BUSINESS

“世界一美しいコンビニ” 徳島県の〈未来コンビニ〉、限界集落再生への挑戦

BUSINESS2021.08.21

2021年8月21日初掲、8月25日受賞情報ほか追記[*2]

“世界一美しいコンビニ”をコンセプトに掲げて、2020年4月にオープンしたコンビニエンスストア〈未来コンビニ〉があるのは、徳島県の南西部の山あい、那賀郡那賀町木頭地区(旧木頭村)、居住人口は約200人の北川集落です。
木頭村(きとうそん)、木沢村、上那賀町、相生町、鷲敷町が合併して2005年に誕生した那賀町(なかちょう)は、標高1,955メートルの剣山(つるぎさん)を含む剣山地の南側に東西に広がり、地域の9割以上を森林が占める山間部にあります。
町全体の世帯数は3,776、総人口は7,809人(2021年3月末時点、那賀町行政サイト公表)の過疎地域です(参考:東京・千代田区の世帯数:37,866、2021年8月1日時点)

未来コンビニがある徳島県旧木頭村北側集落

徳島県と高知県の県境に位置する木頭地区(旧・木頭村)鳥瞰

画面中央は那珂川、右側の国道195号沿いに〈未来コンビニ〉を視認できる(道路を挟んで赤い屋根の木頭北側体育館の向かい)

町の西部・剣山南麓に位置する旧木頭村地域の人口は約1,000人。このうち65歳以上が人口の過半数を占め、いわゆる”限界集落”の1つとなっています。
森林面積の割合は97.9%、「四国のチベット」とも呼ばれ、かつては最寄りのコンビニまで車でも約1時間を要するような場所でした。

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉の立地は徳島県を東西に横断する国道195号線沿い

この木頭を世界に向けてデザインしていくことをミッションに掲げ、2017年9月設立されたKITO DESIGN HOLDINGS(KDH / 本社:徳島県那賀郡那賀町木頭)が、企画したのが〈未来コンビニ〉でした。過疎化と高齢化が進む、この地の人々の利便性向上となり、未来への懸け橋となり、子供のための場所にもなるようにとの想いを込めた店舗名です。

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉エントランス

〈未来コンビニ〉プロジェクトチーム
クリエイティブディレクション・グラフィックデザイン:鵜野澤啓祐(クリエイティブディレクター、KITO DESIGN HOLDINGS取締役、ヴィーナス・スプリング代表取締役)
建築・インテリアデザイン:コクヨ(佐藤 航 / クリエイティブデザイン部部長・チーフデザイナー)、GEN設計
施工:北岡組
運営:YUZU CAFE(KITO DESIGN HOLDINGSグループ)

未来コンビニ

店内の陳列棚はすべて木製で、木頭の大自然を思わせる温かみを感じる空間デザイン

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉カフェスペース(イートイン)

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉カフェスペース(イートイン)

木頭の名産品である柚子(ゆず)をイメージしたテーマカラーのイエローに、シックなグレーを配したモダンなデザイン。内外観の写真でもわかるように、〈未来コンビニ〉は”世界一美しいコンビニ”というコンセプトをデザインの力で具現化しています。
建物のまわりには、地面の乾燥や雑草・太陽光の反射や泥はねなどを防ぎ、やがては土に還元される樹皮チップを敷き詰めるなど、環境・自然との調和も計っています。

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉外観

〈未来コンビニ〉の建築デザインについて
“世界一美しいコンビニ”をコンセプトにデザインされた未来コンビニのある木頭(きと)地区は、西日本第2位の標高を誇る剣山をはじめ、標高1,000mを超える山々に囲まれ、その自然の豊かさから別名「四国のチベット」とも呼ばれています。また、柚子(ゆず)の原生林が多数存在し、日本で初めて柚子の接ぎ木に成功し柚子栽培を全国に広めた地でもあり、特産品「木頭ゆず」の品質の高さは国内外で高く評価されています。
この木頭の“自然との共生”が、未来コンビニのデザインテーマの1つです。

デザインの軸となるY字のトラス構造は、木頭の特産である柚子畑をイメージして設計され、明るいイエローに塗り分けられました。道路に面した壁一面をガラス張りにし、店舗の外には、経年変化を楽しめる国産の松の木の素材でできた水はけの良いウッドチップを敷き詰めることで、雨の多い木頭の美しい自然との一体感を店内からも感じられる設計となっています。
また、子供たちへの目線も設計に反映されています。店内の陳列棚は、子供たちや地元の高齢者の方が商品を手に取りやすいようにと一般のコンビニよりも低めに設計され、これにより解放感のある空間を実現しています。
店内奥は「木頭ゆず」のオリジナルメニューを体験できるカフェスペースや、子どもたちが様々な絵本や美しい木頭の映像を楽しめるエリアとして設計され、人々が気軽に集まれる交流の場として地元住民や観光客に愛されるとともに、木頭のアイコン的存在となっています。(KDHプレスリリースより)

その革新的なデザイン、情緒性などが高く評価され、〈未来コンビニ〉は、ドイツのデザインアワード「レッド・ドット・デザイン・アワード 2021」[*1]において、ブランド&コミュニケーションカテゴリのリテールデザイン部門の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」賞を受賞しています(KITO DESIGN HOLDINGS 2021年8月21日プレスリリース)
さらに、同じくドイツの建築デザインアワード「ICONIC AWARDS 2021」において、5つあるカテゴリのうち、建築部門(Architecture)の「Winner」を受賞したとのこと(KDH 2021年8月24日プレスリリース)[*2]

未来コンビニ

レッド・ドット・デザイン・アワード2021 ブランド&コミュニケーションカテゴリのリテールデザイン部門「ベスト・オブ・ザ・ベスト」受賞

*1.red dot design award(レッド・ドット・デザイン・アワード)とは
1955年設立。ドイツのデザイン機関であるノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンターが主催する国際デザイン賞。同じくドイツのiFデザイン賞、米国のインターナショナル・デザイン・エクセレンス賞(IDEA)と並んで世界三大デザイン賞の1つに数えられる。
過去2年以内に製品化されたデザインを審査の対象とし、20名以上の専門家によって、創造性・革新性・機能性・情緒性・品質などの観点から厳正な審査が行われる。カテゴリはプロダクトデザイン、ブランド&コミュニケーション、デザインコンセプトの3つがあり、各部門が付随。そのうち約500点が「レッド・ドット・デザイン」として選定され、さらに特に優れた革新的な作品に対し、各カテゴリごとに「ベスト・オブ・ザ・ベスト」が贈られる。審査結果は例年4月に発表。

「Red Dot Design Award」公式ウェブサイト(英語)
https://www.red-dot.org/

ICONIC AWARDS 2021

*2.「ICONIC AWARDS 2021」とは
ドイツのデザイン協議会が1953年より主催する、現代建築および関連するデザインに贈られるアワード。建築・インテリア・コミュニケーション・プロダクト・コンセプトの5つの部門カテゴリごとに受賞作品が選出され、「アイディア」「造形」「機能性」「差別性」「社会影響度」の5つの審査基準がある。各部門カテゴリにおいて優秀な作品から順に 「Best of Best」「Winner」「Selection」が授与されるほか、部門横断の総大賞として、その年に優れた建築デザインを多数設計したデザインチームを「デザインチーム・オブ・ザイヤー」として表彰している。

「ICONIC AWARDS」公式ウェブサイト(英語)
https://en.innovative-architecture.de/

未来コンビニ

〈未来コンビニ〉夕景

〈未来コンビニ〉を世に送り出したKITO DESIGN HOLDINGSの代表取締役を務める藤田恭嗣氏は、旧木頭村の出身。木頭ゆずの栽培と販売を事業とする「黄金の村」や、2021年7月にJR徳島駅内にオープンした木頭ゆずオリジナルスイーツショップ「YUZU CAFE Kitchen」、旧木頭村の旧美那川キャンプ村をフルリノベーションした「CAMP PARK KITO」なども展開。木頭発の情報発信と活動などを通じて、全国の限界集落の地方創生に貢献するロールモデルとなることを目指しています。(en)

KITO DESIGN HOLDINGS 公式ウェブサイト
https://kito-dh.jp/


#KITO DESIGN HOLDINGS YouTube公式チャンネル「Mirai Combini」(2021/05/31)

〈未来コンビニ〉施設概要

延べ面積(駐車場含む):495m²
建物床面積:187.30m²
主要コーナー:食品・日用品・土産物販売、カフェ・イートイン
所在地:徳島県那賀郡那賀町木頭北川いも志屋敷11-1(Google Map
営業時間:8:00-20:00(冬季は8:00-19:00)
定休日:木曜定休

未来コンビニ 公式ウェブサイト
https://mirai-cvs.jp/

SNS @miraicombini
https://www.facebook.com/miraicombini/
https://www.instagram.com/miraicombini/

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