住警器について改めて調べてみると、黒色があるとよいという意見や、既製品にないのならいっそ自分で黒く塗りたい[*2]といった、こだわりをもって住警器を選ぼうとする人々がいることがわかりました。」
*2.購入後の上塗り塗装は、消防法の遵守から外れるため、製造・販売元では推奨していない
「現代のインテリアのしつらえで人気の高いモノトーン調や、温かみのある木目調の場合、白色の住宅用火災警報器を天井ないし壁に設置すると、そこだけ浮いてしまって、違和感が出てしまうのですね。落ち着いたダーク色ならば、しっくりと空間に馴染みやすい。インテリアに馴染む色・デザインの住警器があると良いといった市場要望は、実はこれ以前から寄せられていたので、満を持しての開発でした。」(パナソニック 清家氏談)
おりしも、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響もあり、自宅で過ごす時間が増えた人々の関心が、居室空間やインテリアへと向けられたことも、発売への追い風となりました。
「検討段階ではグレー色もあったのですが、住警器ともに空間を構成する照明器具、ペンダントのカバーの色は、グレー色よりも黒色系が多いことなどを考慮して、ユーザーがトータルでコーディネートしやすいBLACKでのリリースとなりました。」(パナソニック 清家氏談)
今回の取材では、住宅用火災警報器のプロの清家氏に「今さら聞けない住警器のあれこれ」についてレクチャーを受けたので、要点をまとめておきましょう。
まず、電源は、有線の100V式のものと、ワイヤレスの電池式があり、現在は施工性の良さから業界全体でも後者のみの販売となっているとのことです。
さらに、火災発生の感知方法には「煙式」と「熱式」があり、基本的には「煙式」を設置し、火災以外の煙で警報を発する恐れがある台所(キッチン)には「熱式」を設置するといった使い分けが多いとのこと。[*3]。
*3.市町村条例によっては、台所やその他の居室に住警器の取り付けが義務付けられている場合あり
設置率は、全国平均で84.0%(出典:総務省 住宅用火災警報器の設置率などの調査結果 令和4年6月1日発表)で、意外にも、100%ではありません。つまり、未設置の数ほど、住警器の需要があるといえます。
国内シェアは、パナソニックが約45%で、トップシェアを誇ります。後述するワイヤレス連動型住警器では83.0%と、圧倒的なリーディングカンパニーがパナソニックです(数字は2020年度同社調べ)。
同社の強みは、デザイン面だけでなく、家庭用家電製品を幅広く展開し、かつ、HEMS(ヘムス)[*4]に代表されるスマート住宅の開発など、長年にわたり培ってきた技術力にあります。同社が展開するそのほかのIoT機器類やシステムとの連携がとりやすいのです。
*4.Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略称。家電や電気設備とワイヤレスでつなぎ、電気やガスなどの使用量をモニター画面で「見える化」、家電機器を「自動制御」するしてステムを指す。日本政府は、2030年までに全ての住まいにHEMSを設置することを目指している(平成24年 内閣官房 国家戦略室「グリーン政策大綱」より)
「BLACK住警器」を含む上位機種は、例えば、1階に設置した機器が火災を探知すると、2階の機器も同時に反応して鳴動を始めるワイヤレス連動型です。
さらに、例えば「リビングで火事です」と火元を音声で知らせるとともに、本体に備えられたあかり(白色LED)が点灯、夜間の避難を助けます。これらはパナソニック独自の機能となります。
「消防庁発表の消防白書によれば、住宅火災は年間約1万件ほど発生しており、約1,000人ほどが亡くられています(放火を除く)。年齢別では65歳以上の高齢者が多く、また、火災の発生も深夜0時から早朝6時の就寝時間帯が多いなど、避難が遅れてしまうことがわかっています。火災の早期発見、早期避難の機能を備えた当社の住警器は、早めの避難を促し、不幸な事故を防ぐ一助になると考えています。」(清家氏談)
さらに、オプションでAiSEG2(アイセグツー)との連携も可能。パナソニックのアドバンスシリーズ照明が採用された住宅であれば、火災探知と同時に、家中の居室の照明が一斉に点灯。これは後から設置した場合も有効です。
さらに、住警器の故障や電池切れといったメンテナンス情報や、火災時の発報をスマートフォン端末などに通知してくれるのも便利なポイントです。これらもパナソニック独自の機能となります。
住宅用火災警報器のデザインで課題となるのは、本体のサイズ、とりわけ天井面からの厚みです。清家氏によれば、設置が義務化された当初の住警器では、本体の厚みが出て目立ってしまうことが課題でした。
それでも、パナソニックでは、BLACKを含めて発売中の電池式ワイヤレス連動型の住警器において、業界最薄の25mmを実現しています。
「天井面のでっぱりというのは、設計士も住まい手も気になるポイントとして挙げられています。『ほんのりライト』の部分も含めて、下から見上げた際にできるだけフラットになる、シンプルなデザインを心がけています。」(清家氏談)
#パナソニック公式YouTubeチャンネル「住宅用火災警報器 ワイヤレス連動型(AiSEG2連携)のご紹介」(2022/06/07掲載後、2023/11/08更新)
パナソニックによれば、住宅用火災警報器の多くは内蔵電池の寿命が約10年に設定されていることや、内部部品の劣化などにより、10年をめどに本体ごと交換するのが望ましいとのこと(一般社団法人日本火災報知器工業会推奨)。
消防法改正後に設置された住警器の出荷のピークは2008年。設置から10年以上の住警器の台数は業界全体で8,640万台と、同社では試算しています(2006年から2011年の販売台数、取り替え済みのものを含む)。
新築物件に限らず、昨今のリノベーション需要の高まりを考えれば、住宅用火災警報器の設置ないし取り替え需要のパイは潜在的に大きいとみていいでしょう。
最新型の「BLACK住警器」の気になる価格は10,650円(消費税別)。既存の煙式子器よりもプラス950円に抑えられています。
住宅の新築ないし改修の際、必ず複数個の設置が必須となる住警器、ありそうでなかったBLACKのラインナップは、住空間をトータルでコーディネートしたい設計者ならびに住まい手にとって、嬉しい選択肢の拡がりです。
発売後の結果は上々、「こんな黒い住警器が欲しかった!」という声が寄せられ、目標を上回る売上げ初速をみせているとのことです。
品番:SHK42422B
種別:煙式
色:BLACK
仕様:電池式・無線式連動型(AiSEG連携機能付)
警報音:音声警報
本体価格:10,650円(消費税別)
発売開始:2022年5月21日
製品詳細ページ(施工設定動画など公開)
詳細
https://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/ha/residential-fire-alarm/products/wireless_light.html
実物サンプルを抽選で300名様にプレゼント!
スマートなデザイン、クールなBLACKの住宅用火災警報器の設置イメージを確認できます(注.実際に住警器として使用することはできません)。
・サンプル申込期間:2022年8月22日(月)~9月4日(日)※終了
・応募はお1人様1回のみ有効
・サンプルボードの発送をもって当選者を発表