西欧を中心に日本を含む世界各地でさまざまなモダンのかたちが現われた1910年代から30年代。本展では、この時代に生まれたさまざまなジャンルのデザインを一堂に会して紹介し、相互の関係性などもあわせて明らかにしていきます。
本展は、豊田市美術館、島根県立石見美術館、東京都庭園美術館の3館の共同企画によるもの(各館を巡回)。各館のそれぞれのコレクションを核としながら、3館の所蔵品を積極的に活用した展示構成が特徴で、1910~30年代の絵画や彫刻、家具やファッション、デザインなど約400点が一堂に会します。
巡回の最後を飾る東京都庭園美術館では、1933年(昭和8)に竣工した”アール・デコの館”こと旧朝香宮邸の本館と、同時代の空気を共有する品々とのコラボレーションも見どころです。
機能主義に基づく「モダニズム」は、いまなお当時の中心的な動向とみなされています。その一方で、大衆消費社会が進展したこの時代は、常に新しくあるために装飾することに価値が置かれた、儚き「モダニティ」の時代でもありました。
対立的に捉えられがちなこの「2つのモダン」は、周辺にあるモダンのかたちを内包し、複雑に関係しながら、多様で濃密な1つの時代をつくり上げました。現在のようにインターネットが普及していない時代でしたが、当時の作家たちは、意外にもさほどの時間差なく情報を共有し、国やジャンルを越えて同期し合っていたことがわかっており、本展の展示を通じても浮かび上がります。その影響の範囲は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、その外側にある建築や都市にまで及び、当時の人々の生活空間を彩っていました。
建築家のヨーゼフ・ホフマン(1870-1956)とデザイナーのコロマン・モーザー(1868-1918)が中心となって設立され、20世紀初頭に活動を開始したウィーン工房は、フランスのファッションデザイナーであるポール・ポワレ(1879-1944)と互いに刺激し合い、さらには、ロベール・マレ=ステヴァン(1886-1945)など同国のモダニストのみならず、遠く東洋の日本で活躍した森谷延雄(1893-1927)や斎藤佳三(1887-1955)の仕事にも影響を与えました。
また、ロシア出身でフランス・パリで活躍し、同時性絵画で知られるソニア・ドローネー(1885-1979)はファッションの仕事に専心し、フランスのデザイナーで建築家のルネ・エルブスト(1891-1982)らは都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を払いました。
この年代のデザインを考えるうえで欠かすことのできないドイツのバウハウスでは、女性作家が織物に新たな光をあて、ナチス・ドイツの台頭などにより数度の移転を余儀なくされた同校を離れた作家たちは、やがてブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校を舞台に応用芸術教育に取り組むことになります。
1914年に勃発した人類史上初の世界大戦が象徴するように、この時代の最大の出来事は、世界が一気に”同期した”ことでした。急速に変化する社会のなかで、作家たちがときに交わり、共鳴しながら、探求したいくつものモダンのかたちを紹介する展覧会です。
展示構成
Chapter1: 1900-1913
1-1 ドイツ応用芸術とウィーン工房の転換期
1-2 ポール・ポワレとウィーン工房
1-3 ポール・ポワレとフランスファッション
1-4 フランスにおける室内装飾の新傾向Chapter2: 1914-1918
2-1 ダゴベルト・ペッヒェと大戦期ウィーン工房
2-2 フランツ・チゼックとウィーン美術工芸学校Chapter3: 1919-1925
3-1 女性作家たちのウィーン工房
3-2 日本における生活改善運動
3-3 フランスにおける新旧室内装飾
3-4 戦後フランスファッションの展開
3-5 都市芸術 通りの芸術
3-6 装飾と抽象
3-7 初期バウハウスChapter4: 1926-1938
4-1 デッサウ以降のバウハウス
4-2 バウハウスから離れて
4-3 UAM:フランスのモダンデザイン 4-4 ファッションのモダニズム
4-5 日本におけるモダンデザインの動向
近年に増築された新館でも、武蔵野美術大学美術館をはじめ国内の大学や美術館、ミサワホームのミサワバウハウスコレクションから貴重な出品となる資料が多数、ギャラリー1にて展示されます。
加えて、ギャラリー2では、1923年にフランスで制作された映画『人でなしの女』(マルセル・レルビエ監督、125分)が1日3回上映されます。
会期:2022年12月17日(土)~2023年3月5日(日)
開館時間:10:00-18:00
会場:東京都庭園美術館
所在地:東京都港区白金台5丁目21-9(Google Map)
休館日:月曜(祝日は開館し、翌日休館)、2022年12月28日(水)~2023年1月4日(水)
入場料:一般 1,400円、大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円、中・高校生 700円、65歳以上 700円
※小学生以下と都内在住在学の中学生は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方は介護者2名まで無料
※入場はオンラインによる予約制
展覧会インスタグラム @function_and_decoration
https://www.instagram.com/function_and_decoration/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
特別協力:東京国立近代美術館、東京藝術大学、ミサワホーム
協力:日本航空、ヤマト運輸
東京都庭園美術館ウェブサイト
https://www.teien-art-museum.ne.jp/
『TECTURE MAG』への感想など、アンケートにお答えいただいた方の中から、本展が見られるペアチケットを5組10名さまにプレゼントします。
受付期間:2023年1月8日(日)まで
※応募者多数の場合は抽選
※結果発表:チケットの発送をもって了
※発送に関する個々の問合せには対応しませんのでご了承ください
※発送完了後、都道府県を除く住所情報は削除し、データとして保有しません