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[Interview]なぜ、無印良品は家をつくるのか  MUJI HOUSEが描く「暮らしの器」の思想と実践

[Interview]なぜ、無印良品は家をつくるのか MUJI HOUSEが描く「暮らしの器」の思想と実践

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無印良品といえば、生活雑貨や衣料品のブランドとして広く知られています。しかし、2003年から「無印良品の家」事業をスタートさせ、これまでに3,000棟以上の木造住宅を手がけてきました。なぜ、無印良品は「家」をつくるのか。

今回はMUJI HOUSEを運営する立場として、良品計画 執行役員 営業本部管掌し、MUJI HOUSEの社長である永原拓生氏と、専務取締役・田鎖郁男氏に話を聞きました。

無印良品が20年以上にわたって培ってきた建築思想、「暮らしの器」としての家、資産として循環するエコシステム、インフラから自由になる家という、これらの設計思想の変遷と、これからの社会に向けたビジョンについて、設計者の視点から読み解いていきます。


なぜ無印良品は家をつくり始めたのか――事業発足の背景

―― 無印良品について簡単に教えてください。スタート時のコンセプトや、現在の状況はいかがでしょうか。

永原拓生氏(以下、永原氏):「現在、無印良品の店舗では衣服・雑貨、生活雑貨、食品の3部門を軸にして、衣食住に関連する幅広いアイテムを展開しています。私たちの会社の一つの軸は暮らしを支える、暮らしの基本の商品を支えるということです。そういった商品群を提案している時に、最終的には家にたどり着く、暮らしをすべて考えるとしたらハードである家というところに取り組もうということでスタートしました。

無印良品の商品開発の背景には、人々の生活の暮らしを観察しニーズや課題をみつける、オブザベーションというプロセスがあります。そこにはやはりハードである家というところが欠かせないものだと思っており、ここを一気通貫でお客様に提供するために、家は非常に大事なコンテンツであると思っています。いかに日々の暮らしが快適に過ごせるかを考える上で、生活に溶け込んでいく共通のサイズやモジュール、統一されたデザインというものが非常に大事な要素になっています。

―― 無印良品が家をつくるに至った経緯を教えてください。

田鎖郁男氏(以下、田鎖氏):「生活雑貨を起点に、暮らし全体を提案するという無印良品の姿勢は一貫していました。その延長線上に家があったのですが、それが実現するまでには思想と実績の積み上げが必要でした。

長く使っていけるというテーマと、お客様に「きちんとデザインされたものをリーズナブルに届けるということを、建築で実践するとどうなるか」というプロトタイプの創造から、このプロジェクトは始まりました。

―― 建築家の作る住宅やハウスメーカーや工務店の作る住宅と、MUJI HOUSEの設計思想の違いはどこにあると考えますか。

田鎖氏:「私たちが目指すのは「暮らしの器」です。主役は家ではなく、そこに住む人の暮らしです。だから過度な装飾を省き、本質的な性能と空間の質にこだわります。

当時の新築住宅では、何LDKという間取りで建材だけを選ぶ方法が主流でしたが、建築家や私たちは一種のアンチテーゼを抱いていました。デザインを優先するとお客様にリーズナブルにお届けできず、一方でハウスメーカーの家は、お客様の目の前のニーズに応えるために機能を足し算していくばかりでデザインを両立できないという課題があったのです。

その間をどうやってつくっていくかという問いかけがあり、躯体を丈夫にしてスケルトン・アンド・インフィルにできて、長く使うためにできるだけ大きい箱をしっかりとつくるというコンセプトにたどり着いたのです。

建築思想の変遷――「無印良品の家」を形づくった 知性と、公共住宅ストックの再生

――これまで著名な建築家やデザイナーの方々との協業で、MUJI HOUSEの設計思想はどう深まりましたか?

田鎖氏:「共通しているのは、「暮らしの本質を問う」という姿勢です。著名な方であっても、MUJI HOUSEの現場では肩書きは関係ありません。「この家に住む人の暮らしがどう豊かになるか」という一点に向き合う、それが私たちの仕事の核でした。また、いかなる著名デザイナーと組んでも、ブランドの前面に個人名を押し出さないという点も一貫しています。

「無印良品」というブランドイメージを堅守しながら、トップクリエイターの思想を静かに宿す、この矜持こそがMUJI HOUSEの設計哲学の核にあります。実は、「木の家」は1棟目のデザインから今日にいたるまでデザインを変えていません。同じものを、同じ手で繰り返しマニュアルでつくることで、20年間絶えずブラッシュアップを繰り返してきました。」

木の家 © Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.

――UR都市機構との団地リノベーションは、どのような経緯で始まったのでしょうか?

田鎖氏:「団地というのは、1970年代の錚々たる建築家たちがケーススタディとして手がけたものです。UR団地はかつて高倍率の抽選でなかなか住むことができない憧れの存在でした。ところが、時代が変わり、設備の古さや空間のコンパクトさから、若年層を中心に人気が衰えていました。でも私たちは、長く使えて将来の資産価値になるものを作りたいと考えていたので、団地という文脈にはむしろ可能性しか感じませんでした。敷地は広くて、コミュニティスペースや公園もあって、駐車場もある。社会インフラとして、こんなに良い条件が揃っている団地の魅力をもう一度見直せないか、という問いかけから始まりました。」

――団地リノベーションでは、ハードの改修だけでなくコミュニティづくりにも取り組んでいると聞きました。

田鎖氏:「最初は、デザインすることよりもコミュニティをどう作るかということに全力を注ぎました。高齢化が進んでいる団地に若い世代を呼び込んで、多様な年代の方たちがコミュニケーションを取ることで団地を活性化できないか、というご提案をしたんです。住人祭を開いたり、無印良品の商品を使ったバーベキュー大会をやったり。良品計画のチームと一緒に、そういったソフトの部分から動き始めたのが団地事業のスタートでした。」

MUJIHOUES×UR © Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.

――新築住宅と団地リノベーション、取り組み方として違いはありますか?

田鎖氏:「考え方は一緒です。サステナブルな社会をどうやって作っていくか、という思想は変わりません。一度社会インフラとして作られたものを長く使えるようにしたいという姿勢も同じです。ただ既存の骨組みがある分、そのスケルトンをどう活かすか、という取り組み方は変わってきます。今あるものをどう活かして新しい価値をつくるかという問いは、私たちが今取り組む法人向けリノベーションや住宅の「循環」の考え方の原点にもなっています。」

窓の家 © Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.

これからのMUJI HOUSE――「建てる」から「循環させる」へ

――これからのMUJI HOUSEは、新築にとどまらず「建てて終わり」ではない資産価値の循環や社会インフラへの展開が核心にあると伺いました。具体的な未来のビジョンを教えてください。

永原氏:「これからの建築の大きなテーマは、どうやってサステナブルな社会をつくっていくかという点にあります。私たちの大きな戦略は「社会の役に立つ」ということ。私たちは、10年後や未来の社会に対して何ができるかを常に考えています。

その一つが大規模木造建築への展開です。2024年に佐賀・唐津と大分・日田にオープンした無印良品初の木造店舗は、鉄骨造比でCO2排出量を44%削減し、最高ランクのZEB認証を取得したほか、農林水産省との木材利用促進協定も締結しました。MUJI HOUSEで全棟採用されているSE構法は、もともと大規模建築にも対応できる高い耐震性と設計自由度を持っており、2,000m²超の大規模木造店舗という新たなフィールドへ展開したのは時代の必然といえます。今後は、学校や病院、商業施設、公共建築といった社会インフラへの展開を見据えています。無印良品の家は、過去の大きな震災でも一棟も倒壊がなかったのはもちろんですが、破損すらもなく、避難所に指定されているほどの強さを持っており、自信を持って店舗も防災拠点としてご提供できます。」

縦の家 © Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.

永原氏:「2025年11月には、北陸電力の社宅2棟をZEH水準でフルリノベーションする「MUJI INFILL 0 一棟リノベーション」を発表しました。建て替えでも解体でもない、再価値付けという第三の選択肢を法人向けに提案しています。また、設計品質の高さから中古市場でも価値が落ちない無印良品の家の売却・購入サポートの仕組みを整備することで、家が社会的なストックとして循環するエコシステムをつくっています。

そして、未来の暮らし方の自由を最大化する取り組みとして、太陽光や蓄電池、水循環システムを備えた「インフラゼロハウス」というモバイルハウスのプロジェクトを進めています。インフラ未整備の土地でも生活できる究極の自給自足住宅であり、災害リスクをゼロにしながら、都市集中ではない分散型の豊かな社会を実現するための実験を続けています。」

MUJI HOUSEという仕事場

――大手ハウスメーカーや設計事務所とは違う、MUJI HOUSEでしか経験できないこと、その魅力は何でしょうか。

永原氏:「無印良品の哲学は暮らし起点ですから、建築的な美しさだけでなく、そこに住む人の生活の細部、地域のコミュニティのあり方までをリスペクトしている人たちが働いています。 想像できる設計者にぜひ来てほしいと思っています。

私たちの店舗は単に買い物をする場所ではなく、地域の人たちが集まり繋がっていく「コミュニティセンター」でありたいと考えています。生活者に近い視点で活動し、街のデザインに関わっていけることが私たちの良さです。」

陽の家 © Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.

田鎖氏:「MUJI HOUSEは、デザインをするだけでなく、それがいくらでどこから仕入れられるか、どのようなコストがかかるかまでインハウスで徹底的に追求できる、いわば工務店付きの設計事務所です。木の家を三千回以上つくってきた中で蓄積された膨大なディテールの経験値があります。

本質は変えずに、時代に合わせてディテールを少しずつブラッシュアップしながら、100年経っても同じように作り続けている会社がひとつくらいあってもいいと良いのではないかと思います。個人住宅からマンションリノベーション、大規模木造建築、さらにはインフラゼロハウスまで、これほど幅広い建築の問いに向き合い、社会のインフラをデザインできる場はほかにありません。

これからの建築家は、個人の名前をアピールする時代から、時代のテーマや地域に対してアノニマス(無名)に向き合う時代へと変わっていくでしょう。皆さんが、本質的にいいなと感じていただけるものが、インディビジュアルなデザインとして作れるシステムを実現していきたいと思っています。」

 

記事内画像:© Copyright 2026 MUJI HOUSE Co,LTD.
特記なき画像: TEAM TECTURE MAG


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