「車を買える価格で家を買う」をコンセプトに掲げ、3Dプリンタ住宅を開発・販売しているセレンディクス(兵庫県西宮市、代表取締役:小間裕康)は、大林組(東京都港区、社長:蓮輪賢治)が開発したスリムクリート®︎(高強度繊維補強コンクリート)を使用した3Dプリンタ住宅建設の実証実験を広島県内にて今月下旬に実施予定であることを発表しました(セレンディクス 2024年5月17日プレスリリース)。
スリムクリート®︎とは、大林組が開発した特殊なモルタル材料で、特殊粉体材料と超高強度の鋼繊維を用いて構造物を構築する工法でもあります。
大林組の発表(性能の詳細はこちら)によれば、従来の超高強度繊維補強コンクリート(UFC)と同等以上の強度特性[*1]を有し、単独でも構造物として使用することができるとのこと。
*1. 強度特性:打設後2日目の初期強度80N/mm²以上、圧縮強度180N/mm²、引張強度11N/mm²以上
スリムクリート®︎は流動性や充填性が高く、複雑な形状やコンクリート護岸(波返し部分)といった長大な構造物にも対応可能であり、大林組では各所で実績を重ねてきました。3Dプリンタで出力する躯体の内部に同素材を充填することで、鉄筋や鉄骨を使用せずに高い強度を実現。現場での打設と養生もできるため、従来の鉄筋コンクリート打設に比べ、人件費や作業工数を大幅に抑えられる見込みです。
なお、今回の実証実験は、同社が2023年より参画している、広島県の「サキガケプロジェクト」[*2]のもとで実施されます。
低価格での3Dプリンタ住宅の供給を目指すセレンディクスが、3Dプリンタ建築モデルの開発にあたり顕在化していた課題(後述)の解決を目指し、スリムクリート®︎を建材として採用(注.今回は現行の建築基準法に準じて鉄筋も使用)。県および協力企業のサポートもと、5月27日より広島県坂町に実証実験棟を建設する運びとなりました。
*2.サキガケプロジェクト:コロナ禍で顕在化した社会課題を解決するアイデアの実現に向けて、新市場の開拓に取り組む事業の実証・実装支援を目的に広島県が2022年(令和4)に開始した実証支援プロジェクト。セレンディクスの「3Dプリンタ住宅による低コスト住宅の建築」への取り組みは、同プロジェクトの中でも″サキガケ″となる7社(サキガケセブン)の1つに数えられている
公式ウェブサイト https://hiroshima-sandbox.jp/sakigake/
*3.今回施工する〈serendix10〉の同型モデル:本稿1枚目の画像(設計:Clouds Architecture Office)
実証実験棟建設の経緯
国内において一定の規模以上の建築物を建設するためには、構造物が建築基準法に適合していることの確認(建築確認)を取得する必要があります。鉄骨、鉄筋などの指定建築材料を使わない場合は、建築物の安全性を証明するため、個別に国土交通大臣の認定(大臣認定)が必要です。現在、セレンディクスでは、現行法の指定建築材料に合わせ、鉄骨や鉄筋を組み合わせて建設していますが、鉄筋を組む作業などは自動化できず、コスト増加の要因となっています。
大林組は、2022年に日本で初めて、指定建築材料外であるスリムクリート®︎を用いた3Dプリンタ建築物の大臣認定を取得した実績を持ちます。今回の実証実験において、すでに実績のある同社の素材を使用することで、「鉄筋・鉄骨レス」での工法や施工の高速化につなげたいと考えています。(セレンディクス 2024年5月17日プレスリリースより)
セレンディクス ウェブサイト
https://serendix.com/