MUJI HOUSEが問い直す都市住宅の可能性 「狭い、暗い、寒い」をあきらめない。「縦の家」の設計思考 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
MUJI HOUSEが問い直す都市住宅の可能性 「狭い、暗い、寒い」をあきらめない。「縦の家」の設計思考

MUJI HOUSEが問い直す都市住宅の可能性 「狭い、暗い、寒い」をあきらめない。「縦の家」の設計思考

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『都市に住みたい。でも「狭い、暗い、寒い」は我慢したくない』。「木の家」、「窓の家」に続く新商品として、MUJI HOUSEが2014年に発表した「縦の家」は、この一見ぜいたくな要望に正面から向き合うところから開発が始まりました。

日本の都市部における住宅設計は、常に敷地の狭さや法的規制といった制約との戦いになります。限られた敷地、日当たりの厳しさ、北側斜線制限など、こうした条件下での3階建ては、階ごとに細かく部屋を区切り、暗く閉鎖的な空間になりがちです。そこで、「縦の家」では、吹き抜けを新しいデザインの階段に置き換えることで課題に向き合い、都市に住む、新しいかたちを創出しました。

「買った後、快適に住むためのデザイン」を追求し、誰も見たことのない都市専用3階建て住宅をかたちにするまでには、東北芸術工科大学との共同研究や、実物大模型での検証など、地道な積み重ねがありました。限られた敷地という制約のなかで、機能と意匠がどのように組み合わされていったのでしょうか。『TECTURE MAG』が、MUJI HOUSE「縦の家」について建築的側面から紐解きます。

階段という「装置」が、空間を繋いでいく

『都市の限られた敷地でも広く住みたい』。この問いに対してMUJI HOUSEがまず見直したのは、階段でした。一般的な住宅の階段は、上下階を移動するためだけの通路です。「縦の家」ではこの発想を変え、ゆったりと大きく、光と空気が通るスケルトンデザインの階段を家の中央に配置しました。ベンチのように腰かけて寛げるほどの大きさを持つこの階段は、上下だけでなく左右にも空間を緩やかにつなぎ、時には居住空間としても機能します。3階の上部から入る光を、階段を通じて家全体に行き渡らせる役目も担っています。

これは、「木の家」で実践してきた「吹き抜け」の発想を、都市の限られた敷地に合わせて置き換えたものです。床面積を少しでも増やしたい都市部では吹き抜けをあきらめがちですが、その開放感を階段というかたちに移し替えることで、広さを感じる空間をつくっています。

階段を中心に部屋から部屋へ直接移動できるよう間取りを工夫したことで、廊下という「移動のためだけの通路」が、自由な発想でくつろげる空間となりました。さらに、各階の床の高さを少しずつ変える「スキップフロア」を組み合わせることで、上下方向にも緩やかに空間がつながります。20坪ほどの敷地でも2階・3階に20畳以上の広がりを感じられるのは、この階段とスキップフロアが、垂直方向の空間を新しく定義し直した結果です。

この階段とスキップフロアによる立体構成は、平面的に「間取り」を区切る従来の設計とは異なり、家全体を「6つのポーション(区分・役割)」と呼ばれる立体的な空間ブロックとして分けることで、住み手の暮らしに合わせた空間設計を可能にしました。例えば、あえて特定の床の高さを調整して、最大3.05mの「天井の高いリビング」を作り出し、その影響で天井が低くなるポーションは「子ども部屋」にして、部屋の用途に合わせて天井高を組み替えることができます。リビングだけでなく、たとえば水回りに求められる、「室内干し」や「収納の容量」確保に役立つように、「水まわり・ワークスペース」の天井を少し高くとり、脱衣から衣類収納までの家事が1箇所で完結できるなど、空間の総容量を最大限に活かしきるプランニングを叶えることができます。

間仕切りのない家を、性能で支える

スケルトン階段とスキップフロアによって生まれた一体的な空間は、見た目の開放感だけでなく、温熱性能の面でも理にかなった設計になっています。間仕切りがなく、大きな窓を持つ家は、一般的には冬寒く夏暑いと思われがちです。しかし、「縦の家」では、設備に極力頼らず、太陽の熱・光・風を活かす「パッシブデザイン」と、徹底的な断熱技術とにより、この課題を解決しているのは、「木の家」をはじめとした他の商品と同様です。

ただ「縦の家」のパッシブデザインは、都市部では南道路でない限り、南からの冬期の日当たりが期待できないことが多いため、方位に関係なく、ひらけている側(道路側)に窓を大きく設ける手法を取り入れています。
そうすることで、柔らかで安定した彩光を可能とし、温熱については、高い断熱性能と日射遮蔽アイテム(ハニカムスクリーン)の組み合わせで対応する発想です。

この高い気密・断熱性と一室空間を維持するために、換気設計にも先進的な試みがなされています。都市部の限られた空間で太い配管スペースを排除するため採用されたのは「ダクトレス熱交換型第1種換気システム」です。1台で排気と給気を交互に切り替えるファンにセラミック製の蓄熱エレメントを内蔵し、室内の熱を逃がさずに外気を室温に近づけて給気します。ダクトを介さないため、ダクト内の汚れやカビのリスクを避け、省スペースでありながら最大91%の熱交換率で快適な空気循環を可能にしています。

変化し続ける天然素材を、あえて選ぶ

「縦の家」は、ファサードに使われた無垢の杉板の外観が目を引きます。現代の都市住宅では、耐久性やメンテナンス性を最優先した、経年変化の少ない工業製品(新建材)を採用されることが多い中、「縦の家」ではその真逆とも言える、変化し続ける天然素材が選ばれました。

その理由は、都市部だからこそ、数値だけでは表せない「温かみ」を持たせたいという考えがあったためです。新築時が最も美しいのではなく、時を経るほどに味わいが増す「熟成」する外壁。それを実現するために、水に強い厳選された国産杉の「赤身」部分だけを十分に乾燥させて使用し、浸透性の木材保護塗料を施したうえで、木の反りや伸縮を吸収するよう、重ね合わせの長さを通常より長く取る独自の施工工夫がなされています。

また、本来はハードルが高い、都市部の準防火地域での木製の外壁の採用については、MUJI HOUSEでは特殊な木質繊維系断熱材との組み合わせることで認可を取得しています。構造の合理性、断熱の科学的アプローチ、そして天然素材の経年変化を許容する美意識。これらすべてに確固たる理由があるからこそ、MUJI HOUSEでは、単なる工業化住宅とも一品生産の注文住宅とも違う、新しい提案ができるのです。

都市の限られた敷地という制約のなかで、階段の発想を変え、断熱の仕組みを積み重ね、変化する素材をあえて選ぶ。「縦の家」が見せているのは、ひとつの制約に対して、機能と意匠を分けずに向き合い続ける設計の姿勢ではないでしょうか。


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MUJIHOUSE(縦の家)ウェブサイト   https://www.muji.net/ie/tatenoie/

 

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